業務プロセスを「作る」でなく「選ぶ」――SAP ERPが選ばれる理由とは?

作成者:SAP編集部 投稿日:2015年5月8日

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Rear view of man looking at view, St. John's, Newfoundland and Labrador, CanadaSAP ERPは、1970年代に登場した汎用機向けのSAP R/2に始まり、クライアントサーバー型のSAP R/3、そしてSAP ERPと進化を遂げ、2015年2月には第4世代としてインメモリープラットフォームSAP HANA専用に構築されるSAP Business Suite 4 HANA(SAP S/4HANA)としてリリースされました。SAP ERPは1992年にSAPジャパンが設立されて以来、日本のお客様のあいだでも多く採用されていますが、ではSAP ERPは他社とどこが違うのか。2015年3月13日に東京で開催された「勝ち抜く製造業セミナー」において、SAPジャパンの平石和丸と、秋山一郎がリリースされたばかりのSAP S/4HANAのデモンストレーションと合わせて、SAP ERPの特長を紹介しました。

低コスト、短期導入とクラウド化で、中堅企業に浸透するSAP ERP

まず冒頭で、平石が最近のSAP ERPの導入傾向を説明。「SAPシステムは大企業で多く採用されているイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実際は売上高750億円以下の企業のお客様が80%を占めています。1億円程度の予算で、短期間に導入するケースが増えているのも最近の傾向で、子会社に適用したいという要望にも十分応えることができます」と話しました。また、ここ2、3年はクラウドファーストで検討する声が高まりつつあり、3社のうち2社の割合でクラウド運用を前提とした提案を求められています。

導入事例として、平石はエンジニアリングプラスチックの加工分野で業界トップを走るエンプラスを採り上げました。同社はかつてエリア単位でサーバーを立てて基幹システムを運用していましたが、2012年3月に海外拠点にグローバルワンインスタンスでSAP ERPを展開。業務を標準化するとともに、日本の本社から海外を含めてすべての拠点のSAPシステムをマネージメントできる体制を構築しました。その結果、厳しい経済環境の中でも売上を倍増させ、従業員の増員も達成しています。また健康食品や化粧品、医薬品など健康関連商品を中心にEコマース事業を展開するケンコーコムも、2012年に日本で初めてアマゾンウェブサービス(AWS)のクラウド環境上にSAP ERPで会計、販売システムを本格導入し、オンプレミスの周辺システムとハイブリッドの環境で基幹システムを運用しています。

業務プロセスを「作る」でなく「選ぶ」のコンセプトで導入リスクを低減

続いて平石は、SAP ERPと他社のERPパッケージとの違いを4つの観点で紹介しました。

①  経営の見える化

②  グローバル・グループ経営管理

③  業界標準の業務プロセス

④  操作性

 

①   経営の見える化
「経営の見える化」については、SAP製品と他社ERPの違いを説明しました。他社ERPはCRM、予算・計画、生産管理、販売管理などアプリケーションごとにデータベースが分かれています。その場合、通常はDWHを作って分析環境を作ることになりますが、データの更新はバッチ処理となり、リアルタイム情報を見ることができません。それに対して、SAP 製品ではデータベースを統一することで、情報系・基幹系両方から情報を取り出したダッシュボードを作ることができます。たとえば、基幹系の実績情報と情報系の目標・予算情報を同時に管理し、必要なアクションにつなげることができます。

②   グローバル・グループ経営管理
次に、「グローバル・グループ経営管理」についてです。SAP ERPの場合、システム上はログイン時に言語を指定するだけなので、グローバル展開の際にも、各国用の画面を用意する必要がありません。グループ管理も同じログインIDで統合されているので、グループ会社ごとに自動認識して振り分けることができます。

「SAP ERPはマスターコード、パラメーター設定*、データベース、システム基盤がすべて共通なのでセグメント集計もスムーズにでき、他社のERPでは開発を必要とするグループ会社の情報がすべて同じ粒度、精度、タイミングで収集でき、グループ間の取引についても自動化が可能です」(平石)

*パラメーター設定:SAP ERPが提供する“これ以上分解できない粒度まで業務を細分化”した業務プロセスプログラム・機能を、お客様の業務に合わせて取捨選択をすること

③   業界標準の業務プロセス
「業界標準の業務プロセス」については、「パラメーターで業務プロセスを変更できるのがSAP ERPの最大の特長です」と平石は話します。パラメーター変更は、設定画面のチェックボックスにあるラジオボタンを、オンとオフで設定するようなイメージになります。パラメーターをどのように設定するかは、業界や業務によって異なるため、業務プロセスの変更はノウハウが必須ですが、食品、製造など業界特有のパラメーター設定を共通化したSAPパートナーテンプレートを活用することで、スムーズに導入することができます。平石は「パラメーターの設定に加えその業務に必要なアドオン機能を追加した製品と、マニュアルをセットにしたテンプレートを多くのSAPパートナーが提供している。パートナーごとに提供内容・得意領域に特徴があるため、業務要件に合ったパートナーを選ぶのがポイントです。」と説明します。

