金融勢力図を塗り替える抜本改革とソリューション――第3回:金融機関が真のサービス業になるために


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SAPジャパンの鈴木です。「金融勢力図を塗り替える抜本改革とソリューション」と題して、シリーズでお届けしています。第1回は「商品中心主義から顧客中心主義へ~基幹系(勘定系)システム大幅刷新の新事実~」というテーマで、顧客起点で金融の基盤システムを刷新する効用についてご紹介しました。第2回は「機械学習が生み出す驚異のマーケティング」というテーマで、金融業界におけるリアルタイムマーケティングのトレンドとその実現に向けたソリューションについて、岡田がお伝えました。前2回をお読みいただいた読者の皆様には、世界中の金融機関にとって顧客中心主義に転換すべく抜本改革に取り組み、マーケティング面での新技術などを迅速に導入できるかどうか、今まさに勝負の分かれ目であることが、おわかりいただけたかと思います。今日の対応が明日の業界勢力図を塗り替えつつあります。

さて3回シリーズの最終回は、金融業界における規制強化の流れやその他の新しいトレンドをカバーし、金融機関が真に顧客第一主義のサービス企業になるための課題とソリューションについてお話します。

強まるリスク管理への要求

2008年のリーマンショックは、世界中の金融機関に深刻なダメージをもたらしましたが、その金融機関の先にある顧客(個人、法人)にも甚大な影響を及ぼしたことは忘れてはならない事実です。以来、金融規制当局によって、金融機関のリスク管理がますます強化されています。具体的には、バーゼル銀行監督委員会による、BCBS239(実効的なリスク・データ集計とリスク報告のための諸原則)、および、BCBS248(日中の流動性管理に対するモニタリングツール)の施行が、2016年に迫っています。これらは、「グルーバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)」に対して要求されます。

一方、第1回第2回で述べてきたように、金融機関の日々の業務は顧客中心主義へと、かつてない変革のまっただ中にあり、その変革に伴って副次的リスクなども生じています。たとえば、情報管理面やセキュリティの観点からは、モバイルデバイスの扱いが新たなリスク要因になっています。モバイルデバイスは、その利便性と裏腹に、置き忘れや紛失、盗難などの可能性があり、情報漏えいなどのリスクが大きくなっているのです。さらに、新商品・新サービスの提供や企業間提携などを行う際には、管理すべきリスクがより複雑化します。また、金融機関の顧客には、個人のみならず、当然ながら法人の顧客も含まれ、法人顧客向けに利便性提供を行う新たな取り組みの際にも、セキュリティとリスク管理は必須です。

つまり、金融機関がこの大きな変革期を乗り切るためにも、「攻め」だけではなく「守り」をきちんと行い、個人・法人の顧客に対して、利便性と安心を共に提供できるように装備していくことが、大変重要なポイントなのです。そこでは、「信頼」がキーワードになります(後述)。

リアルタイムレポーティングが必須に

まず、メガバンクに関する規制強化から見ていきましょう。先に触れた「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)」とは、文字通り、金融システムにおいて、破綻などが起きた時にグローバルな影響が無視できない銀行群を指します。それらに対して、安全性担保のための規制が強化されようとしています。

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これらの銀行には、いくつもの規制がかかってきますが、その中でもデータや情報処理に関わるものとして、先に挙げたBCBS239とBCBS248があります。BCBS239は、リスク・データ集計とリスク報告に関するもので、リスク情報を求められた時には適時レポーティングしなければならないというものです。ポイントは、以下のとおりです。

  • 組織の壁を越え、事業部門、地域、グループ法人すべてにわたり、リスク情報を収集し、適時レポーティングしなければならない
  • リスク情報は自動的に収集されるようになっていなければならない
  • レポーティングはオンデマンド、あるいは個別にいつでも適時なされなければならない
  • レポーティングは、つじつまが合い、妥当で正確なもので適時になされなければならない
  • リスク情報の収集ができない新たな活動は制限される

つまり、リスクに関わる情報をグループ中から自動収集し、いつでも適切な形式でレポーティングできるようにしておく必要があります。

また、BCBS248では、銀行の流動性を最低1日1回評価し報告しなければなりません。資産にはリアルタイムで価格のつくものから、評価により価値が決定されるものまで多数存在しますが、これらを流動性の観点から分類し、総体として流動性を監視する必要があります。

「リスク評価や流動性評価のリアルタイム報告」というのは、言うは易しですが、実際にはたいへん複雑で膨大なデータ処理を必要とします。2016年に施行が迫る中、対象の金融機関は対応を迫られています。

