本記事は2018年7月に日経電子版で掲載された広告特集
【アウトドア業界のリーディングカンパニー、スノーピーク 直営店の業務効率も約2割向上へ「さらなる成長」はなぜ生まれたのか?】からの転載です。
アウトドア業界のリーディングカンパニー、
スノーピーク
直営店の業務効率も約2割向上へ
「さらなる成長」は
なぜ生まれたのか?
日本を代表するアウトドア用品メーカーのスノーピーク。同社は独自の商品開発とバブル期に訪れた空前のアウトドアブームに乗り、倍々ゲームで業績を伸ばし続けた。ところが、そのブームが去ると業績は急降下。2000年代を迎える頃にはピーク時のおよそ3分の2まで売り上げが落ち込んだという。
窮地に陥ったスノーピークは、キャンプイベントなどを通じて徹底して顧客の声を聞くことに。そこで得られた顧客ニーズなどの情報をもとに、流通経路の見直しや販売網の再構築など事業モデルの全面的な見直しに着手。独創的な商品の開発・提供、体験重視の“コト消費”支援といった顧客志向の施策が奏功した結果、業績はV字回復を遂げ、いまや社会に新たな価値を提供する独自のブランドを確立した。
そしてスノーピークはさらなる成長を目指すべく、基幹業務システムを「SAP S/4HANA」へと刷新した。業務プロセスも含めた再構築により、直営店の一部では約2割の業務効率アップを達成できたという。その成功の秘密を探る。
アウトドアブーム終えんで業績悪化
事業モデルの見直しに着手
スノーピークは1958年創業のアウトドア総合メーカーだ。多種多様なアウトドア関連商品の開発・製造・販売を行い、「自然と人のつながり」「人と人とのつながり」を通じた人間性の回復を社会的使命とし、自然志向のライフスタイルを提案している。
最近はアウトドア用品以外にもビジネスの幅を広げており、2014年にはアパレル事業に本格進出。17年には60年にわたって培ってきたアウトドアの知見を生かし、地方自治体などを対象にキャンプ場運営など地域活性化を支援する新会社「スノーピーク地方創生コンサルティング」を立ち上げている。

創業以来順調にビジネスを拡大してきたようにみえる同社だが、80年代バブル期のアウトドアブームが去ると、急激に業績が悪化するという憂き目にも遭った。スノーピーク取締役 執行役員 経営企画管理本部長のリース能亜氏は当時をこう振り返る。
「バブル期のアウトドアブーム時に25億円だった売り上げが、98年には15億円にまで縮小しました。さまざま手を打ったものの業績は回復せず、イベントを開催するなどしてお客様の声を直接うかがいながら、経営の抜本的な改革に挑みました」
当時、顧客の声で多かったのは“商品が高価で、しかも店頭での商品の品ぞろえが悪い”というものだった。そこでスノーピークは事業モデルの全面的な見直しに着手する。販売網の改善により品ぞろえと価格を大幅に見直したことに加え、11年には、ブランドの可視化を目指して、店舗・工場・オフィスを一体化し、キャンプ場も併設した「Headquarters」をオープン。キャンプイベントの開催場所や頻度も増やしており、顧客の声を聞く姿勢をさらに強化している。

株式会社スノーピーク
取締役 執行役員
経営企画管理本部長
リース 能亜 氏
ITに活路を見いだすも
事業の広がりへの対応が困難に

徹底的に顧客に向き合う姿勢が奏功し、同社の業績はV字回復。14年には東証マザーズ市場に株式上場、翌15年には東京証券取引所第1部に市場変更を果たし、社会に新たな価値を提供する独自のブランドを確立した。
だが、ビジネスが順調に拡大し事業の幅が広がり始めると、既存のITにも次第に綻びが見え始めてきた。その原因は、これまで個別最適でITを導入してきたことだった。
「当社のITの多くは一機能に特化したものであり、データ統合ができていませんでした。そのため、ビジネスが広がり複雑化するにつれて管理工数がかかり、業務負荷が増してしまっていました」
さらなる成長のためにスノーピークが打ち出したのが、「ITにしっかりと投資していく」という方針だ。
ITに投資して利用を推進することは、ともすれば業務効率化によるコスト削減効果を狙うといった消極的な打開策に見える。だが、スノーピークは違った。顧客インサイトを探ったりビジネス予測を考察したりといった、日常業務の改善手段としてITを活用する道を選んだのだ。
「IT投資の目的は単なる経費削減ではなく、業務改善サイクルを継続的に回すことにあります。業務改善サイクルの中心にITを据え、顧客接点を最大化する新しい施策をいち早く発見するためにITを活用してきました」

