パートナーエコシステムとクラウドで選択の幅がさらに広がるSAP HANA
作成者:斎藤 広一 投稿日:2015年5月1日
誕生当時から長らくアプライアンス、つまり指定のハードウェアにあらかじめ導入されて販売されて来たSAP HANAですが、より柔軟な構成を望まれるお客様も多く、アプライアンスという「固定構成」を徐々に緩和する動きが始まっていることが「既存ハードウェア環境への対応を拡大するプラットフォームとしてのSAP HANA」という記事で紹介されています。今回は、ソフトウェアとしてのSAP HANAの稼働環境について、お客様視点で選択肢の幅が広がってきているという話を、パートナーエコシステムやクラウドという切り口からご説明していきます。
IBMとSAPのグローバルパートナーシップ
パートナーエコシステムの例として、本稿ではIBMとの取り組みをいくつかご紹介します。IBMとSAPは、世界各国で協業しているグローバルパートナーです。SAP HANAアプライアンスモデルをはじめSAPソフトウェアが動作するハードウェアを提供いただいている一方、IBMのソリューションビジネスにSAPのソフトウェアを活用いただいている重要なパートナーのひとつです。日本国内での協業も活発で、たとえば、SAP HANAに対応したSAP Business Suite(SAP Business Suite powered by SAP HANA)の本番稼働の国内初事例は日本アイ・ビー・エム(以後、日本IBMと略記)によるものでした。この事例では、同社の豊富な実績をもとに開発されたSAP HANA対応のグローバル会計統合テンプレートを活用して開始からわずか1年という短期で本番稼働を実現しました。
ご参考:「THKのグローバル会計、SAP Business Suite powered by SAP HANAの国内初稼働、IBMが構築」(http://global.sap.com/japan/news-reader/index.epx?articleID=23434)
一方、クラウドでの協業も世界各国に展開しています。その代表例が昨年発表させていただいた、SAP HANA Enterprise CloudとIBMのクラウドサービスである SoftLayerの協業です。SAP HANAとビジネスアプリケーションをクラウドサービスとしてお客様へお届けするSAP HANA Enterprise Cloudは、各国のSAPが管理運用するデータセンターから提供されていますが、IBMと協業することにより、SAPのデータセンターがない地域などへも実績のあるクラウド(SoftLayer)とSAPサービスを組み合わせて提供できる、というメリットがあります。
ご参考:「SAPとIBM、エンタープライズ・クラウドの導入を加速するパートナーシップを提携」(http://global.sap.com/japan/news-reader/index.epx?articleID=23693)
選択肢の幅を広くご用意するという使命
クラウドサービスも含めソフトウェアで業務課題を解決することを標榜する一社として、私たちSAPはお客様がSAPソフトウェアをお使いになる環境には可能な限りオープンでありたいと考えています。特定のハードウェアやサービスに縛られることなくさまざまな環境でSAPソフトウェアをお使いいただけるよう、選択肢の幅を広くご用意するということの優先度は高いというのが私たちの認識です。「オンプレミスかクラウドか」もそれぞれが選択肢としてご用意すべきと考えますし、どのハードウェアベンダーを選ばれるかというのもお客様の自由、という意味での選択肢であるはずです。さらに、ハードウェアのアーキテクチャーについてもオープンでありたいという思いもあり、このあとご説明するように、SAP HANAの動作環境として従来のインテルアーキテクチャーだけでなく、「POWER」アーキテクチャーへの対応準備を進めています。
SAP HANAとPOWER
POWERとは、IBMが開発したRISCプロセッサーのことです。この「RISC」という言葉は最近あまり見かけなくなりましたが、1990年代にUNIXのビジネス利用が拡大した時は、UNIXの多くが採用するプロセッサーアーキテクチャーとしてRICS、PC系のハードウェアが多く採用したアーキテクチャーであるCISC(インテルが代表格)、どちらが優れているか?という議論が盛んな時期もありました。数の上で言えば、その後Linuxの普及が進むことによってインテルアーキテクチャー、すなわちCISCが主流となってはいますが、技術的な優劣をつけることは単純ではありません。POWERのアーキテクチャーは、IBMのハードウェアだけでなく、文字通り「POWER Architecture」としてOpenPOWER Foundation(GoogleやIBM、NVIDIA他により設立され、現会長はGoogle出身)を通じてクラウドコンピューティングにおけるエコシステムにその先進性や高いパフォーマンスが生かされています。
そんなPOWERですが、企業ITの統合基盤としてSAP HANAプラットフォームを推進していく私たちとしては、前述したような「選択肢の広がり」という意味において大きく期待しています。実際両社は、SAP HANAをPOWERで稼働させるための準備を共同で進めてきています。昨年(2014年6月)のSAPPHIRE NOWでは、「Test & Evaluation Program for SAP HANA」を発表し、いくつかのお客様においてSAP HANA + POWER (OSはSUSE Linux)のテストを実施することを明らかにしました。
参考:『SAP Fosters Open Ecosystem for Driving Customer Innovation』(英語)
(http://www.news-sap.com/sapphire-now-sap-fosters-open-ecosystem-customer-innovation/)
さらに、同年秋に米ラスベガスで開催された開発者向けイベント「SAP TechEd && d-code」にあわせて、”SAP HANA on IBM POWER” のRamp-Upプログラムが発表されました。Ramp-Upはいわゆるベータテストのような「出荷品質にない製品のテスト」とは異なり、出荷レベルの製品を使ってお客様とベンダーが協力して評価するプログラムです。先にアナウンスされたTest & Evaluation Programからさらに次のフェーズへ移っているのです。

SAP HANA Enterprise Cloudおよび”SAP HANA on POWER”におけるIBMとの協業を発表する、Executive Vice President, Technology and Innovation Coreの Björn Goerke (ビヨン・ゴーカ)
このように、SAP HANAの今後の発展にはパートナーとの協業が非常に重要です。今回は一例としてIBMとのパートナーシップや、POWERという新たな選択肢についてご紹介しましたが、IBMが提供するSAP関連ソリューションや “SAP HANA on IBM POWER” にご興味をお持ちの方は、2015年5月20日に東京・神田で開催されるイベント「SAP Tech JAM」の日本IBMのセッションで詳しくご紹介いただきますので、ぜひご参加ください。
SAP Tech JAM
~ 開発先駆者が拓くITの新時代・SAP HANAの祭典 ~≪開催概要≫
【日時】2015年5月20日(水) 10:00~19:00 (受付開始 9:30)
【会場】ベルサール神田
【主催】SAPジャパンジャパン株式会社
【参加費】無料・事前登録制
【定員】300名
【詳細・お申し込み】 http://www.sap.com/japan/techjam/≪プログラム≫
開発者、技術者向けイベントとしてその内容を吟味しており、従来からのSAP技術者のみならず、SAP HANA上でオープンな技術を活用して新たな価値創造を目指す方々にもお応えできるよう、また、SAP S/4HANAの技術情報も盛り込むなど、魅力あるコンテンツ満載となっています。
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