IoTの最新ショーケースから考える、B2Cにおけるオムニチャネルのあり方

作成者:熊谷 安希子 投稿日:2015年5月11日

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Ladys hand touching a touch screen tillインターネットを介してあらゆるモノがつながるIoT(Internet of Things)が、いよいよ本格的な時代を迎えようとしています。時間や場所を問わず、センサーなどで相互通信することで、自動認識、計測、制御などができるようになり、アジアでは2020年までに500億のモノがネットワークにつながると言われているだけに、産業界やビジネスにも大きな影響がもたらされることが予想されます。

このような状況を踏まえて、SAPでは3月にシンガポールでHyperconnected AsiaというIoTの最新事例を紹介するショーケースを立ち上げました。ショーケースでは、ドイツのハンブルグ港湾局が取り組む渋滞緩和のためのスマート・ポート・ロジスティクス(Smart Port Logistics)の事例、FA(工場自動化)との連携を実践したFESTO社のConnected Manufacturingの事例をはじめとして、医療、自動車、スポーツ、公共、食品、消費財などさまざまな業界の事例が紹介されています。

IoTで実現される業務変革やイノベーションを体験いただき、それらを加速するIoT領域(ビッグデータ、モバイル、クラウド)、カスタマーエンゲージメント領域(CRM、オムニチャネル、ソーシャル)におけるSAPのソリューションについての理解を深めていただくことが目的です。

今後、IoTはコンシューマ業界(消費財、小売)、小売業界を中心としたB2C領域で、ますます浸透が加速していくものと考えられます。そこで、本ブログではIoTの最新ショーケースを参考に、B2Cにおけるオムニチャネルのあり方に焦点を当て、その方向性についてお話ししたいと思います。

IoTで収益向上が期待されるB2C領域

IoTを消費者接点で考えると、すでに13億人がインターネットでつながっているところに、2020年までには500億個ものデバイスが登場することは、まさに計り知れないほどのビジネスの可能性を示しています。これは、2030年には世界の人口の約50億人が経済的に中流層(年間所得3,650~3万6,500ドルの層)になり*、それによって消費者の購買力が格段に高まる、そして労働人口のうち75%がスマートフォンを使いこなすミレニアル世代になる、という環境下で起こってくることなのです。

一方、小売業界でもテクノロジーの進化によって急激な変化が起きています。ミレニアル世代はFacebookやYouTube、Instagramなどを活用して、自分たちの意見を世界に発信することをもはや当たり前のものとしています。このようなことを背景に、adidas社やNike社は製造卸が直営店を持つ形で、消費者に対し直接ブランドを伝える形を作ってきました。また、バーバリーでは店舗を優良顧客と高度な販売スキルを持ったスタッフとの双方向コミュニケーションの場であると位置づけています。このようなビジネス革新も収益向上に欠かせないものでしょう。

コンシューマ業界におけるIoTの具体像とは?

そこで、コンシューマ業界におけるIoTが、どのようなカスタマーエクスペリエンスを提供し顧客理解につなげているのか、そして売り上げ増加につなげているのか、Hyperconnected Asiaのコンシューマ向けブースで紹介されたいくつかの具体例を取り上げます。コンシューマ業界では、フロントエンドではモバイルのほか、カメラやiBeaconなどさまざまな最新テクノロジーが利用され、コマースやマーケティング、プロモーションに利用されています。

事例① Adidas社が実践するモバイルアプリを使った新たな顧客体験の提供

Hyperconnected Asia_011つ目は、adidas社の事例です。これは顧客の日常の1コマを、店舗での快適な購入体験に結びつける試みと言えるでしょう。ある顧客が家で雑誌を見ていたら、掲載されていたadidasブランドのシューズを気に入ります。そこで、スマートフォンでそのQRコードをスキャン、ウィッシュリストに追加します。その情報は即座に店舗に送信され、後日その顧客がショップに来店するとiBeaconで特定され、「いらっしゃいませ」という通知が顧客のモバイル端末へ送信されます。それと同時に、その顧客のウェブ閲覧や購買履歴に基づき、好みと思われる商品も提案され、モバイルアプリ(myStore)を使ってショッピングを容易に楽しむことができます。

一方、店舗スタッフのiPadにも、その顧客の来店や購買履歴、好みなどが通知されるため、より顧客視点に近い接客を行うことができるようになります。顧客が店舗を出るときには、「いつもありがとうございます。またお越しください」というメッセージも送信されます。

この取り組みのポイントは、あくまで顧客視点が徹底されていることです。顧客に対する「おもてなし」は、事前に好みを把握しておくことから始まります。それだけではありません。来店中の顧客は、スタッフにサポートしてほしい人がいれば、“放っておいてほしい”という人もいます。そうしたエンゲージモードを確認することで、究極の接客が実現するのです。

