SAPで少しずつ頭角を現しだしたSAP SQL Anywhere


276398_l_srgb_s_glこんにちは。世界で1,000万以上のインストール/配備実績のあるSAPの隠れた名品、自己管理型RDBMS「SAP SQL Anywhere」のプロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングを担当している伊藤です。

前回SAP SQL Anywhere の紹介記事がSAPブログに掲載されてからかなり経過してしまいました。その間、正式名称が「SAP Sybase SQL Anywhere」というとても長い名称から「SAP SQL Anywhere」に変わったり、新しいバージョン 16 がリリースされてSAP HANAとのデータ同期機能が実装されたりと、SybaseとSAPとの統合の結果が製品に少しずつ反映されてきています。今回のブログ記事では、最近さまざまなかたちで採用が進むSAP SQL Anywhereの近況をご紹介します。

実証された性能

前回のSAP SQL Anywhere のブログ記事で、SAP SQL Anywhereは「高性能汎用 RDBMS」だとご紹介しました。事実、TPC(Transaction Processing Performance Council)という業界団体が出している、実際の業務を想定したオンライントランザクション処理のベンチマークであるTPC-C ベンチマークの価格性能比テストにおいて、昨年11月、低価格のマシンでバツグンの性能を実証し、現在ダントツNo.1のポジションを維持しています。

TPC-C ベンチマーク 価格性能比 トップ4

TPC-Cベンチマーク価格性能比 トップ4

このベンチマークテストでは、コストを重視し、DELLのPowerEdge T620のサーバーで、SAP SQL Anywhereの一番下位のエディションであるWorkgroup Editionを1Chipライセンス分だけ使用し、112,890tpmC(tpmC:1分間に処理可能なトランザクション数のこと)を実現しています。2位のレポートと比較すると、ユーザー数9万人、データサイズ750GBという環境は小規模ですが、現実のほとんどの業務システムにおいては十分な規模であり、その環境構築にかかったトータルコストUS$21,160.12というのは、圧倒的に低いものになっています。これを、ほぼデフォルト設定で実現しているところが、自動チューニングのSAP SQL Anywhereの優れたところです。

 

SAPのIoT戦略の中で注目されるSAP SQL Anywhere

前回のブログ記事で、SAP SQL Anywhereの最大の特徴は、自律的に稼働し続けるためのさまざまな自動機能を実装しているため、エンタープライズレベルの性能を持ちながらも「データベース管理者が不要」という点にあること、さらに通常のサーバーだけでなく、リソースの限られた端末上でも稼働してしまうほど軽量であるため、時にモバイルデータベースと呼ばれていることをご説明しました。こういったSAP SQL Anywhereの「軽量」「高性能」「データベース管理者不要」、そして「安定」という特徴が、SAPのIoT戦略とマッチし、SAPのIoTソリューションの中で注目を集め始めています。

昨年10月にラスベガスで開催された SAP TechEd 2014では、SAP Platform Solutions Groupのプレジデント スティーブ・ルーカス (Steve Lucas) が、SK Solutions社のSAP SQL Anywhereを利用した建設現場向けのIoTソリューション(1:03:30~1:08あたり)を紹介しました。

また少し前、「トイレはIoTで進化する 独SAPが狙う米グーグルの「弱点」というタイトルで、日経ビジネスONLINEに事例記事が掲載されました。IoTを通じて大型施設のトイレ用液体せっけん、ディスペンサー、タオルなどを不足する前に補充することでビジネスモデルを変えた、オーストリアの衛生用品メーカーHagleitner社の事例を、SAPシニアバイスプレジデント グローバル共同統括Internet of Things担当のニルス・ハーズバーグ(Nils Herzberg)が紹介したもので、こちらのソリューションにもSAP SQL Anywhereが採用されています。以下、記事からの引用とYoutubeに掲載されているHagleitner社の紹介ビデオです。

【引用】トイレはIoTで進化する 独SAPが狙う米グーグルの「弱点」(日経ビジネスONLINE:2015/2/25) http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20150219/277756/

ハーズバーグ:トイレの入り口にあるゲートやディスペンサーにセンサーを設置し、液体せっけんの利用動向を把握します。そのデータをインターネットを通じて収集して分析すると、不足しそうなタイミングでせっけんを補充できるようになります。ニーズに合わせて配送すれば、運搬用のトラックの数を減らせるようにもなる。顧客満足度と自社の経営効率の両方を、IoTを通じて向上させられるわけです。

 

もともと幅広いプラットフォームで稼働するSAP SQL Anywhereですが、これらは、新たなIoT市場を狙い、エッジで稼働するRaspberry PiやOlimexなどのARMベースのLinuxボードコンピューターに対応したことが大きく影響しています。