「顧客志向」の価値観に共感
パートナーとしてのSAPに期待と信頼
こうした課題を解決するために、スノーピークではITの刷新を決断する。78億円の売上高の時期に6億円のシステム投資という大きな決断をすることになる。従来のITの改修サイクルを見直し、新たな統合基幹業務システム(ERP)を導入することにしたのだ。
「直接的なきっかけは、手狭になった物流センターを移転・新設したことにあります。この物流センターにはオペレーションセンター機能を設け、商品の製造から配送、アフターサービスまでの機能を集約させて各種オペレーションを最大限に効率化しようと考えました。一方で、当社は事業セグメントの拡張をし、アパレルをはじめとした新規事業立ち上げを計画・実行していました。それによるビジネスモデルの複雑性の上昇が見えていたため、既存オペレーションと長期的な成長を支えるオペレーション基盤を統合する新しいITの仕組みが必要だったのです」
新しいITの導入検討は、物流センターの移転・新設計画が持ち上がった15年末に開始された。さまざまな製品を比較するなかで、スノーピークと古くから取引関係にある大手家電量販店が「SAP S/4HANA」というERPをうまく活用していることを知った。この企業は実店舗とECサイトの顧客情報、倉庫や店舗の在庫情報などをすべて一元化し、事業効率化と顧客の利便性向上、その結果としての業績拡大に大きな効果を挙げていた。
「このユースケースはリーディングカンパニーの事例であり、当社が目指すITの方向性にも合致していました。そこで当社も、SAP S/4HANAを新しいERPシステムとして導入することを決定したのです」
また、導入決定には、スノーピークとSAPの企業価値観に共通するものがあったことも理由の一つだとリース氏は明かす。
「従来のSAPはERPに特化した会社でしたが、リーマン・ショック前から売上低下に直面しており、新たな価値創造のため顧客管理基盤に積極投資をしてきました。この企業ジャーニー(体験)は当社と近しく、また近年ではイノベーションへの投資を積極的に実行することで、顧客と一緒に未来をデザインする姿勢を貫いていることも挙げられます」
一部直営店の業務効率は約2割改善
さらなる顧客満足度向上を目指す

スノーピークがSAP S/4HANAの導入を開始したのは16年3月のことだ。約1年間の導入期間を経て、17年3月に本番稼働を開始させた。新しいERPシステムは売り上げや在庫、顧客などのあらゆる情報を一元化、すべてをリンクさせることによってサプライヤーとの商談や需要予測、在庫適正化などでその力を発揮し始めているという。
加えて、導入後はSAPをビジネスのパートナーとして、ときにコンサルティングの支援を受けながらシステムの有効活用と、ビジネスモデルの改善も進めてきた。稼働開始から1年以上が経過したいま、リース氏はさまざまな導入効果が徐々に見え始めてきたと実感している。
「まず業務の質とスピードが確実に向上しました。従来は業務プロセスが煩雑で時間がかかっていましたが、SAP導入によって当時のラインごとの業務プロセスの平準化が進み、経営判断も迅速に行えるようになってきています。また、すべての組織が同じ情報を利用するので、ビジネスラインの分断・サイロ化という課題の解決にも貢献しています。導入時から企業一丸となって考えるプロジェクトであるが故の、社内連携の改善、これがERPシステム導入の醍醐味であり、システムとして優れている部分だと思っています」
さらに、その効果は徐々に業績にも表れているという。
「顧客情報を一元管理して接客することで、店舗ではクロスセル/アップセルの比率が上がりました。直営店のなかには業務効率が20%近く改善され、それが業績にも表れ始めました」
スノーピークは17年7月にオムニチャネル(統合販売チャネル構築)のソリューション「SAP Hybris」も導入。EC・通販事業の強化とオムニチャネルの実践を進めている。基幹システムとして稼働するSAP S/4HANAと連携して活用することで、さらなる効果を期待している。
「SAPソリューションを活用した当社のIT戦略は、トップライン(売り上げ)アップにつながるだけでなく、顧客満足度向上にも役立つと信じています。今後はSAP LeonardoのAI(人工知能)を活用することでオペレーションを効率化し、お客様に向き合うためのリソースを増やしていくことも検討しています。『スノーピーカー』と呼ばれる顧客ロイヤルティーの高いお客様を大切にしながら、当社を育ててくれたコミュニティーにも恩返しをしていきたいと考えています」
資金を潤沢に持つ大企業でない限り、思い切ったIT投資は確かに簡単ではないかもしれない。今回のようなERPシステム導入にしても、同様の印象を抱く読者もいるだろう。だが、戦略的なIT活用が企業の明暗を分ける今日、もはやその規模は関係ない。顧客と向き合い価値を届けるために常にチャレンジを続ける企業こそ、SAP S/4HANAのようなERPソリューションが有効となる。今回のスノーピークの事例は、まさにその事実を示した好例といえるかもしれない。
“アウトドア”を切り口に、人々に再び人間らしい生き方を提供し、生活に豊かさを取り戻そうとするスノーピーク。「自然」を軸にしているが、目指すものはあくまでも人々の幸福だ。そうした社会貢献をSAPがテクノロジーで支え、スノーピークもそれを最大限に生かしながら、さらなる成長を遂げていくのではないだろうか。