既存ハードウェア環境への対応を拡大するプラットフォームとしてのSAP HANA
作成者:松舘 学 投稿日:2015年4月17日
SAP HANAのハードウェアは従来、SAP HANAアプライアンスという形で提供されてきました。SAP HANAアプライアンスのメリットは、SAP HANA認定ハードウェアにOS(SUSE もしくはRed Hat Enterprise Linux)やSAP HANAが、あらかじめインストールされた状態で出荷されるため、すぐにご利用いただけるとともに、保守窓口をSAPに一本化できるため、ワンストップでサービスを受けていただくことが可能でした。しかし、既存のハードウェア環境に柔軟に対応してほしいというお客様の要望にお応えし、一部のハードウェア構成要素に対して、SAP HANA認定ハードウェアをご利用いただくことができるようになりました。
そこでSAPは、SAP HANAのハードウェアを構成するストレージ、ネットワークコンポーネント、サーバー、CPU (IBM Powerが対象)という4つの要素について、制限の緩和を進めています。これをテイラードデータセンター統合(以下TDI)と呼んでいます。この記事では、このTDIで制限が緩和されたSAP HANAのハードウェア構成について、SAP HANAを利用するための諸条件を整理していきます。
注意しなければならないのは、これは認定制度ではなく、TDIの要件を満たす範囲内でお客様が自由にハードウェアを選択できる点です。
テイラードデータセンター統合(TDI)
SAP HANAをTDIでご利用いただく場合、ハードウェアの保守、特にOSの調達などもお客様に準備いただく必要があります。また、SAP HANAのインストールもお客様に行っていただく必要があるため、SAP HANAインストール認定資格者に作業を行っていただくことが前提となります。また、本稼働前には、SAP GoingLive Check(スムーズな本稼働の開始、および技術的な安定運用を実現するためのサポート)を通じて、SAP HANAをTDIでご利用いただく際のハードウェア構成で、十分なパフォーマンス基準を満たすかどうか、チェックを受ける必要があります。
利用可能なSAP HANA認定ハードウェア
テーラードデータセンター統合を利用して、サーバーを構成する場合、SAP HANA認定ハードウェアを必ず利用する必要があります。以下の認定ハードウェアディレクトリーを参照し、ハードウェアを選択してください。
Certified and Supported SAP HANA® Hardware
以下で、SAP HANAのハードウェアを構成するストレージ、ネットワークコンポーネント、サーバーについてそれぞれ見ていきましょう。
フェーズ1: ストレージ
TDIを構成するサーバー、ネットワーク、ストレージのうち最初に制限緩和されたのがストレージです。SAP HANAのハードウェア認定を取得したストレージであれば利用することができます。利用するストレージのIO性能がSAP HANAの使用に耐えられるかチェックする必要があり、SAP HANA HW Configuration Check Tool(HWCCT)と呼ばれるツールを使って計測することができます。これにより、SAP HANAと同様のファイルシステムアクセスを行うライブラリや、IOパターンを使用するテストを行うことができます。
また、SAP Landscape Virtualization Management 2.1(以下、SAP LVM)では、SAPの実装プロジェクトではおなじみのシステムコピー作業の簡素化、ランドスケープ全体の集中管理や見える化など、SAPランドスケープの運用管理において、非常に便利な機能が実装されており、LVMを利用するにはLVMに対応したストレージの利用が前提となります。SAP LVMはバージョン 2.1でSAP HANAに対応しました。SAP HANAのハードウェア認定を取得したストレージとLVM対応ストレージ、両者のストレージをご利用いただくことで、システム運用にかかる作業の大幅な効率化とTCO削減が可能になると期待しています。
SAP LVMの参考記事:
クラウドとのハイブリッド環境でも「TCO削減」と「システム運用の効率化」を実現するには
オンプレミスとクラウドの連携――第6回:SAPアプリケーションの仮想化で、システム運用管理の効率アップとコストダウンを実現
フェーズ2: ネットワーク
