ASUGは、新しいマップを求めて、共に研鑽し知識を共有する


人間のつながりによって、テクノロジーに意味を与える

アメリカのSAPユーザーグループであるASUGは、1991年に創設されている。SAPのユーザーがそれぞれの利用体験を話し合って知識を共有しようと自然発生的に生まれたグループは、現在では3800社から10万人以上の会員を抱え、一年を通してイベントが開かれる大組織に拡大している。

ASUGのジェフ・スコットCEOは、「メールやメッセージングが出てくる以前のような、人間のつながりがある」のが、ASUGだと語る。スコット氏のキーノートセッションのタイトルは、『コネクト、インスパイアー、イノベート』。ユーザーらが、互いに顔を突き合わせてつながり刺激し合ってこそ、SAPユーザー全員のイノベーションの底上げになるという意味だ。

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 「私自身、SAPの製品はニッチなものだと思っていました。けれどもこの6年間で、スピード、シンプリシティー、データの捉え方などの点でSAP製品はどんどん洗練されてきました」と同氏は言う。そして、シンプルであるとは画面が美しいといったことだけを指すのではなく、アップグレードやマイグレーションが簡単であるといったことも含めた、すべての使い心地に関わるものだと述べた。

ASUGでは、SAP HANAがここしばらくの話題の中心を占めているのだろう。ユーザーは「HANA疲れ」を感じているかもしれないと、同氏はその内情を少し覗かせてくれた。だが、HANA疲れは決して悪いことではないようだ。「そのビジョンを生きなくてはなりません」と続け、今年はHR(人事)、IoT、ユーザーエクスペリエンス、SAP S/4HANA、SAP Simple Financeに集中したいと参加者を鼓舞した。

ASUGのメンバーには、まだ誰も通ったことのない道を開拓しているという意識があるようだ。そもそもASUGが生まれたのも、システムとシステムを統合させるためのマップが存在せず、それを話し合うために集まったことがきっかけとなっている。

「マップがないのは、今も同じです」と語るスコット氏は、「テクノロジーは、それ独自では意味のあるつながりを作れません」と言う。ビジネスプロセスを考え、オートメーションの方法を模索するために、システム統合が必要となる。ASUGがそれを考える時、そこにはユーザーの集合的なビジョンや洞察が込められているのである。

100件以上のプレゼンテーションで、ASUGに貢献

そんなASUGに大きく貢献をしてきたひとりが、キース・スタージル氏だ。スタージル氏は、化学製品メーカー大手であるイーストマン・ケミカルの副社長兼CIOで、同社のグローバルビジネス展開のためにIT利用の戦略を構築してきた人物だ。同氏はまた、ASUG役員会の副会長を務めている。同氏のメッセージは、「現状維持から離脱せよ」という内容だ。現状維持には機会はない。しかし、現状維持を破れば、そこには革命的な大きな機会が開かれていると言う。

スタージル氏によると、イーストマン・ケミカルのここ数年の順調な業績は、SAP導入による「トランスフォーメーション(変換)」が理由だという。もともと、SAPの同社での最初のコンタクトパーソンとなったのが、スタージル氏だったとのことだが、同社は試験導入プログラムに積極的に参加するなど、新しいシステムの導入には前向きの姿勢を持ち続けてきた。材料調達のために外部会社とネットワークを共有するといった動きも、他社に先駆けておこなった。

同社は2010年にASUGの「インパクト賞」を受賞しているが、その当時スタージル氏は、「ASUGに参加することで、何をすればいいのかと同時に、何をしてはいけないかを学習することができた」と述べている。通常は触れることのない失敗談も、ASUG の集まりでは知識共有の一環として公開されているのだ。しかし、そのためにはASUGに貢献することも必要だったと同氏は言う。イーストマン・ケミカルは、1993年以来100以上のプレゼンテーションをASUGで行ってきた。

昨年発表された『Run Simple』のコンセプトには、感銘を受けたというスタージル氏は、「それは本当に可能なのか」と自らも問いながら模索を続けている。「シンプルとは、直観的であること」「価値のないプロセスを破壊すること」と言い換えてもいる。そして、「シンプルは簡単ではないが、実現は可能だ」と考えている。

イーストマン・ケミカルでは、オペレーショナルリサーチやデータサイエンスの専門家らがグループを作って、IT構築を含めビジネスプロセスをシンプルにするための方策を考えている。ビジネスマンが考え、決断する時間を得るために無駄なプロセスを取り除く。けれども、スタージル氏が強調するのは、シンプルを目指すかどうか迷っている暇はないということ。シンプルを目指すのは、もはやただ売上を向上させるためではなく、ビジネス全体をもっと優れたところへもっていくことが求められるからだという。

「これはひとりでできることではない。だからASUGが必要なのです」と訴えた。

チームプレーヤー精神といつも学習し直す姿勢がプロを育てた

『SAPPHIRE NOW + ASUG ANNUAL CONFERENCE』2日目の最後のキーノートセッションは、2014年にプロフットボール殿堂入りを果たしたマイケル・ストレイハン氏だ。

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同氏は、自分の生い立ちとフットボール選手としての生活、そしてリタイア後のスポーツ番組解説者やトークショーのホストとしての新しいキャリアを語った。

フットボールやスポーツ選手がいる家族環境に育ったストレイハン氏だが、フットボールに触れたのは、13歳の時。当時は、アメリカ軍に務める父親の仕事の関係でドイツに暮らしていたが、フットボールを始めるためにアメリカの親戚の元に送られた。地元の高校ですぐに才能が認められて、スポーツ奨学金で大学へ進学。その後プロの道へ進んだ。

だが、自分自身はゼロから初め、学習し直し、生活を作り変える、を繰り返している意識しかなかったという。フットボール選手としてのプロ意識が芽生えたのは、ニューヨーク・ジャイアンツで15年もプレイを続けてからのことだったという。

それでも、ストレイハン氏は、「あり得ない」は「不可能」と同じ意味ではないと語る。そして、自身にいつも向上心があり、またチームの成績は自分の肩にかかっているという「チームプレーヤー」としての意識があったと述べている。ASUGのメンバーにもどこか通じる内容だろう。

「勝ちたいのならば、勝つのだと思うこと。そこで意識のシフトが起こる」。スポーツ選手ならではの、強力なメッセージだ。

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