産業界で起きているビジネスモデル変革のうねり――第2回:成功事例に学ぶレベニューイノベーション


276185_l_srgb_s_glこんにちは、SAPジャパンの柳浦です。産業界で起きているビジネスモデル変革を整理し、レベニューイノベーション(売上構造変革)に迫る本連載。第2回では、レベニューイノベーションの成功事例を取り上げながら、この潮流について考えてみたいと思います。

MPS市場でリーダーのポジションを獲得したLEXMARK

ケンタッキー州に本社を置くLEXMARK(レックスマーク)は、売上高37億ドル、従業員約1万2,000人のプリンターベンダーです。1991年にIBMのプリンター部門からスピンアウトする形で誕生した同社ですが、設立当初はプリンターのハードウェア販売、ソフトウェアなどのオプション製品の販売、その他プリンターインクや用紙などの消耗品販売、アフターメンテナンスといった、一般的なプリンターベンダーのビジネスモデルを踏襲していました。ところが、2007年あたりから現状のビジネスモデルに危機感をいだき、従量課金型ビジネスへの変革に取り組み、さらには印刷に関するあらゆるニーズに包括的に応えるマネージドプリンティングサービス(MPS)を提供するなど、ビジネスの軸足をサービスへと移しました。

ビジネスモデルの変革に合わせて現状のビジネスを精査した同社は、2007年にそれまで行ってきたコンシューマー向けのインクジェットプリンター事業を売却、さらに2012年8月には法人向けのインクジェットプリンター事業からも撤退し、日本の船井電機に関連する技術と多くの資産を売却するなど、ビジネスの選択と集中にも積極的に取り組みました。現在では、従来型のプリンタービジネスを手がけながら、従量課金ビジネスやMPSビジネスを拡大しています。

MPSビジネスは、プリンター機器やソフトウェア、サービスを組み合わせて顧客の全社的な印刷効率を最適化し、コスト削減を促すことを目的としたコンサルティングサービスです。たとえば、オフィスのフロアで何人の従業員が働き、何台のプリンターがどのように設置され、どのプリンターの稼動率が高いかといったデータ分析を通じて、フロアに設置するプリンターの台数や設置場所の最適化を顧客にアドバイスしています。また、印刷に関するワークフロー全体を見直し、どのようにデジタル化すれば印刷コストの削減につながるか、オフィスの外部から印刷するニーズが寄せられた際にはどのようなアプリケーションを用いて、どのような認証プロセスを踏めば安全に印刷できるかなど、ドキュメント印刷に関わるすべてをコンサルティングしながら、顧客のコスト削減や業務効率向上に貢献してきました。それが結果的に顧客満足度向上につながり、包括契約による顧客と深い関係性構築を実現することでLEXMARKに長期の安定収入がもたらされることになるわけです。

売上高37億ドルという業界では決して大きくはないLEXMARKが、ゼロックス、HP、キヤノンなど巨大なプリンターベンダーを抑えて、MPSの市場でリーダーのポジショニングを獲得した理由は、「いち早く」ビジネスモデルの変革を進めたこと、そして「ビジネスの選択と集中」によるサービスレベルの最大化を実現したことにある、といえるでしょう。

 ビジネス変革を支えるSAPのソフトウェア

LEXMARKのようなビジネス変革を実現するうえで、デジタルトランスフォーメーションも欠かすことができません。つまり、機器やソフトウェア、サービスをITでつなぎ、一気に移行スピードを速めたわけです。印刷した枚数を正確にカウントし、それに応じて課金して請求書を発行するといった一連のプロセスでは、バックグランドのITが重要な役割を担っています。従来はこれらを実現するシステムをすべて手組みで開発するしかありませんでしたが、SAPでは課金型ビジネスに合わせて、統合課金、請求、債権回収のコンポーネントで構成されたSAP Billing and Revenue Innovation Management(SAP BRIM)と呼ぶソリューションを用意しています。SAP BRIMは、通信業界で電話料金の徴収用などに採用されてきた実績のあるソリューションで、高度なエンジンを活用して効率的に課金計算し、請求処理まで一連の流れを実行します。LEXMARKは、従量課金ビジネスへとシフトチェンジするにあたり、SAP BRIMをコーディングすることなくそのまま導入することでクイックにスタートを切ることに成功しました。

サービスビジネスを支えるSAPのソフトウェアについては、以下を参照ください。

  • 製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。サービス事業の強化の流れ:その⑤ SAP機能(課金/組み立て/社内ソーシャル
    https://www.sapjp.com/blog/archives/8032
  • 製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。サービス事業の強化の流れ:その⑥ SAP機能(顧客管理/調達/利益分析)
    https://www.sapjp.com/blog/archives/8464

IoTInternet of Thingsにより加速するレベニューイノベーション

従量課金ビジネスを中心としたレベニューイノベーションは、製造業やIT業界などあらゆる産業で始まっています。ここでは、LEXMARK以外でもビジネスモデルを変革して成功を収めている企業を簡単に紹介しておきましょう。

ドイツに本社を置くコンプレッサー専業メーカーのケーザー・コンプレッサーでは、生産設備で活用される圧縮空気を作り出すコンプレッサーを製造事業者などの顧客に販売し、その運用、保守、アフターサービスを提供するモデルでビジネスを展開してきました。しかし同社は大手企業ひしめく市場で優位に立つため、コンプレッサーを売るのではなく、圧縮された空気そのものを顧客に提供し、使った分だけ料金を払うモデルにビジネスを変革させ、シェアを伸ばしています。詳細は以下の記事で紹介しています。

参考記事 : “空気を使った分だけ払う” サービスへビジネスモデルを変革させたケーザー・コンプレッサー

その他にも、航空機エンジンをはじめとして幅広い分野でビジネスを行っている大手メーカーのGEでは、エンジンそのものを売るのではなく、飛行機が飛んだ時間(パフォーマンス)に合わせて課金するサービスを新たなビジネスモデルを採用しています。IT業界においても、クラウドビジネスにおいて初期費用をおさえて低価格で提供し、利用したリソースの分だけ料金を支払う従量課金体系が浸透しつつあり、2015年はさらに多くの業界で同様の動きが出てくることが見込まれます。

執筆中にも続々と新たなサービスモデルに関連する記事が報道されてます。

こうした流れが加速する背景には、IT技術の進化が隠れていることも見逃せません。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)と呼ばれるように、従来のパソコンやモバイルデバイスだけでなく、身の回りの機器などに埋め込まれたセンサーがインターネットにつながる技術が急速に普及しています。その結果、プリンター、コンプレッサー、航空機のエンジンなど、ありとあらゆるデバイスの稼動状況を把握して、新たな付加価値を顧客に提供することが可能になりました。このようにIT技術の進化は、それまで初期コストの高さがネックで市場への浸透が難しかった機器や製品にパラダイムシフトをもたらしました。そして今まさにレベニューイノベーションの時代が到来したといえます。

次回の最終回では、IoTやテクノロジーの進化が製造業のビジネスをどう変えていくのか。その未来を予測してみようと思います。

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