SAP流スタートアップ支援の取り組み――第1回:起業家マインドの価値を高めるイノベーション支援とは?


こんにちは、SAPジャパンの吉越です。読者の皆様はコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)という仕組みについてご存じでしょうか。CVCは、事業会社が本業と関連の高い企業に投資をすることで、自社だけでは実現が困難な成果を生み出すなど、将来的な事業成長を目的とした投資活動を行う仕組みのことです。最近は、IT関連のスタートアップ企業への投資を行うCVCが多く設立されていて、日本でも注目を集めるようになっています。

スタートアップ支援を通じて、イノベーションのエコシステムを創出

Woman sitting in room using laptop意外に思われるかもしれませんが、実はSAPもこのCVCに近い仕組みを通じて、スタートアップ企業の支援を行っています。ただし、そのアプローチはいわゆる財務的なリターンを目的としたベンチャー・キャピタルとは異なり、SAPの知見を活用しながら、イノベーションを生み出す仕組み作りが主眼となっているところが特徴です。起業家を応援することで、新たなビジネスにつながるエコシステムを創出することが狙いなのです。

グローバルな枠組みとしては、2012年に立ち上げた「SAPスタートアップ・フォーカス・プログラム(SAP Startup Focus Program)」をベースに、すでに世界57カ国、1,500以上のスタートアップ企業に参加いただくなど、取り組みは活発化しています。このプログラムでは、独創的な技術やビジネスモデルを備えたスタートアップ企業が新たなビジネスや市場を生み出せるよう、SAPの開発・ビジネスプラットフォームが提供されます。ただし、ここではそれぞれのスタートアップ企業に個別アプローチを行うだけでなく、エコシステムを創出することが目的ですので、そのための仕組み作りもあわせて検討されます。

本ブログではこれから3回にわたって、このプログラムから生まれた日本の地方自治体の事例、福井県鯖江市の取り組みについてご紹介したいと思います。自治体におけるオープンデータの取り組みを契機に、地域におけるエコシステムが形成されつつある鯖江市の事例をご覧いただくことで、日本におけるスタートアップ支援とイノベーション創造に向けたSAPの取り組みをご理解いただけると思います。

スタートアップ企業にとってのメリットとは?

SAP スタートアップ・フォーカス・プログラムでは、参加企業は大きく2つの支援を得ることができます。1つは、SAP HANAを無償で活用して、ソリューション開発を行えることです。SAP HANAの能力を最大限に引き出すための、テクニカルサポートやトレーニングなども無償で受けることができます。つまり、最先端の開発環境を享受することができるのです。もう1つは、スタートアップ企業が開発したソリューションを、SAPの顧客やパートナー企業に対して営業・マーケティングする機会を得られることです。革新的なソリューションを開発することができれば、日本市場はもちろんのこと、グローバルで25万社以上というSAP顧客にリーチすることが可能になります。また、SAPのパートナースキームを利用することも可能になるため、多大なる営業支援を得ることができます。このように、ほぼ無償で業界屈指の開発環境ととてつもない営業機会を手中にすることができるというメリットが、すべての参加企業に与えられるのです。

外部の起業家マインドを積極的に支援

では、そもそもSAPはなぜ、このような活動に注力しているのでしょうか。その目的は、SAP HANAの短期的な売上げやベンチャー・キャピタルとしての投資先を発掘することではありません。最大の狙いは、斬新で柔軟な起業家を支援することにより、イノベーションを起こすことです。読者の皆様の中には、SAPほどの企業であれば潤沢な研究開発費を投じることで、社内でイノベーションを起こせるのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし実際のところ、これだけの大規模な企業になってしまうと、まったく新しい発想を内部で起こすことは非常に難しい面があります。そこで、外部の起業家マインドを積極的に取り込むことを目的に実施しているのがこのプログラムなのです。

またSAPは現在、「プラットフォーム&クラウド・カンパニー」に生まれ変わろうとしています。従って、起業した段階から「クラウド思考」でビジネスに取り組むスタートアップ企業との協業は、斬新な発想を取り入れる上で有効な手段となります。「まず、やってみる」というスピード感や、「無知の知」「素早い失敗の繰り返しは成功への近道」という大企業には無い斬新なマインド、失敗を恐れないアントレプレナーシップ(起業家精神)の文化が、SAPにとって大きな糧になるのです。そして、この糧を顧客企業にもフィードバックしていく。このような好循環を作っていくことが狙いなのです。

ビッグデータ活用をテーマとした海外での成功事例

日本以外の国におけるSAP スタートアップ・フォーカス・プログラムの取り組みでは、いくつかのテーマに基づいて実施されることが多くなっています。たとえばゲノム、金融といったビッグデータの中でも飛び抜けてデータ量の多い「スーパービッグデータ」といったテーマです。まさにSAP HANAの活用に最適なテーマが優先的に選ばれています。米国やインドなどでは、このプログラムに大学の研究者や科学者なども積極的に参画し、成果を上げつつあるということです。

一方、日本ではこうしたテーマやインダストリーに制限を設けず、自由に起業家精神を後押しするような活動となっています。まずは、日本のスタートアップ企業にSAP HANAに親しんでもらえる機会を提供するところから始めています。そして、母集団を広くするために、ITデベロッパーの啓発を含め、スタートアップではないけれど、このような活動に関心ある方々の参画も対象としています。また、そもそも起業家精神を育むためには、より若年層、具体的には小学生などを対象にプログラミングなどに触れてもらうイベントも開催しています。

市民が主役のエコシステムを形成する鯖江市の取り組み

このようなことを個別にではなく、一連の仕組みとして実現しようとしているのが、実は福井県鯖江市のような自治体での取り組みです。現在、自治体における大きなテーマの1つにオープンデータの活用があり、米国ではニューヨークやシカゴ、ボストンなどの自治体で成功事例があります。自治体のデータをスタートアップ企業や有志の方々が起業家精神をもって自発的に有効活用する、いわば市民が主役のイノベーティブなエコシステムがそこにあるのです。このような仕組みが日本でも実現できるのではないかと考え、SAPでは鯖江市での具体的な取り組みを開始しました。国内におけるメガネフレーム生産の90%を担うこの土地で、女子高生の作ったオープンデータアプリがブレークするなど、いま大きなイノベーションが起きつつあるのです。次回以降は、この鯖江市における取り組みの詳細に迫り、イノベーションについて考えていきたいと思います。

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