SQL Anywhere 対応OS

このARMベースのLinuxボードコンピューターを早速採用しているのが、上のHagleitner社のソリューションで、ネットワークの負荷や環境を考慮し、SAP SQL Anywhereをリモートの大型施設に何百も設置されているRaspberry Piベースのベースステーションや、施設のサーバー上で稼働させることで、数万ものセンサーから上がってくる情報をローカルで一旦高速処理し、SAP HANA Cloud PlatformのSAP HANA DBとデータ同期しています。

このHagleitner社のソリューションがきっかけで、SAP SQL Anywhereのデータ同期ミドルウェアであるMobile Link同期サーバーがSAP HANA DBとのデータ同期のために、SAP HANA Cloud Platformに実装されることにもなりました。

また、SAPPHIRE NOW 2015ではSAP HANA Cloud Platform for IoTが発表されましたが、これを受けて、Mobile Link同期サーバーを利用したデータ同期を想定した、SAP SQL Anywhereの期間限定アクセスキャンペーンも発表されています。

SAP SQL Anywhereを使用したそのほかのIoTのソリューションとして、デジタルタコグラフの進化系である運行情報分析ソリューションが下のYoutubeのビデオで紹介されています。車にタブレット端末相当のものを搭載し、その上でSAP SQL Anywhereを稼働させるもので、クルマのスピード情報や油圧、GPSによる位置情報などをほぼリアルタイムに表示できます。その一方で端末にデータを蓄積させ、そのデータをMobile Link同期テクノロジーでデータセンターやSAP HANA Cloud Platformで稼働するSAP HANA DBと随時データ同期することによって、不安定なワイヤレス環境であってもほぼリアルタイムに、確実に分析することが可能になります。また、データの種類や、必要な同期の頻度(よりリアルタイム性が求められるものとそうでないもの)、コストなどにより、携帯通信網やWiFiホットスポットなどを効果的に使い分けることができます(たとえば、GPSの位置情報やスピード情報は携帯通信網を使う、など)。

 

OEM営業部の売上を支えるSAP SQL Anywhere

ところで、最初に、SAP SQL Anywhereは世界で1,000万以上のインストール/配備実績があるとご紹介しました。

SAP SQL Anywhereの「軽量」「高性能」「データベース管理者不要」「安定」という特徴を活かし、SAP SQL Anywhereが最も数多く採用されているのは、スタンドアロンや中小規模のクライアントサーバー型で使用されている業務特化のパッケージソフトのデータベースとしてです。日本でも会計パッケージなどに多く採用されています。そのほとんどは、パッケージソフトベンダーとのOEM契約に基づき販売されていますが、一般的には、パッケージソフトとの「同梱」や「バンドル」と言われている販売形態です。

SAP SQL Anywhereは、英語資料でEmbedded Databaseと表現されることから、ボード組み込みのイメージをお持ちの方が多いと思いますが、実際にはEmbedded Databaseの意味は、「アプリケーションへ埋めこむこともできる」データベースです。この「アプリケーションへ埋めこめる」ことによるインストール/配備しやすさが、「軽量」「高性能」「データベース管理者不要」、そして「安定」という特徴に加えて、一般的には「データベースを同梱」されて販売されているパッケージソフトウェアに最適なのです。

一般的なソフトウェアパッケージにおけるRDBMS

SQL Anywhere の埋め込み。最も多く利用されている用途

SAP SQL Anywhereは、この「アプリケーションへ埋めこむこともできる」ことや、「サイレントインストールでアプリケーションと一緒にインストールできてしまう」こと、「軽量なためデータベースサーバーを独立のマシンにする必要がない」こと、「問題があまり発生しない」ことなどにより、エンドユーザーはアプリケーションの裏でSAP SQL Anywhereが動いていることを知らないことがほとんどです。そのため、繰り返しになりますが、1992年の誕生以来、世界で1,000万以上のインストール/配備実績あるにも関わらず、いまだ知る人ぞ知るデータベースです。それにもかかわらず、SAP SQL Anywhereを採用され、対応データベースをSAP SQL Anywhere1つに統合されたパッケージソフトウェアベンダーは、事業を大きく拡大されています。SAP SQL Anywhereの特徴すべてが、開発コストの削減から、運用・管理コストの削減につながり、利益拡大に貢献するからです。

NDソフトウェア様TechJAMイベント講演

SAP Tech JAMでのエヌ・デーソフトウェアの講演

5月20日に開発者・技術者向けのイベントSAP Tech JAMが開催されました。この中で、介護施設向けのソフトウェアパッケージ「ほのぼのシリーズ」に約20年もの長きにわたって SAP SQL Anywhereを採用いただき、事業を拡大されたOEMパートナーのエヌ・デーソフトウェア株式会社が、OEMの事例セッション枠においてSAP SQL Anywhereのメリットをご紹介くださいました。

