SAP Simple Finance 2.0におけるイノベーションーー第2回:新しく生まれ変わった資金管理


第1回では、財務会計/管理会計機能を担うSAP Accounting powered by SAP HANA のイノベーションについてご紹介しました。今回はSAP Simple Financeの中で、グループ資金管理機能を担うSAP Cash Management powered by SAP HANAについてご紹介したいと思います。

生まれ変わった資金管理および流動性管理

277294_l_srgb_s_glこのSAP Cash Management powered by SAP HANAですが、SAP Simple Financeの中で、グループあるいは単体の資金管理および流動性管理を行う機能として新しく開発されました。SAP ERPには、以前から資金管理および流動性管理を行うアプリケーションはありましたが、拡張性や柔軟性といった観点では、課題がありました。今回SAP Simple Financeをリリースするにあたり、新しくSAP Cash Management powered by SAP HANAというアプリケーションをリリースし、約20年ぶりに資金管理および流動性管理の機能を一新しました。SAP Cash Management powered by SAP HANAは、ユーザーが使いやすく、拡張性および柔軟性を備えた資金管理機能を提供するとともに、新たに銀行口座管理、資金計画機能などの機能が追加され、サポートできる財務業務領域が大幅に拡大しています。*1

*1 SAP Simple Financeを利用する場合は、技術的に以前のSAP ERP内にあった資金管理および流動性予測のアプリケーションは使用できず、SAP Cash Management powered by SAP HANAの利用が必要です。

SAP HANAで目指す統合トレジャリープラットフォーム

このSAP Cash Management powered by SAP HANAをSAP Simple Finance内の資金管理および流動性管理の機能としてリリースするにあたり、SAPが目指したのは、SAP HANAを共通プラットフォームとして、お客様に統合トレジャリープラットフォームをご提供することです。以前からある財務業務領域のアプリケーション(財務取引管理/リスク分析、インハウスキャッシュ、SAP Bank Communication Managementなど)を、同じSAP HANA上で利用して、SAP Cash Management powered by SAP HANAと連携させ、さらにERPや他の外部システムからの資金関連データも取り込んで、企業がグループ全体あるいは企業単体の資金管理に必要なデータを統合して管理していきます。そして、財務業務に必要なデータを可視化し、財務領域において、企業がビジネス上より良い判断ができるデータをオンデマンドで提供できる統合トレジャリープラットフォームを目指しています。

SAP Cash Management powered by SAP HANAの主な機能

それでは、一新されたSAP Cash Management powered by SAP HANAについて、以下に挙げる3つの主な機能を、ご紹介します。

  1. SAP Fioriで行う日次資金繰りと中期的流動性予測
  2. 新しい銀行口座管理
  3. ERPに組み込まれた資金計画

SAP Fioriで行う日次資金繰りと中期的流動性予測

以前の資金管理および流動性予測では、日次資金繰り業務のために、ERP上でオンラインレポートが提供されていましたが、SAP Cash Management powered by SAP HANAでは、資金ポジションを分析するSAP Fiori アプリと、流動性予測を行うSmart Business アプリが提供されています。いずれもSAP Fioriのラウンチパッドから表示でき、SAP GUIは必要ありません。一目でユーザーが注意すべき財務数値がKPIとして表示され、そこからタイルをクリックするだけで、すぐ原因を分析していけます。

Fiori ラウンチパッドに表示された財務KPI(

以前の硬直的な資金管理・流動性予測のレポートをご存じの方は、これだけでもだいぶ変わったなと感じていただけるのではないでしょうか?

下の画面は、SAP Cash Management powered by SAP HANAの資金ポジションレポートですが、SAP HANAの機能を生かして、画面上でさまざまな切り口でレポートの表示を変え、オンデマンド分析していくことができます。また、以前はできなかった傾向値のグラフ表示など、ユーザーが直観的に理解しやすいレポートになっています。

日次資金繰り

また流動性予測レポートも、以前よりもとてもわかりやすいレポートになっており、レポート上から、入出金伝票レベルまでドリルダウンして、すぐ原因分析が追究できる利便性は、以前と変わりありません。

流動性管理

新しい銀行口座管理

さて、次にご紹介するのは銀行口座管理です。これは以前の資金管理アプリケーションにはなく、SAP Cash Management powered by SAP HANAからできたまったく新しい機能です。

