SAPが描く近未来のユーザーエクスペリエンス(UX)――第2回:ウェアラブルデバイスを業務で活用する3つのシナリオ


SAPジャパンの井口です。ユーザーエクスペリエンス(UX)という観点から、SAPが掲げるビジョンと戦略、また具体的な取り組みについてご紹介する連載。第1回は、SAPが2014年11月に発表したAR(拡張現実)モバイルアプリケーションの新製品も交えて、ウェアラブルデバイスでSAPが目指していることについてご紹介しました。世の中の関心が集まるウェアラブルデバイスは、SAPにとってあくまでビジネスプロセスのリアルタイム化を実現するための手段ですが、これらのデバイスがユーザーにとっての優れたUXを生み出す大きな可能性を秘めていることも確かです。そこで第2回では、ウェアラブルデバイスを活用した高度なUXでビジネスに貢献している3つのユースケースを、「倉庫」「フィールドサービス」「小売」の業務分野から見ていきたいと思います。

倉庫業務向け――ピッキングプロセスの改善「SAP AR Warehouse Picker」

最初にご紹介するユースケースは、倉庫管理業務向けのアプリケーションです。これは倉庫で作業を行う際に作業者がスマートグラス経由でピッキングの指示を受けたり、スマートグラスで直接バーコードスキャンしたり、音声認識で端末へのデータ入力を実行するなど、現場作業で両手を塞がないハンズフリーでの作業を実現します。また認証を簡略化することで、スマートグラスを通じてユーザー名、パスワード、その他の情報入力を不要にし、ハンズフリーのコンセプトを可能な限り追求している点も特徴です。

ここではウェアラブルデバイスを利用して、倉庫などでのピッキング作業や保守・保全作業を支援するために開発された「SAP AR Warehouse Picker」が活用されています。本ユースケースについては、以下に動画とブログに詳細がありますので、こちらをご参照ください。

【参考動画】 SAP & Vuzixが提供するスマートグラスで工場労働者にハンドフリーのイノベーションを

【参考記事】 ウェアラブルデバイスが加速する近未来のエンタープライズモビリティ
https://www.sapjp.com/blog/archives/5416

 

フィールドサービス向け――保守・保全プロセスにおける高度なUXの実現「SAP AR Service Technician

2つめのユースケースは、フィールドサービス向けのアプリケーションです。これは現場にいるフィールドサービスの作業員にスマートグラスを通して、保守・保全手順や作業対象箇所などを指示・提供し、ハンズフリーでの作業を可能にします。作業員はリモートで拠点や本部の専門スタッフとコミュニケーションをとることもでき、作業効率の向上とコスト削減が可能になります。

以下で作業イメージについて見ていきます。例として挙げられているのは、サッカースタジアムで電力障害が起き、それに現場作業員が対応するというものです。このプロセスは1つめのユースケースと同様、SAPが開発した「SAP AR Service Technician」というアプリケーションによって実現されています。

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①    スタジアムの電力供給に障害が生じて、ライトが減灯されました。

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②    スタジアムの電力に問題があることが、フィールドサービス担当者にスマホ経由で連絡が届きます。

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③    指示を受け、担当者は早速スマートグラスを装着して現場に向かいます。

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④    スマートグラスの指示に従い、電力制御盤のある場所へと向かいます。

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⑤    目的地に到着し、電力制御盤を開けると、インストラクションマニュアルが展開します。交換対象となる部品などが画像として示され、インストラクションと呼応するため、素早く作業箇所の特定し、作業内容を把握することができます。

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⑥    インストラクションに従って、作業を進めます。インストラクションの該当工程がハイライトされるので、人的なミスを最小限に抑えることができます。

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⑦    問題のあったユニットを指示に従って交換し、作業完了。

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⑧    問題のある部品交換が即時に実施され、スタジアムの照明が元の明るさになりました。

