SAP Simple Finance 2.0におけるイノベーション――第3回:SAP Integrated Business Planning for Financeによる統合財務計画
作成者:箭野 みゆき 投稿日:2015年8月4日
SAP箭野です。さて、SAP Simple Finance 2.0におけるイノベーションについて、第1回はシンプル化された財務会計/管理会計機能、第2回は新しく生まれ変わった資金管理のご紹介をしてきました。今回は、第3回として、SAP Simple Financeを構成するアプリケーションのひとつであり、新しい統合財務計画機能を提供するSAP Integrated Business Planning for Finance(下図、赤枠部分)について、ご紹介します。
SAP Simple Financeによる計画系・情報系の統合
SAP Integrated Business Planning for finance*1(以降、SAP IBP for finance)は、SAP Business Planning and Consolidationをベースとした計画機能がSAP Simple Finance に統合された、新しい統合財務計画および予測のためソリューションです。SAP Simple Financeの財務会計/管理会計機能であるSAP Accounting powered by SAP HANAにおいては、マスターデータやトランザクションデータがインメモリープラットフォームであるSAP HANAに保持されています。SAP IBP for financeは、その保持されたマスターデータやトランザクションデータを共有し、財務計画や予測シミュレーションに利用することで、リアルタイムに統合された予算実績管理を実現します。SAP IBP for financeは、ゼロベースから開発した財務計画機能ではなく、SAPがこれまでEPM(Enterprise Performance Management)の領域で培ってきたSAP Business Planning and ConsolidationやSAP BWのノウハウや技術を継承しています。
*1 SAP IBP for Financeを利用するためには、SAP Accounting powered by SAP HANAの利用が必須です。
SAP Integrated Business Planning for Financeの特長
それでは、次に、SAP IBP for financeの下の3つの主要な特長について、ご紹介したいと思います。
- SAP Simple Financeのマスターデータと実績データを直接利用
- 財務計画の統合
- Excelによる効率的な入力と業務プロセスの標準化および可視化
SAP Simple Financeのマスターデータと実績データを直接利用
こちらの特長については、冒頭の「SAP Simple Financeによる計画系・情報系の統合」でも少し触れていますが、もう少し詳細をご紹介します。
SAP IBP for financeはSAP Simple FinanceのEmbedded BW*2という技術を利用して作られており、SAP Accounting powered by SAP HANAと同じインスタンス内で動作するアプリケーションです。そのため、ユーザーはSAP HANAを共通のプラットフォームとして、SAP Accounting powered by SAP HANAで利用するマスターデータや実績データをSAP IBP for financeでそのまま利用し、同一システム内で、リアルタイムな予算実績管理を行うことができます。
これまでは、SAP BWやSAP BPCにERPのマスターデータや実績データを連携し、財務計画や予測シミュレーションを行うことが一般的でした。通常、この連携はリアルタイムではなく、ユーザーはデータ連携が完了するのを待たないと、予測、シミュレーションなどのアクションを起こすことができませんでした。また、データを複製することになるので、両システム上にデータの二重持ちをしなければならず、データの不整合を招く原因にもなりました。しかし、SAP IBP for financeの場合は、同一システム内で共通のデータを利用するので、ユーザーはデータ連携のタイムラグや不整合をまったく気にする必要がありません。また、システムを一つに統合することで、システムランドスケープのシンプル化が実現できるのも、システム管理面からみた、とても大きなメリットです。
*2 Embedded BWとは、SAP NetWeaver7.0以降、ABAPベースシステム内に自動的に組み込まれたBWテクノロジーです。
財務計画の統合
さて、二つ目の特長は「財務計画の統合」です。
通常、企業内の計画策定/予算編成は、組織、コストなど、さまざまな要素・観点から、それぞれの担当者が個別に計画作成し、それぞれの計画を最終的に統合して、全社またはグループの計画を最終的に決定します。
この「財務計画の統合」を迅速に行うということが、これまでの計画系ソリューションでは大変でした。個別要素ごとに計画策定を行っていく過程で、統合結果をリアルタイムには確認できない、並行作業ができない、データの整合性に常に気を配らなければならない、などの課題があり、担当者にとっては、大変頭の痛い作業でした。
SAP IBP for financeは、それらの課題を解決し、「財務計画の統合」を実現できるソリューションです。
SAP IBP for financeにおいては、収益、売上原価、間接費、経費などの計画を、各部門担当者が同時並行的に登録していくことができます。そして、これらの計画データはリアルタイムに集計され、SAP HANA上に整合性をもって管理されます。そして、各種の個別計画値の変更は、リアルタイムに連動するため、ユーザーはいつでも最新の整合性のとれたデータを参照することができます。
また、この「財務計画の統合」をすぐにユーザーが実践できるように、SAP IBP for financeには、あらかじめ原価センター計画、内部指図書計画、プロジェクト計画などのテンプレート(コンテンツ)が用意されています。
Excelによる効率的な入力と業務プロセスの標準化および可視化
最後にご紹介する特長は、ユーザーの計画策定プロセスをサポートする機能です。
SAP IBP for financeでは、ユーザーに親しみのあるExcelを計画値の入力画面として採用しており、通常のExcelと同様、計算式や関数はもちろん、コメントによる定性情報の入力も行えます。
また、計画策定の際に、計画策定プロセスをスムーズに進め、作業ミスを削減するためには、計画策定プロセスを標準化し、各担当者の個別作業を管理することが必須です。その点、SAP IBP for financeにおいては、ビジネスプロセスフロー機能を利用することにより、ユーザーは計画策定プロセスの標準化と可視化を行うことができます。電話やメールでいちいち担当者に確認をしなくても、計画策定プロセスがどこまで進んでいるのか、管理者は一目で理解し、必要なアクションをとることができるのです。
より詳細な計画策定プロセスの様子を知りたい方は、ぜひ、こちらのデモをご覧ください。
以上、SAP IBP for financeの特長をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
最後になりますが、SAP IBP for financeはSAP Simple Financeの一部を構成し、ERPにEPMの技術が統合された業界初の統合財務計画ソリューションです。SAP Accounting powered by SAP HANAの利用に合わせて、そのリアルタイム統合の力を生かした統合財務計画/予測・シミュレーションや、グループ全体で利用するCentral Finance連携など、幅広い用途に応用して、ご利用いただければと思います。
【関連リンク】
SAP Simple Finance 2.0におけるイノベーションーー第1回:財務会計/管理会計機能における4つのイノベーション
https://www.sapjp.com/blog/archives/12134
SAP Simple Finance 2.0におけるイノベーションーー第2回:新しく生まれ変わった資金管理
https://www.sapjp.com/blog/archives/12286
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