ネットワークスイッチは、10GB以上のスピードが出る製品であれば、TDIを構成するネットワークコンポーネントとして利用いただけます。認定ハードウェアの基準は特に設けておりません。
フェーズ3: コンピュートサーバー
TDIを構成するコンピュートサーバーは、利用するIntel CPUによって条件が複雑ですので、選択にあたって仔細な注意が必要です。特に本番機では、認定された構成以外は認められていません。以下で詳しくみていきましょう。
本番機におけるIntel Xeonプロセッサー(CPU)の条件
Intel Xeon E7ファミリーを利用する場合、本番機はSAP HANAアプライアンスとして認定されたコンピュートサーバーのみが利用可能です。ハードウェアパーティションも、必ず認定を受けた構成で利用する必要があります。
一方、Intel Xeon E5ファミリーを利用する場合は、認定ハードウェアディレクトリの「Supported Entry Level Systems」の対象となる、Intel Xeon E5 v2/v3/v4 ベース(最低8コア以上)の 2ソケットマシンが対象となります。これを本番機に利用することが可能です。
非本番機(検証機・開発機)の場合
Intel Xeon プロセッサーアーキテクチャの条件は、上記の本番機と同様です。メモリーは128GB以上、利用するサーバーが定める上限までメモリーを搭載可能です。ストレージは、搭載メモリーの2倍以上です。ネットワークコンポーネントは、10GB以上が推奨されます。ベアメタル、仮想環境どちらでも利用が可能です。
フェーズ4: CPU
Intel CPUに加え、IBM PowerのCPUを搭載したサーバーも選択可能です。ハードウェア認定ディレクトリのPOWERシステムを確認してください。
今回ご紹介したように、SAP HANAをTDIでご利用いただくことで、ハードウェアの選択肢が大きく広がります。SAP HANAは、すでに仮想環境でも利用できるほか、SPS9(2014年12月提供開始)では、マルチテナントに対応しています(マルチテナントについては、SPS9のご紹介記事を参照ください)。TDIを構成するこれらの4つ(サーバー、ネットワーク、ストレージ、CPU)の要素を組み合わせることで、既存の環境を最大限に活かした柔軟なランドスケープの構成が可能になります。
以上、繰り返しになりますが、TDIを利用してSAP HANAのハードウェアを利用する場合の条件を以下にまとめます。
- SAP HANA認定ハードウェアを利用する
- SAP HANAインストール認定資格者がインストール作業を行う
- SAP HANA HW Configuration Check Tool(HWCCT)でパフォーマンス測定
- SAP GoingLive Checkを受ける
SAP HANAは今後ますます柔軟なプラットフォームとして開発者・技術者の方にご活用いただけるよう進化していく予定です。
2017年8月16日 更新
SAP HANAの最新情報を把握いただけるよう、2015年5月20日にSAP HANAプラットフォームに特化した国内初となるテクノロジーイベントの開催を予定しています。当日は、SAP HANAプラットフォーム開発者の方向けのセッション「SAP HANA運用管理のカンどころ」にて、SAP HANAの運用管理についてお話をさせていただく予定です。ご興味ありましたらぜひ以下からセッションへの参加をご検討ください。
※本イベントは盛会のうちに終了いたしました 多数のご参加ありがとうございました
SAP Tech JAM
~ 開発先駆者が拓くITの新時代・SAP HANAの祭典 ~≪開催概要≫
【日時】2015年5月20日(水) 10:00~19:00 (受付開始 9:30)
【会場】ベルサール神田
【主催】SAPジャパンジャパン株式会社
【参加費】無料・事前登録制
【定員】300名
【詳細・お申し込み】 http://www.sap.com/japan/techjam/≪プログラム≫
開発者、技術者向けイベントとしてその内容を吟味しており、従来からのSAP技術者のみならず、SAP HANA上でオープンな技術を活用して新たな価値創造を目指す方々にもお応えできるよう、また、SAP S/4HANAの技術情報も盛り込むなど、魅力あるコンテンツ満載となっています。
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