「個」を理解し、「個」にアプローチする。SAPのオムニチャネル・エンゲージメント・ソリューション


顧客の行動を捉え、マーケティングの成果を高めるカスタマージャーニーの最適化。これを実現するためのデータは着々と蓄積されつつありますが、データ統合の不備などでカスタマージャーニー全体での分析環境の整備はなかなか進んでいません。リアルとデジタルを自由に行き来しながら、消費者に最適な情報を届けるためには、チャネルを横断したカスタマーエンゲージメントの向上が重要です。こうしたオムニチャネルを取り巻く課題に応えるため、2015年3月26日に開催された株式会社ダイヤモンド・フリードマン社主催の「リテール・カンファレンス 2015」では、SAPジャパンのCECソリューション事業本部 本部長の堀と、プラットフォーム事業部 シニアソリューションプリンシパルの岩渕の2人が、SAPのオムニチャネル・エンゲージメント・ソリューションを紹介し、個客マーケティングに必要なデータ活用について講演しました。

オムニチャネルコマースからオムニチャネルエンゲージメントへ

photo1現代の顧客の79%はデジタルでつながり、53%がソーシャルメディアを利用し、また59%がネットで情報を入手しています。顧客それぞれのカスタマージャーニーの中で企業が目指すべきことについて、堀は「1つのチャネルに依存することなく、オンライン、オフライン、デジタル、マニュアル含めて、状況に合った一貫性のあるカスタマージャーニーを、あらゆる局面において実現していく必要があります」と語ります。

たとえば、カプセルコーヒーやエスプレッソマシンの輸入販売を手がけるネスレネスプレッソ社は、グローバルレベルで顧客のオンライン体験を高めることに成功した代表的な企業の1つです。同社は、B2BとB2Cのオムニチャネルコマースとグローバルなブランドを支えるために、41カ国、200の直営店で1日10万件の注文を受け付ける一元的なプラットフォームをSAPが提供する「hybris Commerce」で構築し、2010年8月にリリースしました。そして、顧客のニーズを行動ターゲティングで捉え、既存のバックエンドシステム(CRM、物流)との密な連携を実現した結果、品質およびサービスの劇的な向上、複雑なデリバリーオプションの提供といったベネフィットを得ることに成功しています。

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とはいえ、ネスレネスプレッソ社のような成功例はまだ少数で、企業のシステムはインフラ全体としての最適化はまだ道半ばで、データの粒度もばらばらです。こうした環境においてマーケッターの多くは、精度の粗い情報を顧客に一方的に送りつけることに終始してしまっています。チャネルに依存することなくすべての顧客に最適化された体験を提供するためには、新たなマーケティングプラットフォームを構築し、顧客エンゲージメントを段階的に高めていくことが大切です。

そこで堀は、今年2月に新しく提供開始した コンテクスチュアル・マーケティング・プラットフォーム hybris Marketingで何ができるかについてのデモを行い、顧客の行動パターンを分析しながら、Web、モバイルともに商品検索でそれぞれの顧客特性にあった検索結果を表示させることができること、会員サイトでも顧客特性に合わせて最適な広告表示ができることなどを紹介しました。堀は「hybris Marketingは、顧客が未来に何をするか、今何をしているか、過去に何をしたかをリアルタイムに分析して顧客行動を予測し、パーソナライズされた最適なオファリングを支援するソリューションです。データを収集して顧客をプロファイリングするターゲティングエンジンと、購入に関連するシグナルを発見するリマーケティングエンジンの2つを搭載し、最新のマーケティング機能を提供します」と説明します。

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さらにhybris Marketingの活用事例として、オーストラリアの靴メーカーのデッカーズを取り上げ、同社が通販で購入した顧客にすぐに情報を提供する「リマインド」と、23時間後に知らせる「リシェア」、6日後と23時間後に知らせる「プロモート」の3つを組み合わせることで、顧客キャプチャ率を5倍に向上させ、最初の2週間でシステム投資を回収したことを紹介しました。

インメモリーと機械学習がシンプル化するマーケティングデータ活用

photo4続けて、講演者が岩渕に代わり、マーケティングデータの活用とSAPが提供するオムニチャネルオファリングの仕組みについて解説しました。

SAPが担うプラットフォームイノベーションの1つが、インメモリーデータベースのSAP HANAです。SAP HANAはバッチ処理を短縮し、処理頻度を上げることで、鮮度の高い情報提供を実現する超高速なプラットフォームです。従来の技術では数日かかっていた分析をほんの数秒で処理できるため、モバイルを活用する現場の意思決定者に、待ち時間ゼロで情報武装させることが可能です。「SAP HANAはデータベースを超えたプラットフォームであり、顧客の行動を捉えるいくつもの仕掛けが用意されています。従来は夜間バッチで行っていたものがすぐに分析ができるので、素早くアクションに移すことができ、分析が誤りであった場合でも即座に修正が可能です」と岩渕は語ります。

SAPのプラットフォームイノベーションは、機械学習エンジンを利用することで、専門家依存からの解放ももたらします。2000年代前半までのデータマイニングブームでは、分析モデルの精度が担当者のスキルに依存し、モデルの開発にも長い時間が費やされていました。また、データサイエンティストだけでなく、プログラミングスキル、ビジネスノウハウを持ったチーム体制で対応しなければならず、マーケティングROIを高めることも困難でした。さらに、データマイニングを採用する企業では、十分なデータ量が確保できない、モデルのメンテナンスが属人化して継続性が維持できない、ビッグデータに対応できないといった課題を常に抱えていました。

