【JSUG Leaders Exchange Interview】 「データ活用」は経営への貢献の第一歩

作成者:JSUG Leaders Exchange投稿日:2015年1月21日

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Close Up of Businessman's Hand Holding a Pen「JSUG Leaders Exchange」(以下、JSUG LEX)の参加企業の皆様から、企業価値向上を支えるデータ活用についてのお話をうかがう連載企画前編では、かつてカルビー株式会社の代表取締役社長兼CEO、CIOとして手腕をふるい、現在は戦略コンサルティングファーム 株式会社中田康雄事務所の代表取締役社長を務める中田康雄氏に「経営に貢献するIT」の抱える課題についてうかがいました。後編では、経営に貢献するITを実現する上で欠かせないポイントについてお聞かせいただきます(聞き手:SAPジャパン 濱本 秋紀)。

データ活用における「課題定義」

前編では、IT部門は経営に常に寄り添いながら、戦略の実現に向けた貢献を意識すべきだと伺いました。中でも「データ活用」は、比較的ITが経営的な成果に結びつきやすいテーマの一つだと思います。そうした意味で今、企業は効果的なデータ活用が実践できているか、またそれをIT部門は的確にフォローできているかについて、どのようにお考えですか。

中田 まだデータ活用の視点が弱い気もしますが、前回でも触れたようにオペレーションというレベルでは、すでに深く関わっていると思います。しかし、そのデータを分析・活用するという点では、まだまだIT部門は貢献できていないのが実情です。むしろデータ活用は、今のところ業務部門の仕事になってしまっているのではないでしょうか。

─業務により近いところにいる人の方が、積極的に取り組んでいるのですね。

中田 IT部門でもそれぞれの考えでデータ活用に取り組んでいるとは思いますが、それがどれだけ経営課題の解決に貢献しているのかというと、経営側の見方は「IT部門に投げても答えが返ってこない。時間ばかりかかる」と否定的です。ここを何とかしないといけません。最初からIT部門に支援してもらおう、最新の知見を提供してもらおうという期待が経営側に生まれていないのは大きな問題です。

─IT部門がデータ活用のイニシアティブをとる上では、どのようなことがポイントになるでしょうか。

中田 データ活用でもっとも大事なのは、データを作って何をするのか? すなわち「課題定義」が、まず問われなくてはなりません。課題さえ明確になれば、それを解決するための方法論はいくつもあるので、その中でベストのものを選べばいいのです。この肝心の課題定義がなおざりになっているというのが現状であり、最大の課題でもあります。

─その点についての議論がないまま、データをどうやって作るかの議論ばかりが先行するのは本末転倒ですね。

中田 方法論から入ってしまって、「何をするのか?」が抜けている。「このデータを使って、こういう解析をしたい」という目的が定まっていないのです。たとえば、「経営トップに適切な情報を提供しよう」と言うと、即座に周りも「それはいい」となりますが、その前提となる「どんな情報を上げるべきか?」「トップは何が見たいのか?」を考えて、それを実現するための情報提供の仕組みまで突き詰めないと意味がありません。

─IT部門にも経営層のニーズに対する想像力が必要なのですね。

中田 経営トップは、社内情報だけでは決して満足しません。マクロな意思決定のためには、過去の社内の細かいデータを積み上げてもあまり意味がないからです。社内情報が役に立つのは、むしろミドルマネージメントの階層です。現場のマネージャーが、自社の業務の実態把握をするのに必要なデータが取れない企業は意外に多いのですが、ミドルマネージメントのPDCAにこそ、こうした社内データが役立つのです。ひるがえって見れば、これが社内データの限界なのですが、ミドルマネージメントに有用であるのは事実です。こうした個々の話を抜きにして、いきなりデータを提供しようというところから始まってしまうのが、現在のデータ活用の取り組みが実りあるものにならない原因です。データ活用というテーマについては、残念ながら日本企業はまだ未成熟のレベルだと言わざるを得ません。

