SAP HANA Cloud Platformで実現する“ゲーミフィケーション”
作成者:山澤 雅史 投稿日:2015年6月29日
SAPジャパンの山澤です。SAP HANA Cloud Platformの紹介を3回にわたってお送りしてきましたが、いかがでしょうか?
なんとなく理解はできたけど、まだまだ難しいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。もしくは既にご興味をもって、トライアル環境を試してくださった方もいらっしゃるかもしれません。SAP HANA Cloud Platformの導入に関してご質問などありましたらぜひチャットやWebでもお問い合わせいただければと思います。
さて、今回はもう少しSAP HANA Cloud Platformを身近に感じられそうな内容の紹介をしてみたいと思います。SAP HANA Cloud Platformには「ゲーミフィケーション」というサービスがあります(注:執筆時点ではベータ版のみ)。
ゲーミフィケーションは、ゲーム要素を取り込み、参加者の興味や参加意欲を高めたりするコンセプトです。定義は使い方によってさまざまですが、代表的な要素は「課題」「報酬」「交流」です。Web閲覧者が、見るだけでなく、Web上にある「課題」に挑戦し、点数やバッジ獲得などの「報酬」を得て、アバターなどを利用し「交流」することで、単なる“閲覧者”ではなく、“ゲーム参加者”として参加意欲を高める、といった感じです。
SCNにおけるゲーミフィケーションの実装
SAPのコミュニティーであるSCN(SAP Community Network)はこのゲーミフィケーションのコンセプトを取り込んでいます。SCN内に設けられた製品や業界などさまざまな軸で情報や質問を投稿するためのForumにおいて、投稿された質問への回答者やブログなどの投稿者へポイントを付与し、取得ポイントに応じたランクの設定なども行い、参加者の意欲向上を図っています。また、投稿数だけでなく、その内容に関しても定期的な確認・改善を行うことで、SCNにおける活動の活性化を行っています。(注:SCNはSAP HANA Cloud Platform上で構築・運営されているわけではありません)
ゲーミフィケーションサービス
SAP HANA Cloud Platformの提供するゲーミフィケーションサービスは、このゲーミフィケーションのコンセプトを取り込んだアプリケーション構築を容易に行うことを目的としたものです。このサービスは、ゲーミフィケーションコンセプトの確立、分析のためのオンラインの開発及び管理環境(ゲーミフィケーションワークベンチ)を含んでいます。
ゲーミフィケーションにおけるルール管理機能は、先進的なゲーミフィケーションコンセプトや時間的制約、プレーヤー間の複雑な役割の設定もサポートします。また標準機能として組み込まれた分析モジュールは、プレーヤーのふるまいを分析することで、ゲームコンセプトの継続的な改善を可能にします。
このゲーミフィケーションサービスは、以下の技術的な特徴を備えています。
- ゲームメカニズムとルールをモデリングするWebベースのIDE(ゲーミフィケーション ワークベンチ)
- 時間的な制約や共同作業を含む精巧なゲーミフィケーションコンセプト確立のためのエンジン
- ゲームコンセプトの向上のために組み込まれた分析モジュール
- 容易な連携のためのWeb APIウィジェットをベースとしたSAPUI5統合
- SAP Cloud IdentityをベースとしたSSO(Single Sign-on)のサポート
- パフォーマンスと拡張性
ゲーミフィケーションの開発サイクル
ゲーミフィケーションの開発サイクルは、一般的に大きく3つのプロセスを必要とします。
- ゲーミフィケーションコンセプト(概念)の作成:
ユーザー(プレーヤー)が特定の仕事をすることを奨励するのに役立つ(ゲーム)メカニズムを作成する。 - ゲーミフィケーションコンセプトの実現:
コンセプトをゲーミフィケーションサービスにおいて使われる要素にマップする。 - 対象アプリケーションでの統合:
アプリケーションとゲーミフィケーションサービスとをAPIで技術的に統合する。
また、利用状況に応じたゲーミフィケーションコンセプトへの影響を継続的にモニターし、ユーザーの状況を把握することは大変重要です。コンセプトが想定したユーザーグループの動機付けとなっているか、もしくは関心度を分析し、ゲーミフィケーションの開発サイクルを回しながら継続的に改善を進めていきます。
コールセンターアプリのサンプル
ではゲーミフィケーションの例として提供されているコールセンターアプリのサンプルを確認してみましょう。このアプリケーションは、コールセンターの従業員によって典型的に使われる「ヘルプデスク」ソフトウェアです。何らかの問題を抱える顧客は、解決を要求するためにチケットを作成します。コールセンターの従業員は、これらの顧客から届くチケットを処理することができます。
下記のコールセンターアプリのサンプル画面のとおり、コールセンターの従業員がログインすると、未処理チケットの概要が左側に表示されます。チケットを選択し対応を行います。コールセンターの従業員は、チケットへの対応状況に応じてポイントが付与され、それをランキングとして表示することで競争原理を働かせることもできます。
このサンプルはコールセンターの従業員がチケットの処理や困難なチケットの対応を素早く行うためのモチベーションを上げるためにゲーミフィケーション要素を加えたものです。イメージがつかめたでしょうか?
このサンプルはSAP HANA Cloud Platformで提供されており、GitHubではソースコードのサンプルも提供されていますので、ご興味のある方は実際にお試しいただくことが可能です。
TwoGoにおけるゲーミフィケーションの実装例
最後にこのゲーミフィケーションを実装しているSAPのライドシェアサービス「TwoGo by SAP」を紹介します。これは、通勤時のライドシェアを促し、環境への配慮を進めるためにSAPが社内向けに開発したものですが、現在では他社でも導入が進んでいるものです。このアプリケーションでは、所有車に他者を同乗させた距離に応じてポイントを得るものですが、同時にそのことがエコに貢献するという評価を得られるというものです。
冒頭に紹介したようにゲーミフィケーションはユーザーを巻き込むためのアイデアを実現する方法として注目されています。SAP HANA Cloud Platformの提供するゲーミフィケーションサービスを活用することで新たなアイデアを容易に実装することが可能です。
ぜひ、ゲーミフィケーションサービスを活用したあらたな世界をSAP HANA Cloud Platformで実現してみてください。
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