こうした課題を解決するソリューションとして、SAPはデータマイニングツールSAP InfiniteInsightを提供しています。SAP InfiniteInsightは、2013年に買収したKXENの技術を利用したツールで、世界初の商用の機械学習エンジンを搭載し、機械学習を駆使した分析の自動化を通じて、ビッグデータの分析を支援します。

「SAP InfiniteInsightでは、データマイングプロセスの手動設定はほとんど必要なく、データの準備作業もモデルの構築・検証作業もすべて自動化されているので、従来なら約6週間かかっていた分析をわずか数時間~1日で実行することができます」(岩渕)

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確実に成果を挙げている機械学習エンジンの活用企業

実際、機械学習エンジンにより業務変革を成し遂げた企業も現れています。「Tポイント」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブでは、Tポイントのデータベース分析にSAP InfiniteInsightを活用し、データアナリストの負荷を削減しました。大手通販会社のディノス・セシールも、400万人の顧客の購買確率を予測しながらカタログ送付の対象者を絞り込み、効果的なセールスプロモーションの実現に成功しています。このほか、機械学習でモデリングしたうえで、キャンペーンのオファリングを自動化して効率を飛躍的に高めたオンライン通販企業もあります。

参考記事:
【日経ビジネスオンライン】Tポイントの巨大な顧客基盤から“予測”するビジネスチャンス。カルチュア・コンビニエンス・クラブが語るビッグデータ活用
http://special.nikkeibp.co.jp/as/201407/sap_ccc/
SAP InfiniteInsightの導入により、売上の予測が容易になったディノス・セシール
https://www.youtube.com/watch?v=v5Z-6iv1Noc

海外でも機械学習エンジンの活用事例は多く、ジョージア州でケーブルテレビやブロードバンドサービスを提供しているCox Communications社では、顧客獲得と解約防止、カスタマイズされたレコメンデーションの実施を目指してSAP InfiniteInsightを導入。セグメンテーション、分類、回帰分析、データ集約を含む予測分析を実施した結果、世帯当たりの販売プロダクト数を14%上昇させ、顧客解約率を28%減少させました。また、28地域600万の顧客に対してより早く、より正確なパーソナライズされたオファーを実施するための予測モデルの構築時間を従来比で80%減少させたほか、本社アナリストのスループット率を42倍に向上させています。

参考記事:
「リアルタイム化」と「プレディクティブ(予測)分析」は、SAP HANAの活用で得られるメリットを具体的に表現する際の重要なキーワード
https://www.sapjp.com/blog/archives/7048

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こうした事例はBtoCモデルにも見られ、アメリカの大統領選挙でも、オバマ陣営が有権者分析にSAP InfiniteInsightを活用し、支持層と非支持層のハブとなる層を発見して、最適なコンタクトチャネルからアプローチすることで大勝利に導きました。「ネットワークを分析してインフルエンスを探すためには、顧客に個別に呼びかけ、人の好みや嗜好を分析し、個人に応じたメッセージを発信するといったPDCAサイクルを回していくことが重要です。機械学習を利用すればそれが何度も実行できるので、失敗を恐れることがなくなります」と岩渕は語ります。

日本国内でも非構造化データを利用した感情分析の事例があります。SAPは、コールセンターに寄せられる音声データや通話のパターンを認識して、機械学習によって顧客の意見を「クレーム」と「感謝」に切り分け、その場で顧客に対応する仕組みの開発にパートナー企業とともに取り組んでいます。その中では、SAP InfiniteInsightを用いて苦情と非苦情をモデリングした結果、85%の精度で予測が可能であり、予測の信頼度が97%を超えることが確認されています。

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こうした実績を受けて、岩渕は「多くのデータを投入することで見えてくるものがあります。そうなるとビジネス側でも活用したいという議論がわき起こり、データを見ながら会話をしたり、企画を立てたりすることができるようになるでしょう。SAPではソリューションの提案だけでなく、コマースエンジンも合わせてトータルな提案ができます。課題や問題をお持ちのお客様はぜひお声かけください」と呼びかけました。

プラットフォームイノベーションによるマーケティングデータ活用

最後に再び掘にバトンが戻り、マーケティングデータの活用とソリューションのランドスケープについてご紹介しました。現在、企業はマーケティングとシステムで担当が分かれていることが多く、SIerもそれに合わせてソリューションを提案するアプローチが大半ですが、オムニチャネルエンゲージメントを実現するためにはITとビジネスの融合が欠かせません。SAPではこれらを網羅的に提供するソリューションを持ち、なかでもコマース、マーケティング、サービス、セールスの4つの特性に合ったソリューションラインを用意しています。

「4つのソリューションをすべて実現しようとすると大変ですが、関心が高いところをつないで顧客単位のシステムを作る、変化するシステムに合わせて横の機能を追加したり、上下に拡大したりしながら、システム自体を増幅できるようなフレキシビリティを持つことが、システムアーキテクチャの正しいあり方です。SAPとしては、4つのアプローチによるカスタマージャーニーのデザインで顧客エンゲージメントを高め、プライオリティに合わせて提案するのがミッションだと考えています」(堀)

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最後に堀は全体を総括するコンセプトビデオを見せながら、「SAPでは、今後もお客様がチャネルやデバイスに依存せず、状況に合った、一貫性のある、関連性の高い体験の提供ができるよう支援していきます」と語り、講演を締めくくりました。

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