IoTを牽引するイスラエル発スタートアップ企業――第2回:飲料の正確な注入と販売促進の最適化を図るWeissBeerger


前回に引き続き、「イスラエル発」のスタートアップ企業をご紹介していきたいと思います。今回ご紹介するスタートアップ企業は、ビアパブなどにある樽とタップ(注ぎ口)の間にあるチューブに流量計を接続し、取得したデータをクラウドで処理してさまざまなサービスを展開するWeissBeerger(ヴァイスビアガー)です。同社が提供するサービスBeverage Analytics(旧Alcohol Analytics)でどのようなビジネス上のベネフィットが生まれるかを解説し、このサービスが生まれたきっかけ、SAPとの出会い、今後の展開予定などについてもご紹介したいと思います。

IoTでビールの注ぎ過ぎの無駄を11%削減したBeverage Analyticsとは

Beverage Analyticsは、ドリンクサーバー(ビールであれば樽)などからチューブを経由して注がれる飲料であれば適用可能なサービスです。ここではビールがタップから注がれる場合を解説していきます。

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ビアパブを想像してみてください。ビール会社は卸会社を経由して樽をビアパブに納入します。毎月どれだけの数の樽が納入されたかは把握できていますが、どれだけの量がどの時間帯に消費されたかの詳細データ(店頭における消化データ)を取るのは容易ではありません。一方、ビアパブ店主はビールの提供価格だけでなくハッピーアワー(お得な価格で提供する時間帯)をどう設定するかなど、販売促進についても考える必要があります。あわせてバーテンダーが適正な量を超えて提供していないかも気になります。

このサービスを利用するための準備は簡単です。タップと樽の間にあるチューブの途中に流量計(写真)を据え付けておき、流量計からデータを転送するようにネットに接続するだけです。流量計の設定(計測対象のビールブランド、ビアパブの住所)と共に「何時に、どれだけの量」がチューブを通って消費されたかが記録されクラウド上でデータ処理されます。(出典1)

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ビアパブ店主向けには、Bar & Restaurant Dashboardというアプリケーションが提供されます。最適なハッピーアワーはいつなのか、古くなった樽を確実に交換するための在庫管理、適切な注入量をバーテンダーへ促すための機能を内包しています。Beverage Analyticsを導入した結果、あるBar & Restaurantでは注ぎ過ぎの無駄を11%も削減できたという実績があります。中には、ハッピーアワーの最適化により32%売上を向上させた実績もあります。(出典2)

注目される3つの機能

ビール会社向けに提供される機能の1つ目は、消費者の行動を捉える高度な分析機能です。従来は樽の出荷データを月間で把握するレベルであったところが、リアルタイムで場所・時間・量(たとえばパイントやジョッキサイズ)を把握できるようになります。そして2つ目の機能がプロモーションマネージャです。従来はビアパブ店主との事前の取り決めにもとづいた販売促進施策でしたが、店頭消化状況が分かることでリアルタイムにビアパブ店主と最適な施策をオンデマンドで模索することができるようになりました。たとえばディスカウントクーポン、インセンティブ、サンプルキャンペーンといった施策です。3つ目の機能はサプライチェーンの最適化です。樽の鮮度は4日程度なので流通を円滑にすることでメーカーが期待する品質を維持することは重要です。(出典3)

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Beverage Analytics 誕生にいたるまで

 イスラエルには兵役の義務があります。多くの若者が兵役を終えた後ビジネスの世界に入ってくるわけですが、新規事業を立ち上げるにあたり、軍隊で最新の科学技術に触れた経験を活かすケースが多いというのが通説です。創業メンバーのOmer Agiv(現CEO、写真右)とOri Fingerer(現Business Development Vice President、写真左)も兵役の頃からの間柄です。Omer Agiv は大学卒業後にITベンチャー企業を興したあと、当時弁護士であったOri Fingererと共に2009年WeissBeergerを創業しました。(出典4)

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最初の商品はWeissTapと呼ばれるものです。顧客がバーテンダーから都度注いでもらうのではなく、ある一定量のビールを買えば樽とタップがセットになったバーの一画に陣取って、顧客自らバーテンダー気分でタップから注げるというものでした。日本の居酒屋であるようなジョッキで提供されるよりも雰囲気が出て、エンターテイメント性もあり人気が出そうです。店主からすると人手が少なくすむのもメリットの一つと言えそうです。(出典5)

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次に登場したのはWeissPourです。アルコール度数が高いリキュールやテキーラなどを注ぐときに指定した量だけ正確に注げるように工夫したものです。単位量当たりの原価が高い飲料において過剰に注いでしまう事象が積み重なると収益を圧迫する要因になります。(出典6)

