SAP HANA Cloud Platformでシームレスなアプリケーション拡張を行う

作成者:山澤 雅史 投稿日:2015年6月5日

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SAPジャパンの山澤です。前回の記事ではSAPのPaaSであるSAP HANA Cloud Platformを活用し迅速な開発を実現した事例を紹介しました。今回は初回の記事でも紹介したSAP HANA Cloud Platformの3つの開発パターンである 「新規アプリケーション」 「オンプレミスの拡張アプリケーション」 「クラウドアプリケーションの拡張」におけるアプリケーションの拡張について考察したいと思います。

機能拡張が必要となる要因

アプリケーションが標準で備える機能に対して、追加の機能拡張を行う背景にはさまざまな理由があります。

  • 固有の帳票やレポート形式への対応
  • 利用者に対してより使い勝手のよいインターフェースを提供することによる生産性向上
  • 国や地域における法令やビジネス慣習の違い
  • 顧客独自のビジネスプロセスに必要な機能を補完

一般的なアプリケーションシステムにおいて、すべての顧客要件を標準機能のみで満たすことは困難であるため、何らかの対応を行い利用するケースがほとんどです。

さまざまな個別要件への対応方法

顧客独自の要件への対応方法に関しては、

  • 対象アプリケーションに手を加え、要件への対応を行う
  • 対象アプリケーションが標準で持つ拡張機能を活用する
  • 要件への対応が可能な他アプリケーションとの組み合わせで活用する
  • 要件対応する拡張機能を外部アプリケーションとして開発する

などさまざまな方法が存在します。もちろん要件によっては他にも方法は考えられます

上記それぞれにおいてメリット・デメリットは考えられますが、ここでは上述の4番目の選択肢である外部アプリケーション開発の有効な方法としてSAP HANA Cloud Platformの活用についてご紹介します。

アプリケーション拡張に求められる要件

既存アプリケーションに拡張機能を提供する際の重要な要素として、シームレスな連携による利用者体験があります。利用者にとって拡張機能があたかも、標準機能であるかのように密に連携していることは使い勝手の側面からも大変重要です。

その際に必要な機能として、

  • 既存アプリケーションの認証や認証機能の活用
  • 統一されたインターフェースによるアプリケーションへのアクセス
  • 他システムとのデータ一貫性の保持

があります。

既存アプリケーションの認証や認証機能の活用

既存システムから、拡張機能を使用する場合に新たな認証を求めることは、利用者にとっての手間であると同時に、使い勝手の一貫性をそぐ要因となってしまいます。

SAP HANA Cloud Platformの持つIdentity FederationやSAP Cloud IdentityサービスによるID管理機能や認証機能により、利用者は安全かつシームレスに拡張機能へのアクセスが可能になります。

SAP Cloud Identityサービス

SAP Cloud Identityサービスは、SAPクラウドアプリケーションやオンプレミスアプリケーションのためのIDライフサイクル管理のクラウドソリューションです。認証、シングルサインオン、オンプレミス連携に加え、ID登録やパスワードリセットなどのセルフサービス機能なども提供します。

SAP Cloud Identityサービスの提供するシングルサインオン機能により、利用者は一度のログインで、以降許可されたオンプレミスやクラウドアプリケーションにアクセスすることができます。管理者はクラウドアプリケーションのユーザー管理プロセス構成を一つの中央のエントリーポイントで行うことができます。

Identity Federation

SAP HANA Cloud Platformアプリケーションは、SAML2.0と呼ばれるユーザー認証とシングルサインオンのためのプロトコルを使用します。

SAP HANA Cloud Platformは、このプロトコルにおけるSP(Service Provider)として動作します。これによってSAP HANA Cloud Platformのユーザーは、IdP(Identity Provider)により認証されアプリケーションへのアクセス許可を与えられることになります。IdPはSPにアクセスできるユーザーの情報を自身のデータベースに管理しています。このことにより簡潔で柔軟なソリューションの提供が可能になります。

これらのID管理機能や認証機能を以前の記事で紹介しているSAP Single Sign-onやSAP Identity Managementのオンプレミスソリューションと組み合わせることで、複雑な環境においても統一されたID管理や認証機能を構築することが可能です。

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統一されたインターフェースからアプリケーションへのアクセス

また、既存のアプリケーションを拡張する際の重要な要素として、一貫したユーザーインターフェースと利用者体験があります。SAP HANA Cloud Portalサービスは、標準製品と追加された機能拡張全体において一貫した利用者体験を提供するための主要な機能を持ちます。

SAP HANA Cloud Portal

SAP HANA Cloud Portalは、迅速かつ容易なポータルサイトの構築を支援するSAP HANA Platformベースのクラウドサービスです。

製品付属の共通ウィジェット(ユーザーインターフェースを構成する部品要素)や追加可能な拡張ウィジェットを活用することで優れたユーザー体験を提供し、個別の要件に対応したポータルサイトの構築が行えます。

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他システムとのデータ一貫性保持

拡張アプリケーションを利用する場合、多くのケースにおいて、データはそれぞれのアプリケーションで管理されているため、アプリケーション間のデータ一貫性は最も重要な要素となります。拡張アプリケーションが自身でデータ保持をせずに、随時他システムのデータを呼び出し活用する方法も考えられますが、要件によっては一部のデータをアプリケーションでの利用のために保持することもあります。

SAP HANA Cloud Integrationは、他システムで管理するデータを連携し、データの一貫性を保つ密な統合を可能にします。

SAP HANA Cloud Integration

SAP HANA Cloud Integrationは、SAPのクラウドアプリケーションとオンプレミスやクラウドで動く他のアプリケーションとを、煩雑な連携の作り込み作業とコストなしで、スピーディに統合するクラウドベースのインテグレーションツールです。アプリケーション間における双方向性のプロセス統合とデータ統合をサポートします。

SAP HANA Cloud Integrationで最も重要な機能は、グラフィカルな統合フローとマッピング、集中化したモニタリングと管理環境ならびに、SAPアプリケーションやサードパーティーアプリケーションとのシームレスな統合を支援するための事前定義済みのアダプターです。

統合フローは、送信システムと受信システム間のメッセージフローをグラフィカルに表現し、統合に要求されるすべてのステップを表します。

関連記事:
オンプレミスとクラウドの連携――第3回:クラウド/オンプレミス連携をよりシンプルにする方法

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ここまで紹介したように機能拡張には、多様なレベルでの対応が可能であり、またその手法もさまざまです。SAP HANA Cloud Platformは、機能拡張をシームレスに実現するための基本的な機能やサービスを提供し、個別要件に対応する既存アプリケーションへの拡張を容易に行うことができます。

今回はアプリケーションの拡張についてSAP HANA Cloud Platformの基本的な機能を含め紹介しました。

SAP製品の機能拡張に関して興味を持たれた方は、ぜひSAPが提供する講義コースである openSAPオンライントレーニング(無料)のExtending SAP Products with SAP HANA Cloud Platformもご確認ください。

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