Industrie 4.0におけるSAPの貢献


273539_l_srgb_s_glドイツが産官学一体となって取り組んでいる「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」。昨年あたりから、日本のメディアでも取り上げられることが多くなりました。読者の皆様もIndustrie 4.0というキーワードに触れる機会が多くなってきているのではないでしょうか。ドイツに本社を構えるSAPもIndustrie 4.0をリードする企業として、さまざまな取り組みを行っています。そのため、最近は日本でも産官学のあらゆる企業や研究機関の方からさまざまなお問い合わせをいただくようになりました。

そこでこの記事では、今まさにSAPを取り巻くIndustrie 4.0について整理するとともに、SAPがどのように貢献しているかご紹介したいと思います。

Industrie 4.0とその背景

生産活動を図る指標として、労働生産性(投入した労働量に対して、どれだけの生産量が算出されるかを表す指標)というものがあります。ドイツの製造業は1990年後半まで世界でトップの労働生産性を誇っていました。しかしそれ以降、米国の労働生産性が非常に伸びたため、経済産業省の通商白書2013によると、現時点では米国を100とするとドイツは77.9程度であると見られています。また、日本はというと69.9という状況です。労働生産性という観点で米国をベンチマークすると、ドイツ、日本ともまだまだ改善の余地があるといえます。

一方で、ドイツが一貫して取り組んできたのが技術革新です。ドイツには中規模企業が多く、それらの企業が高付加価値な製品・サービスを生み出し続けてきた歴史があります。産官学一体となってIndustrie 4.0に取り組むことで労働生産性を向上し、さらなる高付加価値製品・サービスを生み出し、グローバルで優位に立つ、これこそが今まさにドイツがIndustrie 4.0に取り組もうとしている背景です。

ドイツの新ハイテク戦略とIndustrie 4.0

ドイツの技術革新を支えてきた大きな動きが、2006年にドイツが策定したハイテク戦略です。策定当時は珍しかった省庁横断型の取り組みで、2014年にはその最新版、「Die neue Hightech-Strategie Innovationen für Deutschland (新ハイテク戦略 ドイツのイノベーション)」として改定されています。

ドイツは、この新ハイテク戦略を「グローバルなイノベーションリーダーへの道を進めるドイツの目標」と定めており、それはつまり「技術革新と斬新なアイデアは付加価値の高い製品やサービスを生み出し、それが人々の生活の質を向上させ繁栄をもたらす。そして、それがドイツの地位を強化させる」としています。

ドイツの新ハイテク戦略は、その技術革新を以下の5つの主要要素でまとめています。

  1. 将来の価値創造と生活の質を向上する6つの最優先タスク
  2. 産官学のネットワーキング
  3. 経済におけるイノベーションのダイナミクスを推進
  4. イノベーションを起こすための刺激的な環境
  5. 取り組みの透明性と市民の参画

Industrie 4.0は、1の「6つの最優先タスク」のうちの一つ「デジタル経済と社会」の中の一項目として、スマートデータ、クラウドコンピューティングなどと並んで位置づけられています。

また、新ハイテク戦略を実行していく上での下記4つのアプローチのうち、最初の「10の未来プロジェクト」の一つとしてもIndustrie 4.0は位置づけられています。

  1. 10の未来プロジェクト
  2. 連邦、州、ヨーロッパでの連携
  3. 効果分析をすることによる投資の国民への説明
  4. 中央諮問機関の設置

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新ハイテク戦略におけるIndustrie 4.0の記述を下記に抜粋しますが、新ハイテク戦略策定の背景となるこれからの主要外部環境には、顧客の多種多様な仕様/リードタイム/コスト削減などの要求の増加、少子化による労働力の減少、テクノロジーの進化、エネルギー/環境問題の深刻化などがあげられます。これらについては「6つの最優先タスク」「10の未来プロジェクト」で他のタスク、プロジェクトとして解決すべきこととしても取り上げられており、Industrie 4.0はこれらの外部環境への対応にも深く関連しています。

現在、我々は第4の産業革命のステージにさしかかっている。第1は水と蒸気による機械的な生産、第2は電気を使った大量生産、第3はITで電気を使った自動生産、そして第4がサイバーフィジカルシステムをベースとした生産である