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流量を正確に把握しコントロールする技術を応用し、データ可視化や販売促進最適化のクラウド型サービスに展開したのがBeverage Analyticsと言えます。

SAPとの関わり、今後の展開

2013年、SAP最大の年次イベントであるSAPPHIRE NOWの基調講演において、SAP CEOのBill McDermottは、WeissBeergerのBeverage Analyticsをイノベーターとの協業事例の一つとして言及しました。2012年イスラエルCo-Innovation Labs (共同開発の研究施設)の開設と共に、起業して間もないWeissBeergerがSAPスタートアップ・フォーカス・プログラムの対象になり、インメモリープラットフォームSAP HANAの適用が進みつつあったことに加えて、SAPが間を取り持って大手ビール会社との連携強化を後押ししたという背景があります。(出典7)

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WeissBeergerは現在、Beverage Analyticsというブランドの元、利用ユーザーや対象タップ数を広げています。この先3年かけて10のビール会社と共に1万個のビールタップに適用する予定です。1万個のタップから生成されるデータは1カ月あたり3テラバイト(TB)になると言われています。WeissBeergerは成長に必要な3段階のステップ(Big Data Insights、Alerts、Predictive Analysis)を上げています。第1ステップのBig Data Insight の例ですが、「某ビールブランドは欧州の都心部において夜8時から10時のわずか2時間の間で70%消費される一方、郊外においては同時間帯では40%しか消費されていない」と報告されています。業界関係者ならば経験で推測できたとしても、根拠に基づくデータで立証されることは重要なことです。データでモニターできるということは、すなわち消費行動のわずかな変化点を捉えることにも繋がります。販売促進の施策の手応えを確実につかむことにも繋がります。(出典8)

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WeissBeergerは、2014年11月に顧客であるコカ・コーラからIlan SobelをCOOとして経営メンバーに招聘しました。Ilan Sobelはコカ・コーラでマーケティングの重責を担ってきた人間で、顧客であるコカ・コーラにとって有益となる販売促進プログラムをWeissBeergerが開発する上で最適な人材でした。顧客側の飲料メーカー・ビール会社が求めるものとそれを実現するスタートアップ企業の関係が非常に近くなってきていることが読み取れます。(出典9)

今回ビアパブを舞台にしたスタートアップ企業の話をしてきました。流量計がインターネットと繋がり分析・予測サービスの提供や販売促進を支援するという典型的なIoTシナリオと言えます。文中取り上げさせていただいたSAPの年次イベントのSAPPHIRE NOWですが、2015年は5月5日から7日まで米国オーランドにて開催予定です。興味を持っていただいた方々、お問い合わせ先まで連絡をいただければと思います。

 SAPPHIRE NOW Orlando: May 5-7, 2015

http://events.sap.com/jp/2015-sapphire-now-orlando/ja/home

次回はスポーツ領域、とりわけテニス競技におけるスタートアップ企業を紹介したいと考えています。まさにマイアミオープンが終わった直後でもあり、その熱冷めやらぬうちにお届けしたいと思います。

 (出典1) SAPユーザー事例紹介Customer Journey:WeissBeerger
http://www.sap.com/customer-testimonials/wholesale-distribution/weissbeerger.html#1074474042

(出典2) Alcohol Analytics For Bars
https://www.youtube.com/watch?v=Bt1JVMgMqEs

(出典3) Beverage Analytics – the revolutionary solution by WeissBeerger (日本語字幕)
https://www.youtube.com/watch?v=iT8p86BaZ-E

WeissBeerger 社の提供サービス
http://weissbeerger.com/services/

(出典4) Israel21c : Meet the ‘Google Analytics of beer’ (September 12, 2013)
http://www.israel21c.org/technology/meet-the-google-analytics-of-beer/

(出典5) WeissBeerger 社のWeissTap
http://weissbeerger.wordpress.pnc.co.il/?page_id=1282

(出典6) WeissBeerger 社のWeissPour
http://weissbeerger.wordpress.pnc.co.il/?page_id=2000

(出典7) WeissBeerger featured at SAPPHIRE
https://www.youtube.com/watch?v=QKvjOnt3AQA

(出典8) CEO Omer AgivによるPreziプレゼンテーション
https://prezi.com/8eptinpmuthd/sap-weissbeerger/

Alcohol Analytics Voice-Over
https://www.youtube.com/watch?v=HNumY64O5zw

SAP Startup Focus Series – Part 1:Beyond The Hype
http://thedemoblog.com/2013/08/sap-startup-focus-series-part-1beyond-the-hype/

(出典9)
Canadean International Beer Strategies Conference
(11th-13th May 2015 Amsterdam)
http://www.arena-international.com/beer/speakers?cmd=PageSize&val=50

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