SAP HANAプラットフォームを相互補完し進化する旧Sybase製品の今――SAP ASEとSAP IQ


277267_l_srgb_s_gl読者の皆様、はじめまして。SAPジャパンの高木と申します。今回から主に旧Sybase製品について最新の状況を発信してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。

今年5月にSAP HANAプラットフォームの最先端技術情報をご紹介するイベント「SAP Tech JAM」が開催されました。今回は、そのSAP Tech JAMのセッション「Re-Discover Sybase」でもお伝えした旧Sybase製品の状況をあらためてご紹介します。

SAPのデータマネジメントに対する方針は、①SAP HANAを中核とする、②データを保持・蓄積できるだけでなくデータを処理・活用できる、という2大方針があります。
SAPは従来からSAP Business SuiteやSAP Business Warehouseを提供しており、社内データの管理に利用されてきました。

現在のSAPのデータマネジメントは、IoTやM2Mなどから得られるビックデータを含め、現在のビジネスにおける正確な判断と、将来のビジネス予測に活用することも視野に入れて設計されています。

下のスライドが現在のSAPにおける主なデータベース関連プラットフォーム製品の一覧になります。

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現在も、旧Sybase製品は単独製品として、さらにSAP HANAプラットフォームを相互補完する製品として、計画的に開発とサポートが継続されています。

SAPが注力するプラットフォームはSAP HANAですが、お客様のさまざまなニーズ、用途・ご予算・動作環境などに合わせて最適な製品の選択肢が、現在も引き続き用意されています。
現在は上の図のように、左上から順番に SAP ASE (SAP Adaptive Server Enterprise), SAP ESP (SAP Event Stream Processing), SAP Replication Server, SAP IQ, SAP SQL Anywhere, そして特にSAP Replication Serverと密接な連携を進めているSAP Data Servicesをポートフォリオメンバーとしてご紹介しています。

エクストリームトランザクション性能と信頼性を兼ね備えたRDBMS SAP ASE

SAP ASEは旧Sybaseにおけるフラッグシップ製品であり、トランザクション処理に特化したディスクベースのRDBMSサーバーです。他社製品と比べ少ないハードウェアリソースで性能を出すことができ、システム管理も簡便であるため、平均28%のTCO削減が報告されています。*1

*1 出典:IDC 社のホワイトペーパー「RDBMSの真の所有コストの計算方法とSAP Sybase ASEでの状況:SAP Business Suiteユーザー向けガイド」(発行:2011年12月)

トランザクション処理は、ミリ秒からマイクロ秒へ

たとえば、米国ニューヨークの金融系ユーザーでは、1日に1250万件の証券注文を処理し、SAP ASEのトランザクション数に換算すると、3000万トランザクションに相当していました。現在の注文処理数は3000万件にも達し、1億トランザクション処理が行われています。これは1トランザクションあたり1ミリ秒(1000分の1秒)を切るマイクロ秒(百万分の1秒)台の速度に達しています。 このような高速かつ大量トランザクションを行うことは、エクストリームトランザクション処理(XTP)と呼ばれています。

成長と機能追加が続くSAP ASE

SAPとの統合後もSAP ASEは安定的に実績を伸ばしており、昨年の集計では顧客数は30,000を超えています。特にSAP Business Suiteのデータベースとしての導入数は6,580に達しています。

また、クラウド環境にも対応し、パブリッククラウド(Amazon AWS, Microsoft Azure)での動作確認、 SAP HANA Enterprise Cloudでの導入実績があります。

このSAP ASEユーザーのアプリケーションをSAP HANAプラットフォームの特徴を生かして高速化する製品として、SAP HANA accelerator for SAP ASEという製品がSAP HANA SPS09からリリースされています。

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SAP ASE の導入事例

米国ニューヨークにある大手証券クリアリング・ハウス(精算機関)では、SAP ASEでトランザクション結果を集計し、さまざまな分析レポートを作成されています。システム構成は、トランザクション用SAP ASEサーバーのオフロードのために、別途レポート用のSAP ASEを設置し、トランザクションログをSAP Replication Serverを使って複写しながら、約1800種類の定型集計作業を行っていました。しかし、顧客数と取引量の増加に伴い処理時間が自社で設定したSLAに合致しなくなったため、SAPに相談をいただきました。
集計分析アプリケーションは、2000ライン以上のT-SQLコードであり、これらの書き換えは現実的ではなかったため、分析レポート用サーバーにSAP HANAを導入し、SAP ASEのアプリケーションに変更を行わずに、SAP HANA上で処理を行う構成 – SAP HANA accelerator for SAP ASE をご提案しました。
測定結果として、ASEで従来18分かかっていた集計処理ストアード・プロシージャが、SAP HANAでは112秒と15倍に高速化され、10顧客分の同時実行でも5分15秒で完了することができるようになり、SLAを回復することができました。