「データ活用」は経営への貢献の第一歩

─データ活用の未成熟な状況に対して、IT部門がイニシアティブをとれる可能性があるとしたら、どういったことがあるでしょうか。

中田 IT部門は、業務プロセスから生じるさまざまなデータを使って何ができるかをまず考えるべきだと思います。たとえば、「ビジネスプロセスのリエンジニアリング」「ビジネスユニット単位のマネージメント」「売れ筋など顧客との関係で生じるデータ」「顧客一人ひとりの嗜好やそれに対して提供すべきサービスの管理」などが、具体的なテーマとして挙げられます。

─いくつか伺うだけでも、非常に興味を惹かれますね。

中田 1to1マーケティングのためのデータ活用は、これからさらに注目されると思います。個々のお客様とそこに提供したサービスのデータを解析していく取り組みが、次のニーズや市場を読む上で強力な武器になっていくのは確実です。

─今の1to1マーケティングにおけるデータ解析のお話には大きな可能性を感じるのですが、企業全体で見るとまだまだそこまでのデータ解析には到達しておらず、とりあえずはいわゆるBIのレベルまでのデータ活用ができたところ、というのが大半という気がします。

中田 これは先ほど言ったように、経営戦略が明確でないことと関係しています。経営戦略が明確というのは、仮説やそれに対するKPIおよび分析対象となるデータが明確だということです。戦略もKPIもないところで、データだけをやみくもにいじろうとするのが一番の問題だと思います。

─本格的なデータ活用までには、まだまだ課題が山積みですね。

中田 とはいえ、決して悲観することはありません。戦略やKPIがなくても、何が今もっとも重要な課題かというのは、誰もが意識しているはずです。その意識を顕在化し、課題の解決に向けてデータの「見える化」を試みるだけでも、少しずつ変わっていくと思います。そうした社内の動きに対して、IT部門が積極的にイニシアティブをとっていくということが、これからは何より大切なのではないでしょうか。

議論や研鑽の場としてJSUG LEXを活用

─今回うかがった課題の解決に向けて、JSUG LEXがますます積極的な議論や研鑽の場になっていけば、非常に意義のあることだと思います。最近のJSUG LEXには若手のITリーダーも多数参加されていますが、中田さんからはこうした方々に「JSUG LEXで得た知見や成果をもとに、自分の会社に戻ったらこんなことを試みては」といったアドバイスもされているのですか。

中田 特別なアドバイスはしていませんが、今年のJSUG LEXでは、現役の企業役員の方々をお招きして、経験談や現在進めている取り組みについて、かなりリアルなお話を披露していただきました。こうしたお話が、参加企業の皆さんにとって良い刺激になったと思います。これまでと違う世界を垣間見ることは、「今のままではいけない。では、自分はどうするのか?」と考える大きなきっかけになります。JSUG LEXを契機に新たなモチベーションが自分の中に芽生えたなら、ここからがまさに勝負だと思います。

─こうした刺激を受けて、まさに皆さんが同じスタートラインに立ったというわけですね。

中田 もう1つの試みとして、今回はJSUG LEXのメンバーが課題としている項目の中から4項目ほどをモデルケースとして選び、4~5人のチームで各々の課題への対応と解決方法を検討してもらい、ケーススタディも行いました。その成果発表が12月5日のJSUG Conference 2014で行われ、多くの来場者の方々にご参加いただきました。今後もこうした活動を積極的に展開して、データ活用をはじめとするさまざまな課題解決の場として役立てていきたいと考えています。

─そうした成果をふまえて、今後ますますJSUG LEXの活動が盛り上っていくことが期待できますね。私たちも皆さんのモチベーションの高まりをしっかり支えていけるよう、より一層の努力を続けていきたいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

■略歴
中田 康雄(なかた・やすお)氏
株式会社中田康雄事務所 代表取締役

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慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了。2005年 カルビー株式会社 代表取締役社長兼CEO、CIOに就任。2009年、株式会社中田康雄事務所を設立して、代表取締役に就任。JSUG Leaders Exchange立ち上げ当初からの中心メンバーの1人として、現在も精力的に活動に参加している。

 

 

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