銀行のリスク及び資産に関する情報をリアルタイムで収集し、レポーティングするといった複雑、かつ膨大なデータのリアルタイム処理を可能にするのが、SAP HANAです。

これらの規制はまずG-SIBsに対して適用されますが、次のステップとしてD-SIBs(国内のシステム上重要な銀行)への適用拡張が予定されており、規制対象でない金融機関においても、適切なリスク情報収集とレポーティング機能、資産の価値評価をいつでもできるような仕組みを備えれば、グローバル基準での信頼性の高い金融機関として認知を得ることができるでしょう。

モバイルデバイスの安心利用のために

一方、金融機関の「顧客中心主義」への変革に伴って生じうる副次的リスクとしては、先に簡単に触れたような、モバイルデバイスの利用に伴うセキュリティリスクがあります。SAPはモバイルデバイス管理の領域でも、ソリューションを用意しています。例を挙げましょう。

ある銀行では、ファイナンシャルプランナー(FP)向けに、投資信託販売用のモバイル端末を管理しています。これは、タブレット端末の利便性を損なわずに高いセキュリティを確保することにより実現しています。具体的には、USBポートの停止やSDカードの使用禁止、設定メニュー操作の無効化など、標準のAndroidには搭載されていないセキュリティ対策が行えるようになっています。

また、第1回でとりあげたオムニチャネルへの対応やモバイルウォレットなどの新たなサービス提供においても、このようなセキュリティが担保されたソリューションにより、一貫したカスタマーエクスペリエンスを提供し、どのチャネルからのアクセスに対しても高品質なサービスを提供するご支援をしています。

銀行と企業の新たな信頼関係の構築~SAP FSN~

さて、これまでは、SAP が金融業界のお客様に対して、個別に提供しているソリューションについて述べてきました。3回シリーズの最後に、SAP自身の顧客でもある一般事業会社と金融機関双方にクラウドを通じて決済コミュニケーションサービスを提供する、SAP Financial Services Network(FSN)についてご紹介します。このサービスは、企業(事業会社)と銀行の決済プロセスを連携させ、企業活動をより円滑にさせようというものです。これは、企業からの以下のような要望を反映させています。

  • 複数の銀行との連携
  • 売掛金管理プロセスの最適化
  • 買掛金管理プロセスの最適化
  • 低いコストと高い安全性・セキュリティ

この決済ネットワークを使えば、複数の銀行と国を超えて決済が可能になり、企業にとって一気通貫のプロセスとして管理できるようになります。これまで海外現地法人設立などにより新しい国に進出した場合、決済のしくみを一からつくらなければならなかったのが、このネットワークに入っていれば、あたかも日本国内での取引であるがごとく、スムーズな金融取引を行うことができます。金融機関にとっても、法人顧客の満足度を高められると同時に、新規顧客獲得、コスト削減などが可能になります。

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また、このネットワークは、データの暗号化をはじめ、強固なセキュリティを擁しています。

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信頼される、真のサービス業を目指して

以上、3回にわたり「金融勢力図を塗り替える抜本改革とソリューション」という題目のもとご紹介しました。第1回は「商品中心主義から顧客中心主義への転換のために必要なことは何か?」という問い掛けから始め、基幹系システム刷新に代表される抜本的なプラットフォーム改革の必要性を提案いたしました。「新しい酒は新しい革袋に」という言葉があるように、新しいパラダイムや事業は新しいシステムの上でなければ効果的に動かないのです。第2回は、「リアルタイム」をキーワードに、ビッグデータ解析を含むリアルタイムマーケティングのお話をしました。データマイニング業務を、自己学習機能を有したアルゴリズムを用いて行うことにより、格段のスピードアップ、効率向上、コスト削減につながることがわかりました。ここでも分析・予測の精度向上が競争優位を高めることが再認識できました。

3回目の今回は、規制強化などの外的要因や、変革に伴う新たなリスクという観点から、金融機関が真のサービス業になるためには何が必要かというお話をしました。それは「信頼」という言葉でくくることができます。

つまり、技術革新や規制環境変化の中で、抜本的な変革を遂げながらも、「信頼」は変わらず担保し続けなければならないのです。むしろ、顧客志向になればなるほど、「信頼」が、金融機関にとっての重要命題になると言えましょう。SAPとしてもこの命題をともに実現できるよう、引き続き活動を続けてまいります。

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