オムニチャネルを実践したコンタクトセンターの姿
作成者:熊谷 安希子 投稿日:2015年4月27日
オムニチャネルへの取り組みがいよいよ本格化する中、店舗やWeb、メール、ソーシャルメディア、TVなどといったチャネルを横断したカスタマージャーニーは複雑化の一途をたどっています。企業競争力の源泉が製品の品質、価格が中心だった時代はすでに過去のものとなり、高度なエンゲージメントに基づく「顧客体験」へと急速にシフトする今、さまざまな業種で展開されるコールセンターも、電話やファックス、メールだけでなく、オンライン上でのチャットなど電話以外のチャネルが増え、顧客とのエンゲージメントを支えるコンタクトセンターとしてのあり方にシフトしてきています。
あるリサーチ会社の調査によると、これからの企業競争力を支えるコンタクトセンターの現状について、以下のような回答が寄せられています。
- マルチチャネルでサービスを提供している企業の88%は、その対話の質に差別化要因があると感じている *1
- 93%の企業が、質の高い顧客体験は戦略上の優先順位が高いと感じている *2
- 42%のサービス担当者が、分断された古いユーザーインターフェース、個別に構築されたアプリケーションが原因で顧客の問題を効率的に解決できないと感じている *3
*1 出典-CUSTOMER MANAGEMENT IQ EXECUTIVE REPORT 2013
*2 出典-Forrester Research社の 調査レポート “The State Of Customer Experience, 2012” (April 24, 2012)
*3 出典-Forrester Research社の調査レポート
http://www.aspect.com/globalassets/aspect-ngcc-forrester-wp.pdf
「個客」体験の提供は経営課題である
状況に応じて快適で使いやすいチャネルを利用する「個客」に、最高の購入体験を提供することは簡単なことではありません。顧客の購買行動、すなわちカスタマージャーニー全体が統合されていないと、いま何が起きているのかをリアルタイムで把握することができず、対応が後手になり、サービスの品質、ひいては顧客満足度の低下をまねきかねません。電話のたらい回しや苦情が発生する前に、顧客のプロファイル/行動/購買履歴を組み合わせた行動分析を行い、適切なタイミングでオファーを提案することによって、顧客体験は飛躍的に向上します。
こうした課題に対応するためには、オムニチャネルでの対応履歴や購買履歴、コールログからソーシャルデータにまでいたるデータを一元管理し、顧客のすべての行動をリアルタイムで把握できるプラットフォームが欠かせません。インメモリー技術による超高速な分析プラットフォームとして、コンタクトセンターにおける顧客対応時間の短縮や応答率の向上を支援するSAP HANAを使えば、オムニチャネルを横断したこれまでにない顧客とのコミュニケーションを実現できるほか、セルフサービスによるサービスチケットやサポート依頼を追跡、ナレッジデータベースでの検索、また顧客の応答に基づく分析やインサイトの抽出、機械学習機能による適切なタイミングでの顧客へのオファーなどが可能になります。
さらに、コンタクトセンターにおけるオペレーターと顧客の通話を音声認識機能でテキスト化し、話し言葉の特性/感情/コール情報を含めた統合分析も可能です。
(注:人の会話をテキストにする音声認識の技術は、パートナー経由で提供)
カスタマージャーニーを統合して、顧客理解を深化
顧客はどのチャネルからアクセスしても、常に一貫した対応が行われることを期待しています。カスタマージャーニー全体をシステムで統合管理することによって、たとえばeコマースサイトで商品を購入した顧客からの問い合わせをコンタクトセンターで受け付ける場合も、その顧客のプロフィールや購入履歴を即座に把握することができ、オペレーターの対応はスムーズになります。新たな商品を勧める際も、チャネルを横断した顧客の行動をもとに、もっとも適切なオファーをシステムが提示します。
機械学習機能を通じた会話のモデル化
また会話による音声情報をリアルタイムで判定し、クレームの兆しを発見、事前に必要な対策を講じることで、対話品質などのサービスレベルを改善できるだけなく、顧客からの信頼向上にもつなげることが可能です。
人が主観的に判断すると、クレームなどを見落としてしまう可能性があるため、会話に含まれるクレームや感謝の兆しなどパターンを見いだすことで、判定ルールを自動的に作ることができる、ということです。
たとえば、「『だから』や『毎回』といった言葉が繰り返し使われると苦情のケースが多い」など、言葉の使われ方、回数、タイミング、発言量、スピードなどの観点で特徴を抽出し、機械学習(100以上の特徴:説明変数を抽出して判定をルール化)させることによって、通話中に早期にアラートを通知し、苦情を検知することができます。
コンタクトセンターの変革に成功したドイツのテレビショッピング企業
オムニチャネルを実践するコンタクトセンターの最新事例として、ヨーロッパ最大級のテレビショッピング放送局であるドイツのHSE24(ホームショッピングヨーロッパ社)の取り組みがあります。同社はSAPのソリューションを活用して、消費者に最高の顧客体験を提供しています。顧客との接点はTV番組やコールセンター、Web、モバイルアプリ、Google TVなどへと徐々に拡大しており、ドイツ、オーストリア、スイス、イタリア、ロシアへと事業展開しています。
HSE24のような企業にとって、顧客の購入パターンや動向をリアルタイムに知り、適切に対応することは非常に重要です。こうした課題を解決するために、同社はSAP hybris Marketing(旧SAP Customer Engagement Intelligence)を導入し、顧客の販売傾向を即座に把握することで、限られた放送時間の中で売上を大きく伸ばすことに成功しました。コンタクトセンターのオペレーターは常に更新される商品の在庫情報を確認しながら、パーソナライズされたオファー(値引きや特典など)を顧客に提案し、購入体験のさらなる向上に取り組んでいます。
顧客のニーズに最適化されたアップセル、クロスセルの促進
このほかにもさまざまな業界において、SAPのソリューションは活用されており、導入企業からは以下のような評価の声が寄せられています。
- 通話を自動でテキスト化することで、応対メモなどの作業が不要になったことで、次のコールにすぐ対応することができ、FAQなどの作業を効率化することができた
- オペレーターの生産性が14%向上した
- 通話の際に適切な情報、提案がリアルタイムでアラートされるため、顧客満足度が大幅に向上した
- サービスレベルアグリーメントの順守率が10%アップした
- リアルタイムな会話分析によって、アップセル、クロスセルの可能性が向上し、顧客のニーズに合った販促とキャンペーンの提案が可能になった
- クレームの初回解決率が10%アップした
注:SAP導入企業のベンチマークに基づく
さまざまなテクノロジー(音声認識や会話のテキスト化、機械学習)やビックデータ(ログや顧客情報)を利用しオムニチャネル化したコンタクトセンターは、質の高い顧客体験を提供し、顧客に合ったアップセル、クロスセルのタイミングを逃しません。SAPとともにオムニチャネル化をいち早く実践し、競争優位性を確立したいとお考えの方は、SAPジャパンまでお問い合わせください。
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本ブログ記事執筆者のプロフィール
■奥寺 まゆみ
SAP入社後、コンサルタントとしてカスタマサービス、フィールドサービスのプロジェクトに参画。現在は、プリセールスとしてCRMなど顧客対応部門をサポートするソリューションを担当。
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