60,000種類もの部品の納品リードタイム予測的中率を80%に向上し、大幅なコスト削減も達成したロッキード・マーティン


SAPPHIRE NOW + ASUG ANNUAL CONFERENCEのセッションの中には、大手企業のバックエンドシステムにおいて、どういった開発が行われたのかを知る機会が数多くある。今年も、ワーナー・ブラザーズ、食品会社のモンサント、インテル、テトラパック、ドルビー、アメリカのデパートチェーンであるターゲット、マイクロソフト、コカコーラ、バンク・オブ・アメリカなど、多様な業界の代表的企業が、オペレーションを効率化して競争力を獲得するためにどんなシステムを導入し、どうアプリケーションを開発し、業務改善につなげたのかが発表された。

それぞれに背景や経緯は異なっていても、アイデアや手法の部分で参考になることはたくさんある。熱心な参加者は、同イベントのモバイルアプリを手にスケジュールを確かめ、いくつものセッションに参加していたようだ。

22カ国5,200社のサプライヤーから60,000種類の製品を調達

そんなセッションのひとつが、ロッキード・マーティンに関するものである。同社が、納品のリードタイム予測のためにSAPの予測分析テクノロジーを利用してアプリケーション開発を行ったケースについて説明が行われた。

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ロッキード・マーティンと言えば、人工衛星からミサイル軍事システム、飛行機など多様な製品を製造する航空機や宇宙船関連の開発製造会社だ。同社の宇宙システムズ部門は年商81億ドル。納品される部品の数は多数におよぶと想像できるが、何と毎年22カ国5,200社のサプライヤーから60,000種類の製品の納品を受け、200社を超える運送会社が関わっているという。同部門のコストの70%は、こうしたサプライチェーンから部品を調達することに費やされている。

そうした部品のリードタイム、つまり注文してから納品されるまでの時間を知ることは、製造現場にとっては利益を左右する重要な要素である。納品が予定よりも遅くなると、製造過程は遅れをとり、最悪の場合にはラインを一時停止しなければならなくなる。かと言って納品が早すぎると、在庫のためのスペース確保にコストと人手がかかる。納品までの実際の時間を正しく予測することは、製造オペレーションを最適化するためには肝要となるのだ。

手作業を予測アプリケーションで代替する

同社の上級ITソフトウェアアーキテクトのステファン・ジェラーリ氏によると、これまでのリードタイムは過去の経験とそれぞれのサプライヤーから納品された平均的リードタイムに基づいて、調達担当者らが予測していた。また、四半期ごとに調達担当者らはSAP ERPとは別のプラットフォームに何1000件という発注と予想納入時期を書き込み、それをデータ統合ツール(ETL)でERPシステムに読み込ませるということを行っていた。ただし、そのプロセスが煩雑なために正しく入力が行われていないこともしばしばあり、これが正確な予測を妨げる原因にもなっていた。部品によっては製造オペレーションに大きな影響を及ぼしており、この状況を向上させようとしたのが、このリードタイム予測のアプリケーション開発だ。

目標は、リードタイム予測的中率を80%に上げることである。だが、それに加えて、経験ある調達担当者がいなくても、リードタイム予測ができるようになることも含まれていた。こうしたアプリケーションを通じて、社内のナレッジを共有、継承することができるという点は興味深い。SAPからは、データサイエンティストも加わった。

手順は、まずERP内のリードタイムを含む調達関連データをSAP HANAへコピー。SAP HANAには、予測分析エンジンと予測アルゴリズムライブラリーが搭載されている。統計処理やデータモデルはオープンソースのR言語に基づいていたが、これもSAP HANAへ埋め込んで分析を行った。

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毎年37万5000件の入出荷を扱うロッキード・マーティンでは、大量の調達関連データがあり、これがリアルタイムでSAP HANAへ複製された。また、同社には1960年代から今日までのヒストリカルデータも保存されており、両方を合わせてより正確なリードタイム予測を目指した。

データサイエンティストらが行ったのは、データのクリーンアップを行い、素材や部品、部品群の間でヒエラルキーを整理し、過去のデータからリードタイムの分布を分析して、パターンを抽出するといったことである。結果的に、このアプリケーションはこれまでのリードタイム予測を25%向上させ、的中率は80%を達成することができた。また、リードタイム予測が外れるためにかかっていたコストも80%削減できる見込みという。

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ここで開発されたリードタイム予測アプリケーションには、現場の調達担当者らのフィードバックを盛り込むしくみも作られている。担当者が新しい発注を行おうとすると、画面上に予測リードタイムが表示される。もし担当者が経験上、そのリードタイムに改訂を加えたい場合は、それも可能。そうすることによって、このアプリケーションは精度を増していく。

オペレーションの要所はどこか

「今回のリードタイム予測アプリケーション開発は、スタートから完了までたった3カ月でした。ここからまた次のフェーズを検討します」と、ジェラーリ氏は語った。

調達担当者たちは、もう手作業でリードタイムを入力する必要がない。予測リードタイムが自動的に表示されるので、それに従って荷受け担当者らへスケジュールを伝えるなど、製造現場との調整ができる。それだけでなく、統計モデルや予測技術を利用してシミュレーションを行うことも可能になったという。市場の状況の変化などを加味して、特定の状況に合わせた見通しが付けられるようになったわけだ。

SAPのデータサイエンティストとしてこの開発に関わったラファエル・パチェコ氏は、データ分析には3つの種類があると説明した。記述的分析(descriptive analytics)、予測分析(predictive analytics)、処方的分析(prescriptive analytics)だ。記述的分析は、データ集約やデータマイニング技術を用いて過去に起こったことへの洞察を深めるもの。予測分析は、統計モデルや予測技術を用いて未来を理解しようとするもの。そして、処方的分析は、最適化やシミュレーションアルゴリズムを利用して、可能な帰結を示唆するものだ。

このアプリケーション開発の例は、それら3つが分ち難く関連していることも思わせる。これまで人間がやっていたことも、大量のデータを処理して分析するしくみが格段のスピードでやってのけるわけだが、このリードタイム予測アプリケーションの開発は、オペレーションの要所は何かをまず特定することが非常に大切な第一歩であることを物語っている。

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