これまでは、ERP上で使用する銀行口座のマスターを登録し、業務上必要最低限の情報を登録するだけでした。企業が本当に必要な銀行口座関連情報の一覧性や開設・変更・閉鎖といった口座関連業務プロセスのガバナンスについては、運用に頼るところが大きく、標準機能もあまり充実していませんでした。SAP Cash Management powered by SAP HANAでは、銀行口座の開設、変更、閉鎖および年次レビューといった企業が行う一連の業務プロセスをサポートする承認ワークフローを用意し、さらにSAP Bank Communication Managementと連携して、電子署名による支払処理におけるガバナンスへの対応を行っています。

また、管理しなければならない銀行口座が多数ある企業にとって、ERP上で銀行口座マスターの管理を行うのは大変でした。SAP Cash Management powered by SAP HANAでは、登録された銀行口座マスターに業務上の関連ドキュメントを添付し、システム上でも紐づけて管理するとともに、沢山の口座をさまざまな切り口でグルーピングし、実際の業務と紐づけて、階層で一覧化して管理していきます。これまでシステム外でしか管理できなかった口座管理業務をシステム化することで、ユーザーはこれまでの業務を省力化することができます。

銀行口座管理

ERPに組み込まれた資金計画

以前のERPの資金管理とSAP Cash Management powered by SAP HANAの一番大きな違いは、このERPに組み込まれた資金計画機能かもしれません。資金計画というと、これまでは技術的な制約のため、ERP外のSAP Business WarehouseやSAP Business Planning and Consolidationなどの別システムで実施することがほとんどでした。SAP Cash Management powered by SAP HANAからは、Integrated Business Planning for finance*2の機能と連携し、ERP上で詳細な資金科目単位の資金計画を行うことができるようになりました。資金の実績値と計画値を両方持つことで、資金予実比較分析も、リアルタイムにERP上で行うことができます。これまでは、一度、ERP外へデータを抽出してから別システムで分析が必要だったため、ユーザーはそのタイムラグを考慮して、業務を進める必要がありました。SAP Cash Management powered by SAP HANAでは、リアルタイムにERP上で予実分析ができるので、ユーザーはより迅速なビジネス上の判断をすることができます。まさに、SAP HANAならではの、OLAPとOLTPの統合を実現している機能と言えます。

*2 Integrated Business Planning for FinanceはSAP Simple Financeを構成するERPに統合された財務計画機能です。

資金予実比較レポート

2つの実装シナリオ

さて、これまでSAP Cash Management powered by SAP HANAの主な機能をご紹介してきました。SAP Cash Management powered by SAP HANAが、財務業務を行う上で、財務部のユーザーにとっては欠かすことのできない重要なアプリケーションであることがお分かりいただけたと思います。それでは最後に、実際にSAP Cash Management powered by SAP HANAを利用するためには、どのような実装シナリオがあるのか、システム構築の観点から2つの実装シナリオをご紹介したいと思います。

サイドバイサイドシナリオ

一つ目は、現行のERPシステムはそのままにしておき、SAP Cash Management powered by SAP HANAの新しいシステムを別に構築して、資金関連のデータのみ連携させる方法です。この方法では、新しいシステム上にSAP Cash Management powered by SAP HANAを中心とした統合トレジャリープラットフォームを構築し、財務業務を行います。さらに、その場合、二つのステップが考えられます。第一ステップとして、新しいシステム上でSAP Cash Management powered by SAP HANAだけ利用すれば、資金情報の詳細分析が可能となり、さらに第二ステップとしてSAP Bank Communication Management, インハウスキャッシュ、財務取引管理などの財務関連アプリケーションをSAP Cash Management powered by SAP HANAと合わせて利用すれば、資金だけでなく、財務業務領域のプロセス全体を統合して管理することができます。このサイドバイサイドの方法は、企業グループ内で複数のERPシステムが存在する場合などに、個別のシステムをSAP Simple Financeへ移行させなくても、早期にSAP Cash Management powered by SAP HANAのメリットを享受できるという点でとても優れています。

完全統合シナリオ

二つ目はSAP HANA上で、ERPシステムを構築し、そこにSAP Cash Management powered by SAP HANAを含んだSAP Simple Financeを導入する方法です。この方法だと、SAP Cash Management powered by SAP HANAは他のERPシステムのプロセスと完全に統合した形で、資金管理および流動性予測を行うことができます。この方法は新規導入や現行のERPシステムからSAP Simple Financeへ完全に移行する際に利用できる方法で、一番シンプルな方法です。

以上、SAP Simple Financeで新しく生まれ変わった資金管理および流動性管理機能であるSAP Cash Management powered by SAP HANAについてご紹介いたしました。

次回は、SAP Simple Financeを構成する、ERPと統合された財務計画機能であるIntegrated Business Planning for Financeの特長について、ご紹介したいと思います。

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