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⑨    応急処置をしたのですが、まだ気になる点があるようです。そこで、本部にいる専門家を現場から呼び出して、ビデオ通信で指示を仰ぐことにしました。

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⑩    現時点では大きな問題はないであろうとの結論にはなりましたが、いずれにせよ、最終確認作業が後ほど必要となるので、その場で作業指示を送信して、今回の保守・保全ミッションは完了しました。

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このようにスマートグラスを通じた3次元でのインストラクションなどが、直感的でわかりやすい形で提供されるので、作業員が間違うことなく作業ができる様子がお分かりいただけたかと思います。加えて、拠点や本部の専門スタッフとのビデオ通信や、音声認識などを駆使して、究極のハンズフリーが実現さえている点も大きな特徴です。

このユースケースは以下の動画でご覧いただくことができます。

 

小売業向け――買い物客の顧客体験の向上「hybris + iBeacon + Google Glassによる購買体験のイノベーション」

小売業のユースケースとして、Eコマースソリューションであるhybris(SAPが2013年に買収)をエンジンとして採用し、iBeaconとGoogle Glass(グーグルグラス)を使って顧客の買い物体験を向上させるユースケースをご紹介します。買い物をする顧客はスマートフォンを、店舗の店員はGoogle Glassを使って、iBeaconとのやりとりを通じてシームレスで満足度の高いサービスを実現しています。

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①    自宅でくつろぎながら雑誌を読んでいたミゲルは、気になるスキー板を見つけました。早速スマホでバーコードを読み取り、カスタマーサービスに店頭でアシストしてくれるようにリクエストを送信。このアプリケーションはhybrisによって実現されているものです。

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②    ミゲルがお店に行くと、あらかじめ送られていた情報に基づき、ミゲルがお店に入ってきたことが、Google Glassを装着した担当店員にiBeaconを通じて自動で通知されます。

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③    店員のサラのGoogle Glassには、登録情報に紐づけされたミゲルのFacebookのプロフィール写真が表示されるので、ミゲルが誰だかすぐにわかります。

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④    ミゲルが関心を持っている製品について、展示場所、スペックなどがGoogle Glassに表示され、すぐに商品を見つけることができます。商品説明に必要なガイダンスやミゲルが欲しいオプションなども提供されるので、即座にそういった情報を顧客に提供することも可能です。

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⑤    すぐに商品の在庫を確認し、ミゲルの望むオプションなどを取り揃え、支払いとなります。支払いの段階で、ミゲルが気になっている商品の一覧(ウィッシュリスト)が表示されるので、そういった商品をその場でオファーすることができます。スキー板のほかにミゲルが興味を持っているのはヘッドフォンです。

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⑥    ミゲルは欲しかったスキー板をスムーズに買うことができたばかりでなく、気になっていたヘッドフォンも買うことができ、非常に満足な買い物体験を得ることができました。当然ながら、店舗も見込み客に対する適切な販売ができただけでなく、他の関連商品も効果的に販売でき、皆ハッピーな結果となりました。

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このユースケースは、商品情報と顧客情報が紐づけられたデータベースを、スマートフォンとGoogle Glassで高度なUXに昇華させた画期的な事例といえます。このユースケースは以下の動画でご覧いただくことができます。

以上のように、SAPではスマートグラスなどのウェアラブルデバイスを、さまざまな業務分野で積極的に活用し、UXの高度化に取り組もうとしています。前回もお伝えしたとおり、この分野ではウェアラブルデバイス自体やハードウェアの実用性など、クリアしなければならない課題がまだまだありますが、ソフトウェアの充実も並行して進めていきながら、ユーザーの皆様に高度なUXを提供していきたいと考えています。

次回は、デスクトップ、タブレット、スマートフォンなどさまざまなデバイスで直感的なUXを実現するSAP Fioriに焦点をあてて解説したいと思います。読者の皆様の中には「SAP Fioriってアプリじゃないの?」と思われている方もいるかもしれませんが、そういった点についてもあらためて解説します。

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