エヌ・デーソフトウェアは、全国20,500を超える大小さまざまな規模の介護施設・事業所に「ほのぼのシリーズ」を販売されていますが、予算が限られ、専任のシステム管理者を置けない介護施設・事業所においても「放っておいても動く」SAP SQL Anywhereが、スタンドアロン、施設内クライアントサーバー型、広域WAN型など、またOSもWindowsだけでなくLinuxなど、お客様のニーズに合わせたさまざまな様態のパッケージに活かされています。

エヌ・デーソフトウェアのように、長くSAP SQL Anywhereを採用され、複数のエンドユーザーにSAP SQL Anywhereを配備されているOEMパートナーが多数いらっしゃり、SAPのOEMビジネスを支えています。

SAPはERPの会社と思われている読者の方も多いかもしれませんが、このようなSAP SQL Anywhereのビジネスにみられるように、ERP以外のソリューションのためのビジネスも展開しています。お客様の自社システムのためのライセンス契約だけではく、バンドル販売用の契約形態であるOEM契約やDistribution契約などさまざまな契約形態が用意されています。SAPと今までお付き合いのなかったISVや、今まで社内システム用にのみSAPと契約があったお客様でも、実はデータベースをバンドルするような自社商品を持っているお客様などは、さまざまな形でのおつきあいが可能になっています。

参考記事
従業員数5名のISVでもSAP HANAプラットフォームでソフトウェアビジネスに付加価値を。小規模ISV向けOEMプログラムのご紹介
https://www.sapjp.com/blog/archives/11905

SAP OEMで本業のソフトウェアビジネスに新たな価値をhttps://www.sapjp.com/blog/archives/10986

SAP ERPもAlways AvailableにしてしまうSAP SQL Anywhere

さて、これまではSAPの本業であるERPとはあまり関係ない世界のお話でした。SAPによる統合から約2年、SAP SQL Anywhereを利用した、ERPと連携するソリューションも出てきています。2014年6月に開催されたSAPHIRE NOWにおいてVantage Drilling CompanyのCIOが自社での導入事例を紹介しています。(ビデオが表示されない場合はこちらからご覧ください)

これは、VSAT(Very Small Aperture Terminal)/衛星通信を利用している石油プラットフォームなど、通信環境が整わない現場でもERPのデータを1秒以内で検索・更新できるストレスフリーのオフラインソリューションです。

現場に設置されたPCサーバー上のSAP SQL Anywhereに必要なデータのみ格納し、SAPUI5ベースのUIとSAP SQL Anywhereの機能であるHTTPサーバーを利用してローカルのデータにアクセスし、通常は通信接続やスピードを気にせずサクサクと業務を遂行し、更新されたデータの差分は、SAP SQL Anywhereのデータ同期ミドルウェアであるMobile Linkサーバーによって、本社側ERPのステージングテーブルと、通信がつながった時に随時データ同期するものです。

「Transaction Availability for Remote Sites」アーキテクチャー

Transaction Availability for Remote Sites

この直感的で使いやすいユーザーインターフェースによって、Vantage Drilling Companyではユーザーのトレーニングコストや導入コストを€1.7M削減(7拠点分)、年間のオペレーティングコストを€235K削減されました。また、大手小売チェーンでも、遠方の店舗間およびモバイルのシステムでも同じインフラを利用されています。

Transaction Availability for Remote Sites

このERPとの連携ソリューションは、「Transaction Availability for Remote Sites」というSAPのRCS (Repeatable Custom Solution)のメニューとして登録されましたので、SAPが実装して、SAPがサポートを提供し続けることができます。SAP SQL Anywhereのエキスパートが構築するカスタムソリューションなので、お客様に安心して採用いただけます。

SAP SQL Anywhereは、これまでも多くの支社・支店・代理店・事務所などリモートのサーバー用RDBMSとして採用され、SAP ERP以外の基幹システムのRDBMSとのセキュアなデータ同期を実現してきました。この実績あるデータ連携の仕組みが、SAP ERPとのデータ連携で可能になったことで、可能性が大きく広がっています。

日本では、都心であればほとんどどこでもオンラインでつながるようになりましたが、処理スピードやセキュリティに課題がある場合や、発展途上国へのシステム展開などを検討されている場合には、利用価値が高いのではないでしょうか。

以上、SAP SQL Anywhereの近況をお伝えしました。高い技術力に支えられたSAP SQL Anywhereの技術は、SAP HANAへの技術提供も進んでいます。今後のSAP SQL Anywhereにご期待ください。

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