ヒト・モノ・カネのデータをつなげて、煩雑な作業を取り除き、スマートな意思決定をサポートするのが次世代プラットフォーム


製品ではなく、結果を売るビジネスへの変化が必要

企業の戦略コンサルタントにとって、「業績向上を保証します」とはなかなか言えないせりふだろう。紙に書いた戦略を提出したところで、コンサルタントの仕事は終わり。その後がどうなろうと、あとは企業側の自己責任とみなされる。

その意味で、「SAPPHIRE NOW + ASUG ANNUAL CONFERENCE」2日目のキーノートセッションでバーンド・ロイケ氏が語ったことばは、コミットメントを促すものだった。企業は顧客に対して「製品を売ることから、結果を売ることへ変化しなければならない」と同氏は言ったのだ。その背後には、SAP HANAに対する自信と熱意がうかがえる。

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SAPのエグゼクティブボードのメンバーで、テクノロジー開発全体を担当するロイケ氏は、データの自在な処理を可能にするSAP HANAを統合することによって、ビジネスがどうパラダイムシフトを起こすか、そんな例をデモで解説した。

たとえば、ある製造業の現場。朝、画面を立ち上げると大手顧客への納品が遅れているという警告が出ている。クリックすると、在庫部品が足りないのが理由と表示されている。

ここからは、データのパワーが発揮される。SAP S/4HANAが問題解決のオプションを提示し、それぞれに推薦度を示す星マークがついているのだ。オプションのひとつを選んだところ、他の顧客から受注した同じ部品を先にこちらに回わすという選択肢が表示された。その顧客企業は、最近支払い面での滞りがあるため、納品を一時停止するのが望ましいこともわかる。この解決策を選択すると、同時に社内の承認プロセスが自動的に動き出し、間もなくして部品が出荷される。

通常こうした決定には、社内での煩雑なやりとりや確認のための時間のかかる作業が必要だが、ここではそれが一元的に完了する。多様なデータがリアルタイムで照合され、シミュレーションや予測も可能にして、賢明な意思決定をサポートするからだ。また、経理や販売などの部署の壁を超えてデータが活用されていることもわかる。

ロイケ氏は、SAP S/4HANAへの移行はシステム上とビジネスモデル面の両方において起こることを強調している。コアシステムを移行した後には、データによって成り立つデジタルエコノミーを全面的に受容し、それに基づいて新たなビジネスモデルを模索する。そして、他のビジネスネットワークもつなげてデータの力を最大限に利用するのだ。

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ただし、対応の速度は企業によって異なるため、SAP S/4HANAはスイートとしてではなく、モデュールごとに提供する。また、SAP HANAへの移行は、既存のデータストラクチャーの重要部分はそのままにして、ビジネスに支障をきたさないように遂行するという。

SAP S/4HANAは2月にリリースされてから、すでに25インダストリーのすべてで利用されている。現在はオンプレミス版のみだが、今後はパブリッククラウド、マネージドクラウドでも提供され、プラットフォームの選択肢は広がる予定だ。また、機能性も拡張されていくが、それらはオンプレミスであれクラウドであれ、既存のSAPのプラットフォームに統合することができる。

クラウドに多様なプレーヤーとネットワークをプラグインするインダストリー4.0

そうしたロードマップの先にあるのが、IoTのためのSAP HANAクラウドプラットフォームだ。センサーによって環境やモノからデータを採り、それを保存して分析する。部品の消耗や故障なども含めた予測も可能になり、これによって先手を打つプロアクティブなビジネスができるようになる。

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ドイツの製造大手シーメンスは、「インダストリー4.0」と呼ばれる次世代の製造業ビジネスにすでに軸足を移している。このセッションの中で、同社のインダストリー・セクターのカスタマーサービス部門ペーター・ベケサーCEOは、SAP HANAクラウドをオープンなエコシステムを構築する新しいプラットフォームとして用いていることを説明した。

「シーメンス・クラウド」は製品やサービスを管理するクラウドで、多様なデバイスをつなぐことができ(オープンデバイスコネクティビティー)、サードパーティーにも開かれ(オープンスタンダード)、顧客企業がここで意思決定をするのをサポートし、多様なアプリケーションを統合することができる。「SAP HANAは詳細に検討した結果の選択」だったという。

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また、ユーティリティー供給会社のセンターポイント・エナジーは、送電の異常からある変電機の部品を特定し、その交換時期を予測、検討できるようなシステムを開発している。異常の原因を突き止め、現状を把握し、解決策の選択肢を見て意思決定ができるしくみだ。この機能性はデスクトップだけではなく、タブレットはもちろん、今後はウェアラブルにまで広がっていく。データドリブンな経営は、スピーディーなビジネスにもつながるということだ。

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世界中に11500近い店舗を抱え、毎週2億5000万人の買物客を向かえるディスカウントストアのウォルマートも、SAP HANAを導入している。同社のカレナン・テレルCIOは、「リアルタイム性とアナリティクス機能の高性能」を選択の理由として挙げた。

テレル氏がたびたび強調したのは、スピードだ。「ウォルマートでは、常にデータを切望しています。アリゾナでのバナナの値段はどうなっているか、中国やインドの店舗で、客はどんなものを買っているのか、そうしたことをリアルタイムで知りたいのです」と同氏は言う。SAP HANAによって、これまでは入手できなかったデータが採れるようになったという。「ビジネスとテクノロジーがシンクロすると、最適解が出てくるのです」と語った。

複数のネットワークがスムーズにコネクトされるユーザーエクスペリエンス

2014年にSAPに買収されたConcurのスティーブ・シンCEOは現在、SAPのビジネスネットワークを担当する。SAPビジネスネットワークには、同様に買収されたAriba(資材調達)、Fieldglass(ベンダー管理)のチームが含まれており、ビジネスにおける無駄なタスクをなくすという共通した目的を持っている。

シン氏は、「ユーザーエクスペリエンスをコネクトするような方法でネットワークをコネクトすれば、総体的な価値が上がります」と語った。そして、SAPビジネスネットワークの3つのサービスをコネクトすると、たとえば次のようなことが可能になる。

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顧客に供給した機械が故障しそうで、出張が必要に。機械の情報はビジネスネットワークにもコネクトされていて、そのサイトからほぼ自動的に航空券、ホテル、レンタカーが予約される。サードパーティーのベンダーも地元で手配済み。その上で、予算合計額も算出される。

突飛な例にも思えるかもしれないが、データがIoTと人、モノの動きのつながりを顕在化させる時代には、こうしたことは当たり前になっているかもしれない。

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