自動車部品サプライヤーに求められる新たな成長戦略――第3回:海外自動車メーカーの作法に素早く対応


Car salesman sitting at desk, using telephone while making calculationSAPジャパンの山﨑です。本連載も今回でいよいよ最終回となります。ここまでは自動車業界が置かれている現状、特に部品サプライヤーにとって必須となる監査対応についてお話をさせていただきました。なかなか大変な状況なのですが、欧州の部品サプライヤーの事例でご紹介させていただいたように、早々に監査対応に向けた環境整備を行った企業は、品質不良の低減、生産性の向上、コスト削減といった明確なメリットを享受していることも事実です。

このことは監査対応が決してネガティブな課題ではなく、新たな成長をもたらす基礎体力の向上につながっていることを示しています。つまり、グローバル化する自動車業界で生き残るための必須条件と言っても過言ではないでしょう。

そこで、最終回では、部品サプライヤーのさらなる成長を後押しするうえで鍵となる、海外自動車メーカーの作法に素早く対応する方法について、事例を交えながらお話していきたいと思います。

海外自動車メーカーとの新たな取引に対応する

部品サプライヤーの中長期的な事業の成長を考える上で真っ先に挙がる経営戦略が、新規の自動車メーカーとの取引です。新たな地域・市場への進出や新車の開発に際して、多くの自動車メーカーは新たな部品サプライヤーとの取引を検討します。しかし、自動車メーカーといっても、皆が同じ作法でビジネスを行っているわけではありません。特に、これまで海外の自動車メーカーとの取引がなかった日本の部品サプライヤーにとって、ここには言葉以外のさまざまなハードルがあります。

自動車メーカーと取引を行う場合、同期納入・同期生産(受注~出荷の自動化)への対応が重要となります。その核となるのが、JIT(Just In Time)、JIS(Just In Sequence)とも呼ばれる、自動車メーカーごとに異なる内示・確定・納入指示、親品番仕様・子品番仕様、設計変更タイミング、納入ラベルなどへの対応です。以下で、JIT/JISを満たすための主なIT要件についてまとめてみます。

  • 自動車メーカーごとの内示、確定、納入指示におけるEDIメッセージへの対応
  • 自動車メーカーごとに異なる品番指定方式(親品番指定、モジュール品番指定)への対応
  • 自動車メーカーごとに異なる非平準化・平準化済の需要に対して、山崩し(生産能力に合わせた生産計画の作成)、安全在庫の考慮、原材料の先行手配、スケジューリング、かんばん生産などへの対応
  • 車種ごとのロット生産対応やオーダーごとの仕様(コンフィグレーション)向けの個別受注生産対応
  • 自動車メーカーごとに異なる納入ラベル
  • 時間指定納入(JIT)や時間指定かつ順序指定納入(JIS)への対応

新規メーカーとの取引に際しては、そのメーカーの流儀への対応が必須となります。これに関して、SAPは自動車部品サプライヤー向けアドオンであるSAP ACS(Automotive Consulting Solutions)を有しております。SAP ACSを活用することにより、JIT、JISなどメーカー別の個別要件に迅速かつ有効に対応することが可能となります。具体的な内容については、こちら(英語)からもご覧いただけます。

7カ月という短期間でシステムを構築したシートメーカーの挑戦

国内のある自動車部品サプライヤーは、従来の主たる取引メーカー以外との取引を増やし、海外での生産比率を高めることで、2020年の売上を1.6倍(2011年比)にするという経営目標を掲げています。この目標に向けて、欧州の自動車メーカーから新規受注を獲得して、欧州で新規に工場を建設するとともに、受注から生産、出荷までの自動化システムをSAP ACSを用いて構築しました。

この部品サプライヤーにとって、これまでの取引との大きな違いとなったのは、品番体系と部品数量の内示の精度にありました。従来は構成部品単位で品番設定を行っていたのですが、欧州メーカーはモジュール単位の品番に枝番をつけて細かく品番設定をしているので、その対応が必要でした。また、従来の取引における部品数量の内示は限りなく確定値に近いものでしたが、欧州では最終据付の直前までこの数字が変動します。しかも、内示段階では枝番のないモジュール品番しか指定されないので、納入すべきものが最後まで確定できず、在庫管理や変更管理にも新たな対応が必要になりました。

こうした状況の中、SAP ACSを活用することにより、予定通り7カ月という短期間で新たな取引に対応したシステムを稼働させることができました。その後は系列以外の自動車メーカー向けグローバルテンプレートを構築して、順調に事業を拡大させているということです。システムを短期間で確実に立ち上げられる点は、世界の自動車メーカーとの取引で蓄積されたSAPの知見が凝縮されたSAP ACSの最大のメリットといえます。なおSAP ACSに関しては、先ほどご紹介したJIT、JIS以外にもこちらのサイト(英語)から、各国ごとの自動車業界の要件(例 VDA)や自動車メーカーごとに異なる要件に対応したモジュールをご覧いただけます。

国内部品サプライヤーのグローバルビジネスを最大限に支援

これまで3回にわたって、部品サプライヤーにとってのグローバル市場での成長戦略についてお話してきました。増加する不具合やリコール対策のためにも、製造工程のトレーサビリティや品質情報の統合管理は不可欠であり、そして監査対応は単純な守りのためのものだけでなく、グローバル市場で生き残るための攻めの戦略につながることもご理解いただけたかと思います。

変革の過渡期にある自動車業界において、海外の新規取引先が求めるJIT、JISへの迅速な対応を可能にするSAP ACSは、部品サプライヤーの皆様にこれまでにない価値を提供できるはずです。またSAPジャパンにおいては、今年からドイツ本国の自動車業界のエキスパートを招聘することで、日本の部品サプライヤーの皆様の支援体制を強化する計画となっています。このブログにおいても今後、引き続き価値ある情報発信に努めてまいりますので、ぜひとも引き続きよろしくお願いいたします。

【参考リンク】

グローバルテンプレートを活用して、欧州の自動車市場における競争力を高めるトヨタ紡織のイノベーション

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