CFOパネルディスカッション 「超一流と三流がCFO人材を育てる」


IMG_6506本連載では、2015年3月26日、日本CFO協会の主催により開催された「CFO Executive Forum」の内容を紹介しています。最終回は、「日本企業における戦略的パートナーとしてのCFOの役割と課題」と題したパネルディスカッションです。昨今、企業活動におけるCFOの存在価値が高まってきていますが、日本企業には、そうしたニーズの高まりに応えられる人材が限られていると言われています。ではこれからの日本企業に必要なCFOの役割とは、またCFOの課題とは何か、について有識者の方々に議論いただききました。

数字を経営に生かし企業価値向上を図る

パネルディスカッションの冒頭では、中澤氏が日本経済新聞に掲載されたCFO(最高財務責任者)に関する2本の記事を紹介しました。その記事の中から「日本企業は工場の生産性にはこだわってきたが、資本の生産性を高めるべきCFOを育成してこなかった」(一橋大学 伊藤邦雄教授)、「社外取締役の適任者は、社長経験者だけでなくCFO経験者から探す手もある」(東京証券取引所 清田瞭社長)という2つのコメントを抜粋し、日本企業の中でいま、CFOの重要性が高まっていると結論付けられています。

欧米のグローバル企業で活躍しているようなCFO人材は、なぜ日本企業には少ないのでしょうか。この疑問に対し昆氏は「経営者の意識を持っているCFOが少ないのが原因」と指摘します。CFOの最大の役割は、社長が経営を全うするための手助けを行うこと。そのためにはCFOにも経営者の意識が不可欠というわけです。経営企画室の業務や経理、財務などをすべて掌握する必要があり、そのための人間としての影響力を高めることもCFOとしての本来の役目を遂行するための下地になると昆氏は話しました。

また昆氏はCFOを語る上でITの重要性も見逃せないといいます。昆氏が在籍するスリーエムでは、IT部門がCFOの下部組織として組み込まれています。数字を経営に生かし企業価値を向上させるためには、情報システムがCFOの下にあった方が効率的というのが理由です。

たとえば、SAPの次世代会計ソリューションSAP Simple Finance は、予算管理と財務分析、会計/決算業務管理、グループ資金管理/財務リスク管理、全社リスク/コンプライアンス管理などCFOがカバーする幅広い業務領域を1つのプラットフォーム上で実現します。こういったツールの必要性を理解し、導入判断を行うのは、IT部門よりもむしろCFOや直下の経理・財務組織なのです。

参考記事:
会計業務をグローバルにシンプル化する~次世代会計基盤SAP Simple Finance
https://www.sapjp.com/blog/archives/9329

経営戦略の立案からリスクマネジメントまで

SAP Simple Financeの開発に携わったステファン・カールは、「SAP Simple FinanceはSAPにとっても新しい試みで、イノベーティブであるか、アイデアはパワフルであるか、このシステムによって業務に改革をもたらすか――。それを追求した結果がSAP Simple Financeだった」と言います。世界各国でワークショップを開催し、そこにはさまざまな企業や事業部門の人々が訪れ、どうすればこの新しいテクノロジーを導入できるか、どうプロセスを変えていけるかということを一緒に考えたそうです。

CFO業務におけるITの重要性は松田氏からも意見が出ました。松田氏は、かつてコンサルティングファームに在籍していた時、グローバルM&Aを成功させた世界のCFO 14人に話を聞いたインタビュー集を出版されています。その14人がCFOの役割として口をそろえたのが次の3つだったそうです。

1. ストラテジスト
経営戦略を考えるべき立場としてのストラテジストであり、また「どの企業」を「いくらで」買収するか、それによってもたらす効果など、M&Aを実施する上でのストラテジスト。

2. チェンジリーダー
M&AではCFOが前線に立ち、統合の変革者としてその旗を振っていかなければならない。

.リスクマネージャー
企業経営のさまざまなリスクをマネージメントする立場。

これらの立場すべてにおいて、成果を挙げていくためにはITシステムが重要な役割を果たすと松田氏は指摘します。さらにその14人のCFOの多くは、買収した会社の速やかな統合にとって、経営管理で妥協しないことが重要であり、そのために経営管理を行うITシステムやツール類を最大限に有効活用することが重要、と話されたと言います。

