SAP ERPを使った経営シミュレーションゲーム ~経営におけるリアルタイム基幹システムの価値を体感~
作成者:桃木 継之助 投稿日:2015年8月7日
SAP桃木です。このブログでは、SAP ERPを使った経営シミュレーションゲームについてご紹介します。
SAP ERPはリアルタイムの統合された基幹システムであることをご存知の方は多いかと思いますが、SAP ERPを使った経営シミュレーションゲームをご存知ですか?
海外のMBAの授業などで結構使われているものの、日本での普及はこれからなので、きっとご存知ない方がほとんどですよね。
このシミュレーションゲームは以下のような内容です。
- 複数のグループに分かれて、同一市場で企業間競争を実施する
- SAP ERPに対して、価格の設定や、マーケティング費用の設定、販売計画の入力、MRPの実行、購買の実行などの処理を実施する
- ゲーム内の1日を、実時間の1分とする。20分で20日間のシミュレーションを実施。3ラウンド(ゲーム内時間3カ月)後の利益を競い合う
このゲームを通じて学べることは以下のような点です。
- 企業競争において、情報の大切さを体験する(リアルタイムでワンファクトワンプレースの情報の価値)
- 何か一つの出来事をもとに関連部門が協力し対応し、そのスピードが重要であることを体感する
- 各種の施策が、B/SやP/Lにどのように影響するかを理解する
やはり大人でもゲームでの競争は楽しいものです。しかも、予想以上に熱くなります。
このブログでは、ある企業で行ったシミュレーションゲームの様子を再現し、読者の皆様に追体験してもらいたいと思います。
なお、このゲームは、日本に輸入し、企業のERP検討を支援するツールとして提供することを検討しています。
ご興味のある方は本ブログの問い合わせからご連絡いただければと存じます。
ここからは、ある企業のERP検討チームが、このシミュレーションゲームを行い、経営においてリアルタイムの情報や、部門横断での対応の重要性を学んだ例をご紹介させていただきます。
ある企業のERP検討チームによるゲーム風景
そのゲームには12名が参加した。1チーム4名 x 3チームという構成だ。
チーム内は、①マーケティング担当(おもにマーケティング費用を決定する)、②価格担当(おもに販売価格を決定する)、③購買担当(生産計画を決定し購買発注を行う)、④CEO(全体を把握し各担当に方針を指示する)という役割分担となっている。
今回のゲームでは、飲料メーカーとなりドイツ国内を3社で競い合う。3カ月後に最も多くの利益を得たチームが勝ちだ。
参加者はSAP ERPの使い方の簡単なレクチャーを受けたのち、さっそくゲームが開始された。
現実の1分がゲーム内の1日。20分で1ラウンド終了だ。即座に状況を把握し、対策を考え、SAP ERPに入力をする。参加者に緊張感が溢れてくる。
第1ラウンドの20日間は、まずは小手試しだ。変更できるのは、販売価格とマーケティング費用の2つの要素のみ。
1,000個の在庫が残っているので、それを売るだけ。第2ラウンドからは、購買の要素が加わってくる。
手探りの第1ラウンド
あるチームでの第1ラウンドの言動を追ってみよう。
CEO :「まずは、価格設定とマーケティング費用による販売数量への影響を把握したい。最初の3日間はマーケティング費用だけを変更してくれ。その後に、マーケティング費用を固定し、価格を変更していきたい」
マーケ担当:「了解しました。マーケティング費用の目安はいくらにしましょうか?」
CEO:「売上の10%を目安にマーケティング費用を設定しよう。売上目標は1日 6,000ユーロだから、1日600ユーロを上限として考えてくれ」
マーケ担当:「了解です。製品が6個あり、地域が3つあるので、18セグメントあります。各セグメントに10ユーロ、20ユーロ、30ユーロで試してみます」
―――3日経過後―――
CEO:「順調に販売数量が伸びているぞ。マーケティングの効果はありそうだ。」「レポートを分析するから時間をくれ」
販売担当:「それでは、そろそろ販売価格を調整していきます」「まずは、原価+30%の価格で、粗利を23%に設定します」
CEO:「了解。任せた」
―――5日経過後―――
CEO:「あー分からん。レポートの分析がまだ終わらない。各自で在庫見て販売動向みながら、調整してくれ!」
マーケ担当:「了解しました。東地区の売上が伸び悩んでいるようなので、東地区にマーケティング費用を集中投下します」
販売担当:「高級商品の動きが悪いので、高級商品の販売価格を下げますね」
―――6日経過後―――
販売レポートが届く。この販売レポートは自社の情報だけでなく他社を含めての平均価格や販売数量も記載されている。
CEO:「自社の価格設定は市場より高いぞ!。販売担当、調整してくれ!」
販売担当:「でも、それなりに動いていますよ?価格下げますか?」
CEO:「そ、そうか。それなら、価格は維持で良い」
―――10日経過後―――
CEO:「いやー売れてるねー。売上も利益も順調だ」
販売担当:「あのー。このペースで行くと在庫切れになると思います」
CEO:「ん?こりゃやばいな。今月は入庫予定がないからな。価格高くして、マーケティング費用を削減してくれ」
販売担当、マーケ担当:「了解です。マーケティング費用は0にしちゃいますよ」
といった形で、最初の20日間は手探りが続いた。
どのようにレポートを見るべきか?また、各施策(価格変更やマーケティング投資)の効果が分からない。
しかし販売数量の情報をもとに、なんとなく順調だと感覚的に判断する状態だった。
3チームの成績が開示された。このチームはビリだった。