第4の産業革命におけるこれからの工業生産の特徴は、製品のカスタマイズを高度に柔軟に行うこと、顧客やビジネスパートナーと早期に関与すること、生産と質の高いサービスの連携がもとめられることである。

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Industrie 4.0のカバーする範囲

では、Industrie 4.0はどこまでの範囲を対象とするのでしょうか?第4次産業革命と聞くと、真っ先に生産工場をイメージされるかもしれません。実際、日本企業の方々から「うちの工場ではすでにできていることも多い」といった話をお聞きすることがあります。生産工場のスマート化はIndustrie 4.0の主要テーマの一つではありますが、Industrie 4.0の範囲をビジネスプロセスで見ると、生産だけにとどまりません。開発、調達、物流、サービスまでをカバーし、さらには顧客、サプライヤー、ビジネスパートナーといった産業のエコシステムすべてを含む革新的な取り組みであると考える必要があります。

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Industrie 4.0の産官学の連携とSAPの貢献

最後に、このIndustrie 4.0におけるSAPの貢献についてご紹介します。ドイツには、BITKOM、VDMA、ZVEIといった産業団体が事務局として運営する「Industrie 4.0 Platform」という活動があります。ここには15の企業がエグゼクティブサークルメンバーとして参画しており、SAPもその中のメンバー企業の一つとして参画しています。これらのメンバーで戦略とフレームワーク、参照アーキテクチャ/基準や規範、研究とイノベーション、ネットワークシステムのセキュリティといったそれぞれのワーキンググループをつくり活動しています。

Industrie 4.0へのアドバイス、サポートをする研究機関として主要な役割を果たすのが、将来の課題に対して技術的観点から提言を行うドイツ技術科学アカデミー(acatech)です。このドイツ技術科学アカデミーの会長は、SAPの元会長兼CEOであるヘニング・カガーマンです。ヘニング・カガーマンは、上記のIndustrie 4.0 Platformにも参画しており、2013年には「戦略的イニシアチブIndustrie 4.0実装に向けた提言(Recommendations for implementing the strategic initiative INDUSTRIE 4.0)」を筆頭著者として発表しています。この提言には、SAP SEのプロダクトイノベーションを統括するステファン・フィッシャー、SAPアジアパシフィックジャパンのインダストリーバリューエンジニアリングを統括するカースティン・ガイガー、SAP SEのディスクリートインダストリーを担当するぺトラ・コファー・ベンケなどが、ワーキンググループのスポークスパーソン、共同執筆者として参画しています。

また、SAPは政府との取り組みにも深く貢献しています。2014年の国家ITサミットでは、「ドイツのデジタル経済」検討グループにSAP SEのボードメンバーであるグローバルCOOルカ・ムシッチ、「国家のITオファリング」検討グループにSAP Germanyの営業統括責任者であるハルトムト・トムセンなどが主要メンバーとしてグループをリードしています。

特に、国家ITサミットのワーキンググループの一つでもあり、Industrie 4.0を実現するために重要となる研究と教育において、SAP SEのCTOであるバーンド・ロイケを主要メンバーとしてIndustrie4.0とSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)にフォーカスした教育とジョブマッチングを統合したプラットフォームを提供するNPO法人、The Academy Cubeを強力に支援しています。

SAP SEのSenior Vice Presidentで、IoTの共同責任者でもあるニルス・ハーズバーグは「SAP本社の従業員はすべて何らかの形でIndustri4.0に関わっていると言ってもいい」と言います。上述したIndustrie 4.0の範囲は、まさしくSAPがこれまで統合的にカバーしてきた企業のビジネスプロセスそのものであり、SAPの製品、サービスのすべてがIndustries 4.0を支えるソリューションとなり得ます。また、SAPは昨年からIndustrie 4.0に大きく影響を与えるIoTの専任組織を500名規模で立ち上げています。

このように、SAPはIndustrie 4.0を実現する技術、体制、知見を持ち、皆様をサポートしたいと考えています。ぜひ、我々とともに日本におけるIndustrie 4.0の意義を議論し、日本での活動の第一歩を踏み出しましょう。日本のさまざまな企業、政府、大学で、Industrie 4.0に関する研究や日本での取り組みについての議論はもう始まっています。ご興味をお持ちの方は、SAPジャパンにお問い合わせをいただければ幸いです。

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