ITは経営の意思決定を行うツール

中澤氏は「数字にコミットするのがCFOの役割とはいえ、ITはIT部門に任せるという雰囲気もあるのでは?」と問題提議しました。それに対し昆氏は「確かに日本企業の経理・財務の中には、IT化を拒む抵抗勢力が存在するケースもあるようです」とコメント。ITの目的を現場の効率性向上としか認識せず、経営管理や企業価値向上のためにITを使うという意識が薄いため、「莫大なコストがかかる」と誤解している人が少なくない――。これが抵抗する大きな理由だといいます。「現場の効率を上げるだけではIT化に伴うコストに見合わない。経営の意思決定を行うためのツールとして活用して初めて導入コストがまかなえる」(昆氏)

ITシステムは、有効に使いこなせる人がいなければコストに見合わないのは当然との指摘に対し、カールはこう答えています。

「SAP Simple Financeなら構築自体を非常に簡素化することができ、現場の効率性も飛躍的に向上させることができます。一方で、SAP Simple Financeはクラウド上でも運用できるため、初期投資を抑える選択肢が選べます。優れたユーザーエクスペリエンスで、使いこなすためのハードルも下がってきています。財務だけでなく、さまざまな業務領域のソリューションをすでにクラウド化しているので、それらを統合することによって、新たな価値を得ることもできます」(カール)

超一流と三流がCFO人材を育てる

続いて議論はCFO人材の育成方法に移りました。昆氏はご自身の経験を踏まえ、経営者の意識を持ったCFOになるために、一番鍛えてくれるのは超一流の経営者か、三流の事業責任者と話します。「一般的に有能といわれる経営者の場合、経理・財務がサポートしていることに関して、過去のデータをくれればいい。あとは自分で読んで予測を立てるから、で終わってしまいがち。これでは人は育たない」と昆氏は言います。

ところが超一流の経営者の場合、「自分でわかっていて、わざと数字のことや将来予測をこちらに聞いてきます。これがCFO人材の育成に効果的なのです」(昆氏)。一方、三流の事業責任者は全部丸投げしてくるので、否が応でも人材が育つ、ということなのだそうです。

さまざまな企業で実績を積んできた昆氏ですが、経理・財務畑を一貫して歩んで来られたそうです。そのためもう一度ご自身のキャリアをやり直すとしたら、営業やマーケティングなどを経験して、経理・財務に戻ってきたい。これで見方が大きく変わるはず、と話されていました。

幅広い職務体験が視野を広げる

そして多くのCFOにインタビューする機会の多い松田氏がこう続けられています。「卓越したCFOの方々に、いまのポジションに到達する上でどのような経験が役立ったか聞くと、必ず経理・財務以外の職務体験を挙げます。その経験が自社を違った角度から見たり、競合他社や市場を確認する良い機会になるからであり、経営を司る視点を醸成することができるからです。」(松田氏)

最後に昆氏がこれからのCFOに向けたメッセージを語り、パネルディスカッションは終了しました。

「私が就職したばかりの頃は、とにかく簿記を勉強しろといわれました。しかし簿記のスキルが問われる業務は、もはやシステムがすべて行ってくれます。これから経理・財務部門に入ってくる若者たちは、自分たちの将来やキャリアに不安を覚えるかもしれません。だからこそいま経理・財務のトップやそれに準じるポジションにいる方々が、経営全体を見渡す本来のCFOの役割を全うし、その喜びを伝えることが問われます。CFOや経理・財務は花形職業であるということを、身をもって伝えてほしいと思います」(昆氏)

本連載では、2015年3月26日、日本CFO協会の主催により開催された「CFO Executive Forum」の内容をご紹介してきました。いかがだったでしょうか。SAPは今後も変わらずCFOや経理・財務部門の業務変革という観点から皆様のお役に立てるよう情報発信やさまざまな活動を続けてまいります。より詳しい説明や資料をご希望の方は、ぜひお気軽にSAPジャパンまでお問い合わせください。

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