デジタルトランスフォーメーションを通じてさらなる顧客サービスの向上を目指すアフラック


がん保険のパイオニアとして知られるアフラック生命保険は、将来を見据えたIT投資によって着々とデジタルトランスフォーメーションを進めています。SAPのソリューションを活用した攻めのIT戦略について、コーポレートIT室 室長の日下部淳氏に伺いました。

財務会計や調達購買プロセスのグローバル統合

米国の「アメリカン ファミリー ライフ アシュアランス カンパニー オブ コロンバス」の日本支店として1974年からがん保険を発売してきたアフラックは、2018年4月から日本法人(株式会社)へと会社形態を変更し、名実ともに日本の生命保険会社として新たなスタートを切りました。個人保険の契約数で国内トップクラスを誇り、総資産で8割超、保険料収入で約7割を占めていた日本支店が日本法人となったことで、法律/制度の両面からガバナンスの強化がさらに進むことになります。

同社は日本ではじめて「がん保険」を提供する保険会社としてスタートしました。がん保険、医療保険、就労所得保障保険(給与サポート)に注力し、多くの方々の「『生きる』を創る。」を支えています。
また、近年のテクノロジーの進化やヘルスケア領域のマーケティングの拡大を踏まえて、「デジタルイノベーション推進部」を2018年より新設し、デジタルを通じて従来の枠を超えた価値の創造を目指しています。

アフラックにおいて顧客の契約情報を管理する基幹システムは、アフラック生命株式会社 コーポレートIT室 室長 日下部 淳 氏商習慣や法体系が異なるため日米両国のIT部門がそれぞれ企画/開発を行ってきました。一方、会計、購買(調達)など日米で共通する業務に関しては、日米のコーポレートIT室が連携しながらシステムを管理する体制を取っています。

現在、日本法人のコーポレートIT室長を務める日下部氏は、1987年にアフラックに入社して以来、経理部門において日米会計基準による決算報告・代理店会計報告業務・米国勤務・会計基準調査・人財育成企画・会計システム構築・経費精算業務プロセスBPRなど、日米を行き来しながら経理と財務会計システムに関する業務を歴任。2011年からグローバルチームの一員として導入システム企画および業務プロセス変革の業務に従事し、2017年からコーポレートIT室長として、米国コーポレートIT部門と連携してファイナンシャル領域におけるITの活用をリードしています。

間接購買の標準化に向けてSAP Aribaを導入

アフラックは、2012年に財務会計システムとしてSAP ERPを導入。日下部氏は「連結会計を効率化する観点から、米国のSAP ERPとシングルインスタンスで統合するため、会計帳簿も新総勘定元帳方式(New-GL)に改めました」と語ります。ただし、日本と米国ではレガシーシステムとの関係や統合前の利用環境の違いなどから、利用モジュールに若干の差があります。例えば、人財管理において米国ではHuman Capital Management(HCM)/SAP SuccessFactorsを採用しているのに対し、日本は別のソリューションを採用していたり、米国ではSAP Treasury and Risk Management(TRM)を導入して一部の財務/資金管理を行っていたりします。

また、SAP ERPの日米統合に合わせて各種情報を蓄積するSAP Business Warehouse(SAP BW)、予算編成管理・収支計画管理・財務連結管理を可能にするSAP Business Planning and Consolidation(SAP BPC)を導入しました。これによって勘定系から情報系のトランザクションまでが一気通貫に処理されることになり、「ワンファクト・ワンプレイス」が実現。その後、プラットフォームのSAP HANA化(SAP BW/BPC on HANA)を通じて、SAP BPCもアップグレードしながら活用しています。

さらに、先行稼動していた米国に合わせる形で購買調達ソリューションSAP Aribaの採用を決定。2018年年初よりSourcing & Contractの利用を開始、さらに7月以降に間接材の購買用途でP2Pソリューション(Ariba Procure-to-Pay)の利用を開始する予定です。これまで、パンフレットなどの営業制作物、オフィスの事務機器、事務用品、IT機器などの備品、派遣/請負スタッフの外注契約などの購買管理は一定のルールのもと、複数の部署がそれぞれ運用してきました。情報を一元化するSAP Aribaをプラットフォームとして導入する取り組みは、単に分散していたものを集約して調達コストの削減と内部統制の強化を図るという目的以上に、部分最適ではなく組織全体で包括的にベネフィットを生み出す視点を持つことに大きな意味があると日下部氏は考えています。

「SAP Aribaによって社内の購買のパワーバランスが平準化されるとともに、各部門が独自に行っていた調達業務が集約化されることで、それぞれの本来業務にフォーカスできるようになります。調達コスト・購買プロセスコストの軽減で得られた効果は、保険契約者そしてサービス全体にポジティブに波及していくものと考えています」

さらにSAP Concurを米国に先がけて導入し、出張旅費精算・立替経費精算、そして取引先支払に利用しています。今後は、SAP Concurで処理している取引先支払について、徐々にSAP Aribaに移行していくことでシステム統合による更なる自動化・シームレスなデータ連携を高めていく予定です。

AI/IoTの進展によってもたらされる「保険」を取り巻く変化

アフラックがSAP ERPをコアシステムとしてビジネスソリューションの拡張を続ける背景には、システム投資を最大化する狙いがあります。「90年代のIT投資は業務効率が最大の目的でしたが、現在は法制度対応、ビジネス基盤の構築、競争優位性の3つを加えた4象限マトリックスでITシステムを捉え、それぞれを最大化していかなければなりません。そのためには誰も踏み込んでいない領域にチャレンジすることも必要だと考えています」(日下部氏)

その言葉を裏付けるように、日下部氏のチームはSAPジャパンのユーザー会(JSUG)で社外のITリーダーたちと交流を持ち、部会を通してノウハウを習得してきました。SAPの年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW」や「SAP Ariba Live」などにも参加し、常に最新の情報収集に努めています。「自社としての競争優位性を生み出せる領域以外は、ベストプラクティスを採用すべき」と日下部氏が語るように、自社に必要な機能を見極めながら、パッケージやクラウドサービスに業務を合わせる柔軟な思考も、次々と変革を進められる秘訣といえます。

アフラックでは、SAP S/4HANAへの移行も見据えて既存の構成の最適化を進めています。また、働き方改革の一環として同社が取り組んでいるテレワークや在宅勤務に向けて、SAP AribaやSAP Concurのモバイル対応を進め、外出先での承認や申請を実現していく計画です。

さらに、自身の管轄する領域以外にもAI/IoTの進展によってもたらされる「保険」を取り巻く様々な変化に対応すべく、日下部氏は産官学、業界横断型の「ヘルスケアIoTコンソーシアム」にも参画し、業界の垣根を超えた新たなビジネスモデルの実現に向けて研究を深めています。

日下部氏は「本来、個人の情報資産として管理されるべき健康情報を、個人の意思をもってアフラック生命株式会社 コーポレートIT室 室長 日下部 淳 氏活用できる環境が整うことで、個人的な情報資産の活用からその個人に合った保険サービスの提案が可能になる、さらにはそれらの個人の情報資産が社会的に利活用できるようになるなど、保険を取り巻く様々な環境変化が考えられます。今後も研究を進め、様々なデジタルトランスフォーメーションを通じて、アフラックの保険事業のさらなる進化へ貢献していきたい」と話しています。