数字を見て考えよう・行動しよう − 前編:決算早期化のあるべき姿をベンチマークデータから紐解く


「決算早期化」は、多くの企業にとって長年の経営課題であると思います。決算早期化がもたらすメリットや実現のための方策については、当ブログのこちらの記事を参照いただくことにして、読者のみなさまは、「決算早期化」がもたらす経済効果について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

2600億円 ― 決算早期化がもたらす経済効果

SAPは「会計・経理」「人事・給与」といったコア業務のパフォーマンスを測定し、業界平均値などとの対比で評価することを可能にする「ベンチマーキングプログラム」を提供しています。

このベンチマークデータを活用し「日本における決算早期化がもたらす経済効果」を試算してみました。その結果、国内上場企業全体において、年間2600億円もの経済効果を生み出す可能性があることがわかりました(グラフ)。

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国内上場企業全体(約1700社)の売上高は年間およそ600兆円。これらの企業がSAPベンチマークの「平均レベル」だと仮定すると、決算処理に9900億円のコスト(工数)がかかっていることが想定されます(左の棒グラフ)。これらの企業が決算のさらなる早期化を実現することで、年間2600億円のコスト削減が可能であることが見えてきました(右の棒グラフ)。

背後にどういったカラクリがあるかについては、次節以降を読み進めて頂ければと思いますが、このようにSAPのベンチマークデータを活用することで、客観的かつ具体的な数字をもとに、「次の一手」を考えるきっかけが生まれます。そこで今回は、SAPのベンチマークデータがどういった示唆を与えてくれるものなのか、「会計・経理」業務に焦点をあてて見ていきましょう。

決算処理日数 ― 7稼働日で財務諸表が確定できていますか?

グラフ1は、「決算処理日数(年次, 連結)」のベンチマークデータを示しています。国内外2154社の全体平均は「19日」となっており、上位25%、つまり成績上位層の平均は「7日」、一方、下位層の平均は「30日」となっています。なお、この指標は、企業内における決算処理に必要な稼働日の日数を示しています*1。成績上位層の場合、2015年3月が決算期の会社であれば、4月9日には財務諸表の数値を確定させることができ、ゴールデンウィーク前の決算発表に向けた準備を進めることができます。ゴールデンウィーク後に決算発表をする日本企業は多く、ベンチマークの平均クラスにとどまっているケースが多いのではないでしょうか。

*1 締日を起点とし、社内的な決算終了まで。監査や税務、外部への報告は含まない。稼働日ベースの数値。

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決算業務要員数 ― どれだけの人数が適正か?

グラフ2は、「決算業務に係る要員数*2」のベンチマークデータを示しています。この指標により、決算業務にどれだけの人数を必要としているかが見えてきます。なお、比較可能性を担保するため、企業規模に関わらず売上高1,000億円あたりに換算した指標を示しています。真ん中の棒グラフがベンチマークの全体平均、つまり売上高1,000億円であれば、16.6人が日々の決算関連業務を担っているということを示しています。上位および下位の見方は、前述の「決算処理日数」と同様です。なお、企業規模の違いによってこの指標が示す傾向に大きな違いはないことも確認できています。

*2 正確には、FTE(Full Time Equivalent:フルタイム当量)としてデータを収集している。

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このグラフ2は、「決算業務に係る要員数」のベンチマークデータを単純にグラフ化した結果で、決算処理が早いか遅いかを示すものではありません。つまり、この指標において上位25%クラスであったとしても、決算処理日数が「30日(=長い)」である、という可能性もあります。反対に、多くの要員数を投じ、決算処理速度を早めている、という企業もあるかもしれません。たとえば、高い「納期遵守率」を誇っていても、それが「過剰在庫」によって支えられていては意味がない、という話と同じです。指標は、相反する2つの側面から検証する必要があります。

このことを踏まえ、SAPが実施した興味深い分析結果を見て行きましょう。

決算処理日数と要員数の相関関係

これまで見てきたグラフ1とグラフ2、つまり、決算処理日数とその要員数に認められる相関関係について説明します。グラフ3は、先ほどのグラフ2(要員数)を、決算処理スピードにおけるベンチマークデータにより、3つのグループに分けた結果を示しています。すなわち、左の棒グラフが示す決算処理が「速い」グループ(上位25%)は、決算業務に係る要員数が「20.7人(売上高1,000億円あたり)」となり、「遅い」グループ(右の棒グラフ、下位25%)になるほど、より多くの工数・負荷をかけているという相関関係が明らかとなりました。決算処理スピードの速い企業は、それに必要な要員数も最適化されている、ということがベンチマークデータから得られる示唆です。

なお、ここで冒頭の「日本における決算早期化がもたらす経済効果」に話を戻すと、「2600億円」の経済効果は、この指標に基づき算出しています。全体平均と 上位25%とのギャップは「7.4」人となりますが、日本企業が全体平均レベルだとして、このギャップを埋めることによるコスト削減規模を試算したものとなります。*3

*3 ギャップ7.4人✕平均給与600万円✕5870(上場企業の売上高587兆円÷1000億円)

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スピードとコストを両立させ、新しいことをやろう

グラフ4は、会計・経理業務を大きく「戦略的業務」と「トランザクション業務」に分解したときの工数配分を示しています。前述の決算業務は「トランザクション業務」に含まれ、それ以外に、債権・債務管理や資金管理なども含まれます。「戦略的業務」には、会計・財務戦略、コンプライアンス・リスク管理、予算管理と業績予測、分析・レポーティングなどが含まれます。多くの日本企業において、「トランザクション業務」から脱し、より付加価値の高い業務へシフトすることは、ERP導入プロジェクトなど業務プロセスを見直す機会にはよく目標として掲げられてきたことだと思います。読者のみなさまの会社では、うまく戦略的業務へのシフトを行えているでしょうか。まだまだ改善の余地があると感じたり、近年のテクノロジーの進化により、さらなる業務の改善や高度化が可能かもしれない、と考える読者の方も多いのではないかと思います。

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SAPの経験則から見た日本企業の傾向として、より少ない要員数で頑張っている会計・経理部門が多いことを認識しています。その場合、決算処理の日数に関しては、前述の「決算処理日数と要員数の相関関係」からの文脈とは「相反して」長くなる傾向も認識しています。一方で、いくつかの企業においては、ベンチマークデータと照らし合わせると、「過剰な」要員配置をしているケースも見られます。

これまで見てきたベンチマークデータが示唆するのは、スピードとコストの2つをうまくバランスさせた上で、より付加価値の高い業務へシフトすることが可能、ということです。それが実現できれば、日本企業がどんどん「新しいこと」に取り組む機会も増えていくことでしょう。

SAPベンチマーキングプログラム

SAPが提供するベンチマーキングプログラムは、2004年からコンテンツおよびサービスの開発を行い、2014年時点では国内外を問わず5000社以上の企業からの参画をいただいています。本連載では、そのベンチマークから得られる洞察を、企業経営に関わるより多くの方に知っていただくともに、日本企業にとって次のアクションにつながるなにかしらの示唆を提供できればと考えています。ご興味をお持ちの方は、SAPジャパンにお問い合わせをいただければ幸いです。

第1回では、SAPソリューションの導入においては典型的となっている「会計・経理」業務に焦点をあてて、ベンチマークデータからの示唆を追求してきました。次回は、他の業務領域についても取り上げていきます。

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