Industrie 4.0で働く人はもっとハッピーになれる


IoT(Internet of Things)により物理的な世界がバーチャルな世界に再現され、その結果、産業全体のバリューチェーンがデータでつながるIndustrie 4.0。「多種多様な仕様・リードタイム・コスト削減」などの要求の増加や、エネルギー・環境問題、テクノロジーの進化、そして少子化による労働力の減少など、ドイツを取り巻く社会背景のもと、産官学が連携して取り組んでいます。

ではIndustrie 4.0によって、働く人はどのように変わるのでしょうか。私は、下記にあげる3つの変化が起こる可能性があると考えます。

  1. 仕事の領域が広がり、より専門性/付加価値の高い仕事に従事できる
  2. 指示によるものづくりから、ものづくりの現場からイノベーションが起こる
  3. 日々の仕事の中でさまざまな分野の知識、スキルを習得できる

これらの変化が、働く人に仕事の意義をより強く感じさせ、それが働くモチベーションの向上につながっていくのではないかと思います。

1. 仕事の領域が広がり、より専門性/付加価値の高い仕事に従事できる

以下の写真は、SAPのドイツ本社に展示してある、Festo社と取り組んだIndustrie 4.0に関連する製造ラインのデモ機です。この製造ラインでは、5つの行程を経て基盤に部品を組み付けていくのですが、毎回違う仕様の製品をSAPのERPからくる「組み立て製造指示」によって処理することができます。

Internet of Things for Manufacturing (Industry 4.0) enables a Networked Economy (英語、2分15秒)
https://www.youtube.com/watch?v=t8Svhxm2P34

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 この製造ラインでは複数の部品の組み立て製造指示から実際の組み立て、その実績収集までを自動化できているため、「マス・カスタマイゼーション(一品大量生産)」に効率的に対応することができます。

この製造ラインを担当する人は、部品不足や製造装置の不具合などでアラートが出た場合の解決、この製造ライン内で自動で振り分けられる不良製品の分析と対応が主な仕事になります。ただ、そういった 例外措置にこの担当者が四六時中関わる必要がなくなるため、この担当者は他の付加価値の高い仕事にも従事できるようになります。

限られた範囲の定型的な仕事を行うより、より広く戦略的・専門的な業務を行う機会が増えることは、働く人のモチベーションに良い影響を与えることになります。

2. 指示によるものづくりから、ものづくりの現場からイノベーションが起こる

Industrie 4.0が実現されていくと、製造プロセスにおいて出荷指示、製造指示、発注指示とそれに対する実績がバーチャル空間でつながり、どの部門で働く人からもそのデータにアクセスできるようになります。これは、トップダウンの指示によるものづくりから、現場の意見を反映させた相互コミュニケーションへと発展させやすくなり、イノベーションを起こしやすい環境になっていきます。

ものづくりの進化、Industrie 4.0で起こせるイノベーションには、以下の3つが考えられます。

  1. プロダクトイノベーション
  2. プロセスイノベーション
  3. ビジネスモデルイノベーション

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これらのイノベーションがさまざまな部門から起こっていくことを考えると、経営者だけでなく、働く人もわくわくしてくるのではないでしょうか? 働く人は自身の仕事を会社全体・顧客・社会への貢献として捉えやすくなるため、仕事の意義をより強く感じ、モチベーションの向上につなげやすくなります。

3. 日々の仕事の中でさまざまな分野の知識、スキルを習得できる

第一次、第二次、第三次産業革命と、製造業で働く人の働き方は大きく変わってきました。手と工具による熟練技術でものづくりをしてきた人たちは、大量の製品や製品の一部を製造する機械の段取りをし、その操作をするようになりました。働く人に求められるものは、卓越したものづくりの熟練技術ではなく、機械を効率的に動かすための段取り・指示・監督・正確な操作・メンテナンスなどのスキルでした。

