SAPが描く近未来のユーザーエクスペリエンス(UX)――第1回:ウェアラブルデバイスでSAPが目指していること


SAP TechEd Las Vegasみなさん、こんにちは。SAPジャパンの井口です。2014年11月6日にSAPジャパンから発表されたスマートグラスを使った業務アプリのリリースには、各方面から多くのお問い合わせをいただき、私もこの分野に対する関心の高さをあらためて認識することができました。ここで1つ明確にしておきたいのは、SAPはスマートグラスに特化したソリューションを作ることを最終的なゴールとしているのではなく、将来のユーザーエクスペリエンスの可能性を模索する過程として、ウェアラブルデバイス、スマートグラスを使った取り組みを開始しているということです。

この背景には「ユーザーエクスペリエンス(UX)の高度化」という明確なビジョンがあります。そこで本ブログでは、UXの高度化という観点からSAPが掲げるビジョンと戦略、また具体的な取り組みについて、全3回の連載で解説していきたいと思います。第1回は「ウェアラブルデバイスでSAPが目指していること」と題し、より優れたUXを提供するためのあらゆる可能性を追求し、具現化するためのSAPのビジョンについてご紹介します。

デバイスはあくまで高度なUXを実現するための手段

2014年11月6日のプレスリリースでSAPジャパンが発表したAR(拡張現実)※注モバイルアプリケーションの新製品は、Vuzix社製のスマートグラスを用いてハンズフリーの倉庫管理業務を実現するソリューションです。Google Glassをはじめとするウェアラブルデバイスに対する関心はことのほか高く、さまざまなメディアでも取り上げてられ、多くのお問い合わせもいただきました。

しかし、その関心はソリューションに対してというよりも、スマートグラスの機能や将来の可能性といった視点のものがほとんどでした。一部の業界の方々からは異論があるかもしれませんが、現時点でのスマートグラスの実用性については、視野角の狭さやカメラの解像度、発熱しやすい(デバイスがすぐに熱くなってしまう)、バッテリーの減りといった多くの課題があり、またそのデバイスで動作するモバイルARアプリもまだまだ黎明期であることから、高度なUXを実現するソリューションや、そこから生み出されるビジネスの価値に注目が集まるには、まだ少し時間がかかるのかもしれません。

※注 AR(Augmented Reality:拡張現実)—―人間が知覚する現実の環境に対して、ITによって情報を補完することで増幅、拡張するテクノロジー。常に持ち運べるモバイルデバイスは、ARと高い親和性を備えていることから、近年はモバイルARアプリの開発に力を入れる企業が増加している。

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では、スマートグラスに代表されるウェアラブルデバイスは、SAPにとってどのようなビジネスの可能性を秘めているのでしょうか。SAPが掲げるビジョンにおいて、ウェアラブルデバイスは、スマートフォンやタブレットを活用したモバイルソリューションの延長線上として発展している側面もあるかと思います。一方、広義のウェアラブルデバイスは、センサーなどさまざまな新型デバイスやIoTという側面も含むかと思います。その中でスマートグラスは、ウェアラブル・ウェブ(Wearable Web)に分類される1つのユーザーインターフェイスの進化系・応用形という側面があると思います。(以下の図を参照)。

重要なのは、それらのデバイスの多くは、UXを実現するための手段としての比重が高く開発されたものだということです。SAPもエンタープライズアプリケーションの提供において、常にユーザーがより直感的かつ自然に業務を遂行するため、またいかにビジネスプロセス全体をリアルタイムに遂行できるかという視点でソリューションを追求しています。そして、今回はスマートグラス自身が進化を繰り返し、実用に近い段階にまで成熟してきたことから、どのように業務に貢献できるか、具体的な取り組みを始めているということです。

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つまり、SAPが実現しようとしていることは、個別デバイスに特化した実用化、最適化されたアプリケーションではなく、一連の業務(ビジネスプロセス)におけるUXを含むエンドツーエンドなソリューションなのです。他社の取り組みをみると、それらは往々にして断片的なアプローチが多く、世間一般の見方もそのような傾向が強いと思いますが、SAPはまずエンドツーエンドでのソリューションの提供を第一義として捉え、デバイスはその中の構成要素の一つとしてとらえています。今回発表した倉庫管理業務向けアプリケーションでは、SAPの拡張倉庫管理アプリケーションであるSAP Extended Warehouse Management(SAP EWM)と組み合わせることにより、UXを含むトータルソリューションを作る出すことができるのです。

デザインシンキングでウェアラブル領域におけるイノベーションを創出

では、このような応用としてのユースケースはどのようにして開発されるのでしょうか。SAPではデザインシンキングという新たなアイデアやイノベーションを生み出すフレームワークを用いて、さまざまな業種のユーザー企業と協働を進めています。たとえば、「リアルタイムの現場」「ハンズフリー」「現場」というキーワードに、SAPが主眼としている業務分野を重ね合わせることにより、「倉庫管理」「メンテナンス」「生産ライン」「フィールドサービス」などの業務での応用イメージを導き出すことができます。さらにその延長線上には、「小売」の販売現場、店舗での応用なども考えられます。

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また、SAPが主眼とする業務分野でも、以下のようにさまざまなアイデアが考えられます。

ž   業務関連周辺領域

  • 広報・PR目的:たとえば、メーカーでの工場見学の際に、消費者にウェアラブルデバイスを装着してもらうことにより、自分の家や身の回りにあるそのメーカーの部品などが見学中に自動でわかり、説明を提供できるようにする
  • 展示会管理目的:顧客や入場者の顔認識・情報チェック、現場でのSNSによる情報共有など

ž   サービス現場(飛び道具的発想)

  • スポーツ観戦:観客が試合観戦しながら、ウェアラブル端末を通じて選手の詳細情報がリアルタイムに出てくる
  • ヘルスケア:医師が患者情報をハンズフリーで見ることができる

SAPとしては、従来から注力してきた業務領域でのソリューションから順番に取り組んでいくという形で、倉庫管理ソリューションであるSAP AR Warehouse PickerとフィールドサービスソリューションであるSAP AR Service Technicianについては、すでに具体的なユースケースの公開を行っています。また小売分野におけるソリューションについても今後、具体的なユースケースの公開を予定しています。

冒頭で書いたように、スマートグラスに代表されるウェアラブルデバイスにはまだまだ課題があります。しかし、これまでのスマートフォンやタブレットを見ても、時間の経過とともに劇的な進化を遂げてきました。ウェアラブルデバイスも今後1~2年の中で、その実用性に大きな期待が持てるのではないでしょうか。

こうした状況も踏まえ、次回からはモバイルARアプリを活用したユースケースとして、「倉庫管理」「フィールドサービス」「小売」の3つの分野について見ていきたいと思います。ぜひご期待ください。

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