「データドリブン」な経営によって見えるのは、次の新しいビジネスモデル


ビジネスは、今やC2Bの時代になっている

米時間2015年5月5日、フロリダ州オーランドで開幕したSAPの年次イベント「SAPPHIRE NOW + ASUG ANNUAL CONFERENCE」。今年も19000人の登録参加者を集めた大イベントとなった。

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 初日のキーノートセッションに登壇した同社ビル・マクダーモットCEOの講演では、「シンプル」「シームレス」「データドリブン」という3つのことばがずっと底流を流れていたようだ。

「Run Simple」は、昨年以来SAPが目標として掲げてきたコンセプトである。ビジネスオペレーションから顧客管理、財務、人事などを含む幅広いビジネスアプリケーション、ウェブからモバイル、ソーシャルネットワーク、チャットまで広がる消費者チャンネルの多様化、国境を越えた経営など、現在の企業の要望に応えるITシステムは、ますます複雑さを増している。だからこそ、それらをシンプルなものとして提供する。マクダーモット氏は、そのためのロードマップを今年のSAPPHIRE NOW + ASUG ANNUAL CONFERENCEでは示したいとした。

ロードマップの中心を成すのは、シームレスな操作性とデータドリブンな経営のあり方だ。データドリブンとは、数量的なデータによってビジネスのあらゆる側面を計測し、そのデータの分析から次のビジネスモデルを描き出していくような経営のあり方である。

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「現在のビジネスは、もはやB2BやB2Cではありません。今やビジネスを左右するのは消費者です。時代はC2Bに変わっているのです」とマクダーモット氏は語る。消費者の購買行動や要望を細やかにすくい上げる方法を持たなければ、ビジネスは成り立たないということだ。

同様に、ITの利点を最大利用し、大企業と同じネットワークに参入して競合する中小企業。そうしたネットワークや、さらに産業全体においてはサービスや機械までがデジタイズ化され、そこでもデータが生まれている。もはや、身勝手な自社の都合や的の外れた戦略などではなく、正確なデータによって経営と消費者の状況を刻々と把握すること以外には、ビジネスの展望は描けないのだ。マクダーモット氏は、それを相手に対する「信頼」や「エンパシー(共感)」ということばを用いて表現した。

ビジネスをリアルタイム化することで、年商を2億ドルから200億ドルへ拡大

データドリブンになることは、新しいビジネスモデルへの知見を得るのを可能にする。現時点から次のフェーズへ移行することは、企業にとって大きな課題だが、データの語るところに耳を傾ければそれが可能になる。「すべてのビジネスは、変化し続けるのです」と、マクダーモット氏は強調した。

データドリブンな経営によって変身を遂げた企業の例が、ビデオで紹介されたアンダー・アーマーだ。10年前はフィットネス用のスポーツウェアを売る年商2億ドルの会社だった同社は、商品管理からカスタマーサービス、消費者コミュニティーのソーシャルネットワーク対応までを一貫してSAPのデータプラットフォームに統合したことで、ビジネスとコミュニケーションをリアルタイム化し、現在では200億ドルの売上を上げるようになっている。

それを可能にしているのが、SAP HANAだ。

インメモリーデータベースのしくみによって、リアルタイムに効率的にデータを呼び出すSAP HANAは、ユーザー企業が最新のデータを元にビジネス決定が下せるようにする。そのSAP HANA上で構築された最新のSAP Business SuiteのSAP Business Suite 4 HANA(略称、SAP S/4HANA)が、今年2月に発表されている。マクダーモット氏によると、SAP S/4HANAにはユーザー企業のさまざまなフィードバックを取り入れた。クラウドかオンプレミスかという選択肢や、パートナー企業によるイノベーションを可能にするなど、さまざまな点で改良を加えた。現在、約400社がSAP S/4HANAを導入しているという。

スポーツは、マクダーモット氏の得意な話題だ。ここで壇上に登場したのは、NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)の優勝チームに与えられるスタンレーカップのオリジナル。来場者の中にはホッケーファンも多いらしく、スマートフォンで写真を撮る人々が目立った。

