HDDベースの既存DWHの限界を、インメモリーDBで一気に打破したスルグトネフチェガス


スルグトネフチェガス Surgutneftgas は、ロシア屈指の石油・ガス生産会社である。ロシアの石油会社による国内生産量の13%、ガスは25%を占めている。

西シベリアのスルグート市で1993年に創設され、従業員は106,000人、売上は約1.7兆円。ロシアの16地域にまたがって、原油および随伴ガスの探索、採掘から精製、輸送までを手掛けている。

■円滑な資材物流のためのデータ分析

スルグトネフチェガスにとって常に重要な経営課題のひとつとなっているのは「資材の物流」である。

業務領域が原油の掘削、工場の建設、生産、輸送、そしてメンテナンスなど広範囲に及ぶため、同社が必要とする資材の種類はおよそ140,000点に及ぶ。これらの資材を適切な価格・品質で調達し、必要な場所に必要なタイミングで供給することは、円滑なオペレーションの上では必須である。

そしてそのためには14万点の資材にまつわる数千万件ものデータを分析・シミュレートして、最適な解を得る必要がある。

 
なにしろロシアは広い。同社の活動地域はサンクトペテルブグルからヤクーツクまで、約9,000キロに広がっている。原油採掘地は僻地と相場が決まっているが(笑)、シベリアの厳冬期は積雪と凍結で通行できない箇所もある。ひとくちに「資材の円滑な供給」と言っても、それがオオゴトであることは容易に想像がつく。

■HDDベースのDWHの限界

同社は15年以上前からのSAP ERPユーザーであり、SAP BusinessWarehouse(BW)でデータウェアハウス(DWH)を構築していたが、蓄積されたデータ量が莫大になっていた。最大のテーブルには8100万件、最大のキューブには7700万件ものデータがあったという。データのロードには12~15時間もかかり、クエリーをひとつ走らせるごとに15~40分程度かかっていた。

このパフォーマンスでは、定型的なレポートを月末に出力する程度がせいぜいであり、ドリルダウンやシミュレーションなどより非定型な分析には使うことは事実上できなかった。ハードディスク(HDD)ベースのシステムの限界が来ていたということであろう。

14万種類もの資材調達管理を超リアルタイムで実現 – Surgutneftegas社

同社CIO、リナット・ギムラノフ氏は言う。「資材分析は、永年、私達の弱点でした。従来のレポート作成ツールの機能は非常に複雑で、しかも我々は当社独自の特殊機能を多く付け加えていました。したがってレポート項目を少し変えるだけでも大規模な投資が必要でした」

「SAP R/3 LIS(ロジスティクス情報システム)によって提供される情報を有効活用するには、プラント、倉庫、収益価値、相手先、勘定費目、使途などごとにデータを分類する必要がありますが、BWはこれに2時間かかり、さらにR/3からBWへのETL(抽出、変換、ロード)プロセスはその5倍かかりました」

「したがってデータを瞬時に更新することは不可能であり、また複数のレポートを同時に処理することもできませんでした。さらに残念ながら、資材レポートはある程度サマリーされてしまっており、明細データを持っていませんでした」

同社の掘削現場

■インメモリーDBへのスイッチ

2010年のある日、ギムラノフ氏は、インメモリー技術に関するSAPの共同創業者ハッソ・プラットナーの記事を読み、この新技術はスルグトネフチェガスが直面しているすべての問題を解決するのに役立つだろうとすぐに気づく。SAP HANAはまだランプアップ(限定出荷)段階にあったが、同氏はインメモリー技術を導入することを決定した。

スルグトネフチェガスのIT部門は、保守的な石油業界の同業他社と異なり、イノベーティブなアプローチをとる。同社は、SAPとの共同開発を行う4人の強力なITチームを組成、SAPの本社があるドイツのワルドルフへ派遣。両社のチームは共同で働き、2011年10月には新システム「SAP BW powered by SAP HANA」を稼働させた。

SAP HANAへの切り替えの利点は、最初から明らかであった。ギムラノフ氏は言う。

「まず、レポーティングが大幅に高速になりました。過去、40分かかっていた標準レポートが、SAP HANAでは6~8秒です。しかもこの6~8秒の大部分は、計算処理ではなく、数百ページものレポートをビジュアル化するためにかかっている時間でした。つまり計算処理自体はもっと速いので、ユーザーは大量のデータをリアルタイムに分析し、資材や倉庫の順にデータを並べ替えることもできます。またGoogleの検索エンジンのように、求める資材の最初の3文字を入力するだけでデータを取り出せるようになりました」

「もう一点、SAP HANAによって、当社のマネージメントは、非常に強力な分析能力を持つことが出来るようになりました。大量のデータを、必要な深さ、多次元で、柔軟性を持って分析できる能力は、大きな武器になります」

「インメモリーコンピューティングの効果は目に見えます。しかも、迅速な投資回収が約束されています」

分析画面イメージ

 

■インメモリーDBによる、既存アプリの高速化

スルグトネフチェガス社のこのストーリーは、実はSAP HANAの周りでは珍しい話ではない。

SAP BWはワールドワイドで13,000社に利用されているDWHであり、そのエンジンを従来のHDDベースのRDBからインメモリーのSAP HANAに入れ替えることで、数十倍~数百倍の高速化があっさり実現される、という例は枚挙に暇がないほど出ている。

しかし、インメモリーの利点は、BWによる資材物流の最適化にとどまらない。ギムラノフ氏は言う。

「今後1年半で、たとえばキャッシュマネージメント(資金管理)やセンサー情報からの設備監視(スマートメーターリング)など、当社のあらゆる領域にSAP HANAを導入する予定です。ERP on HANAも検討中です」

「電車はもう駅から出発しかかっています。間に合ううちに、飛び乗ったほうがいい」

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当記事は公開情報をもとに筆者が構成したものであり、スルグトネフチェガス社のレビューを受けたものではありません。

参考リンク:

■14万種類もの資材調達管理を超リアルタイムで実現 – Surgutneftegas社(再掲、YouTube、英語、日本語字幕付き)
http://www.youtube.com/watch?v=4FN_K8y4i1k&lr=1

■SAP HANA Heads to Siberia(SAPブログの記事)
http://en.sap.info/surgutneftegas-sap-r3-logistic-information-system-hana/75858

■SAP HANA® Database for Surgutneftegas(A4x4ページのブローシャ、英語)
http://download.sap.com/download.epd?context=4A9542F80919F6E6E6483BF7E908D08D4A51B4808F278339681F4B979633A23103F18CC55E5CE3490F0E711ACB5384299E0F3EE2F0776878

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