利益で順位付けされるのだが、マーケティング費用をかけすぎたのが原因だった。
社内コミュニケーションで悩む第2ラウンド
第2ラウンドからは、購買の機能が追加される。
販売計画に基づき仕入れる。仕入れのリードタイムは1~3日。
CEO:「もう在庫がない。即刻、仕入れを頼む」
購買担当:「何個仕入れましょうか?」
CEO:「先月は1,000個が品切れした。2,000個仕入れてくれ。売れ筋商品は多めにな」
購買担当:「了解です。6種類の製品がありますが、売れ筋商品を多めに仕入れます」
購買担当は需要計画の入力、MRPの実行、購買依頼の発行と、バタバタと処理を進めた。
購買担当:「入庫は明日です」
販売担当:「よし在庫が先月の2倍あるから、価格を押さえていきます」
マーケ担当:「うーん。売れ筋商品のマーケティング投資をするべきか?それとも売れていない商品のテコ入れをするべきか?……まずはテコ入れします!」
―――5日経過後―――
販売担当:「在庫がない!在庫がない!発注してくれ」
購買担当:「分かりました。売れ筋商品を多めに仕入れましたが、予想より売れましたね。売れ筋商品だけ追加で大量発注します」
―――8日経過後―――
ここで事件がおきる。これまで予想以上に売れていた売れ筋商品の動きが一気に鈍化したのだ。
CEO:「おいっ!売れ筋商品が急に売れなくなったぞ。価格上げたか?マーケティング投資絞ったか?」
販売担当:「価格ちょっと上げました。さげますね」
マーケ担当:「はい。月初から売れ筋商品はマーケティング投資絞っています。投資増やしますね」
―――10日経過後―――
CEO:「ぜんぜん売れ筋商品の販売が戻ってこないぞ!どうなってるんだ?」「ひょっとして、市場が変わったのか?」「レポート見て分析する。時間をくれ」
―――13日経過後―――
CEO:「やっとレポートを分析できた。顧客が変わったのではない、競合が価格を下げてきている」
販売担当:「価格をギリギリまで下げますね」
―――15日経過後―――
CEO:「なぜだ?!販売数量が戻らない」
マーケ担当:「売れ筋商品にマーケティング投資を集中しましょうか?でも価格下げちゃっているから、利益でるかなー?」
CEO:「分からん。ぼちぼち売れているから、マーケティング費用はあまりかけるな」
第2ラウンドが終了し、3チームの成績が公開された。
このチームは、前回ビリだったが、2位に浮上。
別の1つのチームの売上が伸びず、結果利益も上がらなかったのが原因だった。
データを見ながらすぐに判断し実行できるという幸せを感じた第3ラウンド
第3ラウンドは新たな分析ツールSAP Lumiraと新しい画面SAP Fioriが与えられた。
この新しい分析ツールSAP Lumiraは、好きなデータを組合せて自分好みのレポートをすぐに作れる。
新しい画面SAP Fioriは、業務手順の流れに沿って画面が設計されており、分析データを見ながら業務処理を行える。
販売担当:「在庫見ながら、販売価格を調整できるから、もうCEOの指示いらないや」
マーケ担当:「製品ごとの粗利見えるから、製品ごとのマーケティング費用をしっかりと考えられる」
そう、第3ラウンドでは、SAP S/4HANAの機能が発揮されているのだ。
業務担当者はデータを入力するだけでなく、業務上の意思決定に必要なデータが表示される。
正しく精度の高い決定を自分で行うことができるのだ。
業務担当者はデータを見て判断して、即座に最適な施策を打つことができるようになった。
一方で暇になったCEO。時間があったためか奇策を考えだした。
CEO:「今回、利益上げれば良いんだよね。大量に在庫持っちゃおう!大量に買っちゃって!」
購買担当:「了解!」
―――第3ラウンド終了―――
第3ラウンドを終了した時点で、なんと、このチームが利益1位となった。
在庫を大量に抱えながら、売れ行きを見て価格を調整し、利益がでるようマーケティング費用を調整できたのが要因だろう。
余談だが、このチームは、大量の在庫を購入する際に銀行からの借入金が増え、格付けが低下し資金調達レートが悪化していた。
仕入れや借入金の支払いが発生した後であれば、最下位になっていたことであろう。
(CEOは計画的と言い切っていたが、どこまで本当か・・・)
後日談として、第2ラウンドで売れ筋商品の販売が急落したのは、他チームが販売価格を原価ギリギリまで落とし、マーケティング費用の集中投下をしたからであった。
つまり競合に市場を奪われていたのだった。市場データと社内データを合わせてSAP Lumiraで分析したら、すぐに分かったのだが、第2ラウンドではこのツールがなかったのである。
さて、ここまでが、ある企業のERP検討チームが行ったシミュレーションゲームの風景です。
参加した人たちは、
「企業競争をする中で、やはり即時に情報が入ることが重要だ」
「部門横断で情報を共有し、協調することが重要だ」
「業務を遂行する人もデータを使えると1段高いレベルの仕事ができるね」
「ERPの価値も良く分かった。SAP S/4HANAの『データを記録するためではなく、データを活用するシステム』の価値も体感できた」
などの感想を口々に言っていました。
みなさんの企業でも、このようなシミュレーションゲーム試してみませんか?
日本に輸入を検討していますので、ご興味を持っていただいた方は本ブログのお問い合わせにご連絡ください。
なお、このシミュレーションゲームはBATON SIMULATIONS社が開発したもので、SAPジャパンから提供される予定です。詳しくは http://batonsimulations.com/erpsim-training-game/what-are-erpsim-games/ をご覧ください。