これらのカスタマーエンゲージメントは、SAP CRM Real-Time Offer Management、SAP CRM Precision Marketing、SAP CRM Customer Engagement Intelligenceなどのソリューションが活用されており、新たな購入体験の創出に向けて、今後も大きな可能性が期待されます。

事例② ソーシャルメディアとも連携したコネクテッド自動販売機

2つ目は、コネクテッド自動販売機と呼ばれる自動販売機による、新たなカスタマーエンゲージメントを提供する事例です。まずコネクテッド自動販売機で買い物をするために、IDを備えたICカードを作成し、お金のチャージを行います。そのICカードをコネクテッド自動販売機にかざすと、その人を特定すると同時にチャージの残高などの情報が表示されます。

そこで、表示される商品をタッチパネルで選択すると、商品と価格情報を含む決済画面がポップアップで表示されます。ICカードに紐づくモバイルマネーアカウントでの決済を選択すれば、商品がコネクテッド自動販売機から出てきます。

Hyperconnected Asia_02 Hyperconnected Asia_03これらの購買履歴はIDに紐づいて記録され、その後の提案につながる情報が履歴として残されます。またFacebookなどと連携させることにより、ソーシャルメディアでつながっている友人とのコミュニケーションを楽しむこともできます。たとえば、Facebook上の友人に誕生日プレゼントをすると、その友人がコネクテッド自動販売機で買い物をする際にギフトを送ることができ、さらにはスピーカーから「Happy Birthday to You」などのメロディが流れる仕掛けを設定することもできます。

このほか、タイアップによる販売促進への応用も可能です。たとえば、特定ブランドの商品を映画の広告キャンペーンと紐づけ、その商品が選択されると映画のプレビューを流すなど、ユーザーにとっても楽しいカスタマーエンゲージメントを作り出すことができます。たかが自動販売機と感じる方もいるかもしれませんが、普段の生活における身近なアイテムだけに、きめの細かい仕組みを提供する可能性を秘めているということです。この事例の詳細については、以下でご覧になれます。

https://youtu.be/Pddz4eHuGAo

https://youtu.be/Pddz4eHuGAo

事例③ Jones Hypermart  コンシェルジュさながらのプレシジョン・マーケティングの実践

3つ目の事例は、店舗の買い物客ごとにパーソナライズされた、正確かつリアルタイムで行うマーケティング手法です。店内の買い物客の位置情報をもとに、その足跡やステータスなどを把握し、効果的なプロモーションを行うことを目的としています。

たとえば、来店した買い物客の位置情報に過去の購買履歴などを加えることで、お菓子が好きな買い物客がお菓子のゾーンに入ったところで、「カップケーキ5%引き」といったプロモーション情報をモバイルに送るといった仕組みです。

Hyperconnected Asia_04 Hyperconnected Asia_05

また、O2O(Online to Offline)マーケティングを支援するSAP Precision Marketingを活用することで、買い物客の足跡を統計的に表示し、人通りの多い場所と少ない場所が一目瞭然となります。赤の濃いところが最も人通りが多く、次いでオレンジ、青は少ないところです。これによって、プロモーションをどこで仕掛けるべきかがひと目でわかります。

さらに、プロモーションしたい商品や対象顧客、場所などのパラメータを入力すると、その効果がどの程度かを瞬時に予測できるため、より高い精度でプロモーションを行うことが可能になります。

真のオムニチャネル化はこれから

消費者ニーズにすばやく対応するため、Eコマースの一部や、モバイルアプリでオファリングを行うといった限られた範囲で顧客接点の最適化が進んでおり、消費者もこうした体験に慣れ親しんできています。しかし、フロントエンドの対応のみでは、オムニチャネルとは言えません。ウェブや店舗といったそれぞれのチャネルで最適化できたとしても、それぞれのチャネルがバックエンドでつながっていなければ、実際の在庫情報を正確に把握することは難しいでしょう。たとえば、消費者はサイズが合わず返品の問い合わせをする際、その場で別の商品の提案を望んでいます。それに対応するのも真のオムニチャネルの姿です。

ご紹介してきたショーケースのように、リアルタイムにクーポンやオファリングを出すといった限られた範囲では、他のオムニチャネルソリューションとの違いはわからないでしょう。しかし、バックエンドでフロントエンドがつながる真のオムニチャネルとの違いは、ソーシャルメディアを含む顧客情報、ウェブ検索による嗜好、POSデータやEコマースデータによる購買履歴、問い合わせ履歴など、チャネルを横断した顧客行動をもとに、さらなるオファリングやおもてなしを実践できるところにあります。

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