尚、このSAP HANA accelerator for SAP ASE のライセンスは、SAP Adaptive Server Platform Editionに含まれており、実質無料となっています。

カラム型アーキテクチャでは世界最大の導入実績を持つ SAP IQ

SAP IQは旧Sybaseでの分析・データウェアハウス用のRDBMSです。

データをカラム型で管理するため、大量のデータ検索も、ディスクへのアクセスを最少に留めることができ、通常のロー(行)ベースRDBMSでの検索と比較すると、10倍から100倍高速な処理が期待できます。
独自のインデックス処理により、実データを圧縮してストレージに保存でき、ハードウェア構成の節約が可能です。
また、マルチプレックスと呼ぶ共有ディスクによるクラスター構成のスケールアウトに対応しており、独立した非定型クエリーを数十名~数百名のユーザーで同時に行うことや、複雑なクエリーを複数のサーバーで分散処理するDQP (Distributed Query Processing)にも対応しています。
製品は1990年後半から出荷されており、20年近くの実績があります。全世界で2200顧客以上、設置数では4500以上であり、世界最大の導入実績を誇ります。

昨年、2014年にギネス世界記録として、世界最大 12.1PBDWHと世界最高速 34.3TB/時でのデータロード性能の認定を受けています。 *2

*2ギネス世界記録 The Largest Data Warehouse
http://www.guinnessworldrecords.com/world-records/largest-data-warehouse

データウェアハウスのゴールは、レポートや分析から最適化、さらに新領域に発展中

SAP IQは、最近のビックデータ分析、特に分析アルゴリズムをユーザーが定義した統計解析関数としてデータベース内に組み込んで実行する In-Database分析機能にいち早く対応しています。

これまでの処理は、①データベースサーバーで対象となるデータを抽出する。②アプリケーションサーバーにデータを転送する。③アプリケーションサーバーで分析プログラムを実行する。という流れでしたが、ビックデータでは、②のデータ転送時間が膨大になり、トータルの処理時間が延長するため、In-Database処理が注目されています。通常①の抽出作業は繰り返し行われる ため、②のデータ転送時間はますます無視できなくなっています。

現在でもこの機能を持つのは、ディスクベースのカラム型データベースではSAP IQが唯一の製品です。

SAP ASEと同様にクラウド環境にも対応し、パブリッククラウド(Amazon AWS, Microsoft Azure)での動作確認を行っており、SAP HANA Enterprise Cloudへの対応が計画されています。

SAP IQの使用事例

ストレージシステム大手である EMCでは、SAP IQを使用したSAP Business WarehouseのNLS(ニアラインストレージシステム)として導入いただきました。これによりSAP Business Warehouseのデータロード時間を最大60%短縮、検索時間が半分になると共に、将来のデータ増加にも対応可能なシステムにアップグレードいただきました。

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SAP IQは、SAP HANAの機能を補完する一面を持つため、SP(サポートパッケージ)は同時期にリリースされます。7月には、SP10のリリースが計画されており、従来必須であった共有ディスク構成の制限を撤廃し、ローカルディスク (Direct Attached Storage)構成によるマルチプレックスがサポートされる予定です。これによりクラウド環境でのSAN設置・構成などのハードルが軽減され、より手軽に高性能SAP IQシステムの配置が可能になります。
また、超並列(MPP: Massive Parallel Processing)構成のSAP IQ環境の構築が新たに可能になるため、IoTやM2Mで収集される莫大なデータをより高速に処理する取り組みも始まります。

いかがでしょうか? 旧Sybase製品が単独製品とSAP HANAプラットフォームとのインテグレーションの両面で進化を続けていることを少しでもご理解いただければ幸いです。

次回は、SAP Replication Server, SAP Event Stream Processorについてご紹介したいと思います。

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