④   操作性
「操作性」については、PC画面のほかタブレット端末やスマートフォンからも利用できる新たなユーザーインターフェースである「SAP Fiori」や、従来のSAP標準ユーザーインターフースであるSAP GUIの画面をノンコーディングでカスタマイズできる「SAP Screen Personas」の無償提供を2014年から開始。以前のインターフェースより使いやすくなり、高い評価をいただいています。

SAP Fioriに関する記事一覧
https://www.sapjp.com/blog/archives/tag/sap-fiori
SAP Screen Personasに関する記事一覧
https://www.sapjp.com/blog/archives/tag/sap-screen-personas

 

以上のように、パラメーターを設定するSAP ERPは導入リスクが低く、導入テンプレートを採用することで短期導入が可能となります。「SAP ERPの導入プロジェクトの特長は、製品として完成しているので、完成品を見ながら実際の業務とのFit & Gapができることです。実際に完成した業務が目の前にあるので、システム導入後の業務イメージが湧きやすく、カットオーバー後の手戻りも少なくなります。それに対して他社のERPは作りこまなくてはいけない要素が多くスクラッチ開発と同じリスクが発生しやすくなります。(平石)

最近は導入プロジェクトのノウハウの蓄積により導入コストも下がる傾向にあり、ビッグバン導入(SAP ERPを全社一括で導入すること)でもその傾向が顕著です。その結果、トータルの見積価格で見ても、国産ベンダーと遜色ありません。平石は最後に「ソフトウェアのライセンスは高めであるのは事実ですが、他社の開発型ERPやコンポーネント型ERPの場合、導入作業、開発費用、テスト作業が高くなるので、横並びにすればほぼ同等です。ERPパッケージを選ぶ際は、将来的に発生するコストも見極めてください」と締めくくりました。

明細データを1つのデータベースに集約

続けて、秋山がリリースされたばかりのSAP S/4HANAについて紹介しました。第4世代のSAP S/4HANAは、インメモリープラットフォームSAP HANA専用に構築されることから、ハードディスクのIOボトルネックから解放され、従来のデータベースやDWHと比べて、圧倒的な高速化を実現していると説明。「従来のシステムでは、明細データとは別に勘定科目や得意先といった単位で集約データを作成・保存していたものが、SAP S/4HANAでは明細データをさまざまな単位で瞬時に取込み・集計することが可能となるため、集約データを持つ必要がなくなり、データ間のタイムラグも発生せず、データ容量の大幅な削減につながる」と解説します。

従来、基幹系と情報系で分かれていたデータベースも、SAP S/4HANAではすべてSAP HANAに統合。完全リアルタイム化し、俊敏性が大幅に向上。シンプルなITが実現します。グローバルワンインスタンスであれば、「1つの容れ物」ですべてのデータが管理できることになります。

次に秋山は、SAP S/4HANAの第1弾としてリリースされた次世代の会計ソリューション「SAP Simple Finance」についても言及しました。SAP Simple Financeは、経理財務部門向けの会計管理とプランニング、キャッシュマネジメントを併せ持つソリューションです。データ構造がシンプルになり、会計明細データをさまざまな切り口でいつでも瞬時に集計することができます。デモンストレーションでは、タイル画面で操作するグラフィカルなUI「CFOダッシュボード」を操作しながら、全世界の売上や利益率、キャッシュフローをリアルタイムに確認・分析できることを説明しました。

また、あらかじめ設定した財務諸表をドリルダウン(掘り下げ)して、より詳細な情報を確認することも可能です。たとえば、南米拠点の情報を呼び出し、ある拠点の利益率を確認したあと、そこから特定の製品の利益率まで掘り下げて分析することも簡単にできます。秋山は「SAP Simple Financeは、SAP ERPの明細データを直接画面上で可視化できるのが特長で、マニュアルなしでも直感的に操作ができます」と語りました。

最後に、SAP S/4HANAのロードマップを解説。すでにリリース済みのオンプレミスエディションの他、今後第2弾でパブリッククラウドエディション、第3弾でマネージドクラウドエディションをリリースする計画であり、ユーザーにさまざまな選択肢を提供していくことを明らかにしました。

「選ぶ」のコンセプトで柔軟な運用が可能なSAP ERPが少ないコストでも導入でき、多くの中堅企業で採用されていることをご理解いただき、新世代のSAP S/4HANAについてもいち早くお試しいただければ幸いです。より詳しい説明、デモなどをご要望の皆様は、ぜひSAPジャパンまでお気軽にお問い合わせください。

SAP Business Suite 4 SAP HANA(SAP S/4HANA)の詳細はこちら
http://discover.sap.com/japan-S4HANA

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