SAP ERPを世界23拠点にグローバルワンインスタンスで導入し、経営品質を向上したエンプラス


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海外展開を進める製造業の中には、拠点単位で独自の業務システムが導入され、個別最適化が進んでいるケースがあります。しかし、それではグループ全体の経営管理情報が見えず、迅速な意思決定を下すことができません。エンジニアリングプラスチックによる精密機構部品の開発、製造を手がける株式会社エンプラスは、こうした課題の解決にいち早く着手。2011年にSAP ERPをグローバルワンインスタンスで導入し、グループ全体での一元的なデータ管理、業務の標準化を推進してきました。システム構築にあたってアドオンの本数を最小限に抑えたことで、海外へのロールアウトも順調に進み、約2年という短期間ですべての拠点への展開を終えています。これにより、グループ全体の経営管理の品質が向上したほか、業務の属人化が解消されたことで海外拠点での人材育成が可能になるなど、さまざまな効果が現れています。

個別最適化が進んでいた海外拠点のオペレーションを標準化

「豊かな社会の発展に貢献すること」を目指し、価値ある製品とサービスを提供し続けるエンプラス。 1962年の創業以来、50年以上にわたって基幹事業であるエンジニアリングプラスチック事業の高精度化・高機能化を進め、半導体機器事業、オプト事業、LED事業へと事業領域を拡大してきました。現在では、中国、韓国、シンガポール、マレーシア、タイなどアジアを中心に、アメリカ、ヨーロッパなど世界でビジネスを展開し、2014年3月期の決算においては海外の売上高比率が70%を超えるなど、海外ビジネスの重要性は年々高まっています。

グローバルビジネスへの的確な対応が求められる中、同社の課題は海外拠点の業務の標準化とシステム統合でした。それまでは海外拠点やグループ会社が独自に導入した基幹システムを利用し、属人的な業務管理を行っていたため、本社から経営管理の指標が見えなかったといいます。取締役兼専務執行役員 経営企画管理本部長の酒井崇氏は「当時はそれぞれの拠点が切磋琢磨することで全社的な競争力が高まると考えていました。しかし、結果的に業務の属人化が進んで本社から各拠点の財務状況が見えなくなり、経営管理上のリスクになるという思いが強くなってきました」と振り返ります。

そこで、当初から海外ビジネスの拡大を見越していた同社は、日本、アジア、アメリカの各拠点を結ぶ共通の業務基盤を確立し、財務会計を中心とした業務の標準化、可視化を図ることにしました。

「当初の目的は特に海外拠点の『悪さの見える化』でした。各国を訪問した時に状況がすぐわかるよう世界各拠点の業務手順を同一のものにする必要がありました。またERP導入に際し、今までの個社別管理から事業部単位で管理するマネジメントスタイルへの変更も決定しました。」(酒井氏)

要件定義の段階から経営が参画し、素早い意思決定で標準化のポリシーを徹底

世界共通のシステム基盤の確立を目指した同社は、複数のERPパッケージの中から、グローバルでの実績が豊富なSAP ERPを採用します。選定の理由を酒井氏は「標準化を目指すなら、SAP ERP以外の選択肢はありませんでした。会社が存続し続ける限り使い続けることを考えると、50年、100年先の使用に耐えるシステムが必要で、それを実現できるベンダーはSAP以外にないという考えにいたりました」と語ります。

SAP ERPのモジュールは、財務管理の強化を最優先としたことから、会計につながる会計・販売モジュールにターゲットを絞り、2009年から導入をスタート。2010年4月に国内システムを稼働させ、2011年7月には国内外の14拠点すべてに対して、計画どおりに展開を終えました。データはすべて国内のデータセンターに集約し、グローバルワンインスタンスで運用しています。アドオンの本数は最終的に120本程度となりましたが、ほとんどが帳票やEDIのインターフェースなど最低限のもので、実質的なアドオンは十数本程度です。プロジェクトのポイントについて酒井氏は次のように説明します。

「導入期間を2年以内と定め、トップダウンによる強い意志を持って進めたことが最大の成功要因です。短期導入を実現するために、トップが要件定義のフェーズからプロジェクトに深く参画し、素早い意思決定で標準化のポリシーを徹底しました。導入当初は、海外のユーザーを中心に使いにくいといった声も聞かれましたが、1年ほどで不満の声もほとんど聞かれなくなりました」