Industrie 4.0が実現していけば、産業機械や輸送機械などがネットワークを介してつながり、さまざまなデータをつなげて活用できるようになります。その結果、たとえば、製造プロセスの指示・実行・管理が一元的に可能になり、そのための専門的なエンジニアリングのスキル、データを活用した発注・製造・出荷などの指示管理スキルなどが必要になってきます。

さらにモバイルやPCなど、状況に応じてさまざまなアプリケーションを使うことで、リアルタイムにデータから状況を捉え、関係者と連携して作業を進めるスキル、そのための高度な分析・シミュレーションスキルなども必要になってきます。

経済産業省の2014年ものづくり白書に掲載されている(独)労働政策研究・研修機構の「ものづくり企業の新事業展開と人材育成に関 する調査」(2013 年 11 月実施)をみても、これまでは非常に重要だった基礎的な加工・組立技術、段取り能力といったものの重要度が下がってきています。先に述べた1.と2.の変化を起こしていくにも、この調査で示されているように、ITや最先端の機械・設備、製品開発、バリューチェーンなどに関する知識・能力などが求められてくることになります。逆に言えば、働く人にとって、さまざまな分野の知識、スキルを習得する機会が増えることになります。

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(独)労働政策研究・研修機構の「ものづくり企業の新事業展開と人材育成に関 する調査」(2013 年 11 月実施)、経済産業省

Industrie 4.0の実現によって、仕事の領域を広げ専門性を高めるために、そして、イノベーションをさまざまな部門でリードするために必要となってくる知識やスキルは、個人のキャリアアップや新しいキャリアに対する挑戦もサポートしてくれます。これは働く人個人のモチベーションにもつながるはずです。

SAPが提供するIndustrie 4.0実現に向けた人材育成への支援

SAPはIndustrie 4.0の実現のために、人材育成の観点でも取り組みをしています。一つは大学生向けのプログラム、もう一つは 雇用者・求職者向けの教育とジョブマッチングを統合したプラットフォームの提供です。

①     SAPユニバーシティアライアンスプログラム

SAPはIndustrie 4.0を牽引する若い人材の育成のために、さきほどご説明した製造ラインのデモを共同で開発したFesto GroupのFesto Didactic社とSAP University Alliance Industry 4.0というプログラムをドイツでスタートさせました。SAPはグローバルでさまざまな大学とアライアンスを結んで人材の育成に力を入れていますが、このプログラムはIndustrie 4.0が実現された社会を見据え、それに特化されたプログラムです。製造業におけるビッグデータ活用度やクラウド対応力の分析、Industrie 4.0イベントへの参画、Industrie 4.0に関するクラウドソーシングの取り組みへの参加などが、特徴的なプログラムとして盛り込まれています。今後、ドイツ以外の国への展開も徐々にはじめていく予定です。

【参考記事】
SAPユニバーシティアライアンスプログラムについては、こちらの記事が参考になります。
https://www.sapjp.com/blog/archives/8780

②     The Academy Cube

「Industrie4.0におけるSAPの貢献」として前回もご紹介したThe Academy Cubeは、Industrie 4.0とSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)にフォーカスした教育とジョブマッチングを統合したプラットフォームを提供しています。このプラットフォーム自体がSAPソリューションであることに加えて、ITベースのビジネスプロセスマネジメント、ロジスティクスプロダクトオプティマイゼーション、ビッグデータ分析などのさまざまなトレーニングも提供しています。

詳細はこちら
http://www.academy-cube.com

働く人がハッピーになれるIndustrie 4.0

「来るのが楽しい会社をつくろう」、ザ・ゴールの著者、ゴールドラット博士はそう言っています。Industrie 4.0の実現による上記の3つの変化によって 、働く人がそう思える会社が多くなるかもしれません。そうすれば、働く人のモチベーションやコラボレーションがさらに促進され、それによってより多くの企業がイノベーションを生みだし、社会に貢献していく理想的な社会になっていくでしょう。

ひと昔前には想像もできなかった働き方が、Industrie 4.0によって実現するのも遠い未来ではないと思います。SAPもIndustrie 4.0に貢献できる人材の育成に引き続き力を入れていきます。

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