スポーツはSAPのリアルタイムデータ分析が多く利用されている分野だ。試合のデータ分析、選手の成績、現在のトレンドなどがゲーム進行に沿って引き出せ、ファンにとってはゲームを重層的に楽しめるしくみだ。マクダーモット氏は、「オムニチャネルでファンの体験を豊かなものにする。これをシームレスに行えれば、チャンピオンになれる」と語った。今日のスポーツスタジアムは、こうしたデータによって変貌を遂げているのだ。

eコマースも同様だが、顧客のエンゲージメントの機会を逃すことなく、リアルタイムで対応し、さらにクロスセルやアップセルして、同時にリッチな体験を提供することが成功へとつながる。「eコマースをオムニチャネル化し、リアルタイムで売買を管理し、チャンネルによっては自動化することも必要」とマクダーモット氏は述べた。

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パートナーシップも、シームレスの一環

さて、SAPは他のIT 企業大手とも積極的にパートナーシップを組んでいる。このキーノートセッションで言及されたのは、FacebookとGoogleだ。

Facebookでは現在、ユーザーの70%が企業やブランドをフォローしているという。気になる企業やブランドがあるということは、ユーザーがそうした対象にエンゲージしていることで、企業にとってはそこにこれまでとは違った新しい関係性が築かれていることを意味する。その関係性をテコにして、企業が顧客にリーチできるようにするのがFacebookの狙い。マーケティングと広告、ITがSAPのプラットフォーム上で統合することで、それを可能にする。

Googleとは、「Android for Work」でのパートナーシップを結んでいる。これは、エンタープライズモビリティーとビジネスアナリティックス、ビジネスアプリケーションに関わるもの。現在すでにSAP Lumiraを利用して企業内のデータをグーグルシート上に展開してビジュアライズすることができるが、今後は、そうしたビジュアライゼーションをグーグルドライブ上で保存、共有したり、より広くグーグルのアプリケーションとSAPのアプリケーションが相互から利用できたりするようになる計画だ。

観客を沸かせたもうひとつは、「シームレス」を具体的に見せるConcurのデモだった。Concurは、SAPが2014年に買収した企業で、出張と経費清算ソリューションをクラウドで提供する。このデモでは、出張に出かける社員が、普通ならば煩雑な経費報告に関する手続きをどれだけシームレスに効率的に行えるかを見せた。

航空券やホテルの予約がひとつの画面から行えるだけでなく、その会社のシステムに接続されていることによって、企業価格を自動的に折衝する。ビジネスディナーのレシートは写真を撮ってアップロードするだけで計上され、後に誰と一緒の会食だったのかも、ワンクリックで呼び出せる。企業内外のシステムがつながり、自在にデータを呼び出して統合できる手順が驚くほどスムーズで、これこそビジネスマンが求めていたものだろう。

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講演の最後に、マクダーモット氏は「リーダーは今、3つの問いかけをすべきだ」と述べた。SAPが顧客企業と行ってきた「Co-Innovation(共同開発)」その方法論を変えていかなければならない、そのために自問するポイントである。

1つは、ビッグアイデア(desirability)があるか、実現のための計画(feasibility)があるか、そこから何を生み出すのか(viability)について、確固とした考えを持っているかを問う。2つ目は、これからのイノベーションはビジネス側の人間とIT側の人間が、協力して推進する必要があるが、その人材をどう集めるのかを問う。そして最後は、ビジネス上の儲けだけでなく、IT戦略によって企業そのものをどう前進させていくのかを問う。データドリブンであればあるほど、回答は得やすいとした。

そして、ビジネスのあらゆる局面を洗練させ、シンプルに結びつけることによって、「ビジネスは美しいものになる」。「ソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)はもう古い。SAPは、シンプル・アズ・ア・サービスを目指します」。マクダーモット氏は、こう講演を結んだ。

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