会計・販売モジュールのカットオーバー後には、当初のスコープから除外していた生産管理モジュールを生産拠点に追加導入し、生産管理業務も同様に標準化が図られています。エンプラスのシステム運用における特筆すべきポイントは、会計・販売の導入、生産管理の導入、稼働後のアプリケーション保守の3つを、別々の導入支援パートナーに依頼していることです。通常、同じ導入支援パートナーにすべてを依頼したほうが効率的だと思われがちですが、導入領域や導入フェーズごとに別の導入支援パートナーに依頼するのはリスクの分散というメリットがあります。

「1社への依存は、やはりリスク管理の面で不安が残ります。またパートナー企業によって得意、不得意があるのも事実です。複数に分けることで、各社が当社の業務を知ることになり、意見を求めたり、切り替えを依頼したりすることが可能になります。複数のパートナーを採用できたのも最初から標準機能を守り、アドオンの本数を抑えたからで、余計なコストと時間をかけることなく引き継ぐことができました」(酒井氏)

経営管理情報の可視化による財務業務の透明化

エンプラスではグローバル展開を終えた2011年以降も、新規拠点の設立やM&Aによる子会社の買収に応じて、順次SAP ERPを導入。2015年5月現在、国内5拠点、海外18拠点の合計23拠点でSAP ERPが稼働しています。

「標準化を徹底した結果、小規模な拠点なら2週間で設定作業を終わらせ、1カ月強でシステムを立ち上げることができ、ビジネスの早期スタートが可能です。現在は導入自体もベンダーにすべて外注しているので、当社にかかる負担はありません」(佐薙氏)

一方で、どの拠点からも経営管理情報が見られるようになり、当初の目的としていた財務業務の透明化が実現し、経営品質の向上につながっています。また、会計業務の標準化によって、今期は決算処理の期間を30日から20日に短縮することを目標にしています。

業務の標準化、効率化は生産性の向上にもつながり、SAP ERPの導入を開始した2010年から2014年までで、同社の連結売上高は182億から395億とほぼ倍増しているにもかかわらず、従業員数は約6%増でとどまっています。酒井氏は「システム導入がすべての要因でなく、最初からコスト削減を目指していたわけではありませんが、標準化、自動化が生産性の向上に貢献し、結果的にコスト削減につながったことは確かです」と語ります。

また、業務の属人化の解消により、グローバル人材の育成も可能になりました。同社では現在、会計人材を育成する「グループフィナンシャルオフィス」を設置。各リージョンの有望な人材に決算、経営分析、予算管理などを担当させながらノウハウを蓄積させ、将来的にはリージョン長や本社人材に採用して経営の中枢を担わせることを構想しています。

「経理である程度経験を積んだ人材なら誰にでもチャンスはあります。事業に興味を持ってもらって予算管理まで任せ、リージョン長として活躍してもらうことが目的です。こうしたことが可能になったのも、海外拠点のどこでも同じオペレーションができるからです。現地スタッフにさまざまなキャリアプランを提供することで、ノウハウを身につけた優秀な人材の流出リスクを抑えることが可能になりました」(酒井氏)

勘定科目のグローバル統合を実現し、さらなる標準化を推進

SAP ERPで業務を標準化し、グループ全体への展開を終えたエンプラスでは次のステップとして、連結会計システムの機能強化による決算情報の効率的な収集と連結会計処理を実現していく考えです。さらに、勘定科目を各拠点で共通化し、標準化の領域を拡大する作業にも着手しています。

「勘定科目のグローバル統合は、SAP ERPの導入を検討した2009年当初から課題となっていました。当時は短期導入を最優先としたことや、導入パートナーにノウハウが不足したことなどもあり、あえて見送ってきた経緯があります。現在は各拠点の勘定科目コードを変換して処理していますが、勘定科目を統一すれば、どの拠点でも同じコードで同じ作業ができるようになることから、さらなる標準化が進み、本来の目的が達成できると見込んでいます。また、ERPを導入したことでどの拠点でも同じオペレーションができるようになり、グローバルでの人材適正配置を考えることが現実的になりました。現在は国をまたいだ人材の流動化をより高めるために、人事制度の再設計に取り組んでいます。」(酒井氏)

経営トップの強力なリーダーシップにより、わずか2年でグローバルワンインスタンスによるSAP ERPのグローバル展開を終えた同社の事例は、迅速なグローバル経営を目指すすべての企業の指針となるに違いありません。

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