SAP S/4HANAが生み出す価値を6つのシナリオで解説


財務管理からロジスティック、マーケティングにいたるまで、企業のビジネス部門がどのようなシナリオで、SAP HANA上で構築された次世代のSAP Business SuiteであるSAP S/4HANAからメリットを得られるのかをまとめます。

2015年5月にオーランドで開催されたSAP最大の年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW」において、SAPのCEOであるビル・マクダーモットは「現在のビジネスは、もはやB2BやB2Cではありません。今やビジネスを左右するのは消費者です。時代はC2Bに変わっているのです」と話しました。マクダーモットは、ビジネスの主導権を握っているのはもはや企業や起業家ではなく、顧客であることを確信しています。C2B(consumer to business)の概念は、ビジネス部門が顧客の新たな要求にもっと迅速に応えていかなければならないことを意味しています。ここでは、組織のデジタル化を加速し、各部門が新たなビジネスモデルを確立し、新たな手段を模索するためのソリューションが必要となるのです。

SAP HANAを超えるSAP S/4HANA

Cityscape through windows --- Image by © George Hammerstein/Corbis

SAP S/4HANAは企業のすべての部門とデジタルプロセスとの連携をSAP HANAのプラットフォーム上で可能にします。これにより、たとえば製造、プロセス制御、財務部門が手を携えて行動できるようになります。

次世代のSAP Business SuiteであるSAP S/4HANAは、社外のビジネスネットワークを社内のビジネスプロセスにまで引き込み、3つの大きなデジタルトレンドに対応します。第1に、IoT(モノのインターネット)はセンサーの埋め込まれた物理的な機器・設備をネットワークで基幹システムに繋げます。第2に、セグメント・オブ・ワン(segment of one)として知られるアプローチで、個々の顧客を把握・分析し、サービスを提供します。第3に、顧客単位のロットサイズを実現し、顧客1人ひとりに最適化された製品製造を可能にします。

以下の6つのシナリオで、ビジネス部門がどのようにSAP S/4HANAを活用して、そこから利益を生み出すことができるのかについて見ていきましょう。

1. 財務:最新の実績に基づく洞察

現在の企業経営の実績は通常、各四半期に行われる中間報告を通じて明らかにされ、この報告をもとに将来の投資計画が決まります。昨年、SAPはSimple Finance 1.0を使い、極めて煩雑な報告、年度末決算をソフトウェアによる会計へと移行し、これらのタスクに要する期間を従来の12日間から6日間に短縮しました。

「データモデルをどれだけ単純化しても、いくつかの反復プロセスは残ってしまいます」と話すのは、SAPでSAP S/4HANAに関する「Co-Innovation(共同開発)」と戦略の責任者を務めるズヴェン・デネケンです。デネケンによると、SAP Simple Finance 2.0によって期末決算をリアルタイムで行うという目標がいよいよ現実のものとなりつつあるということです。

SAP Simple Finance 2.0で可能なこと

  • 財務会計と管理会計の一体化を実現し、会計伝票のデータ構造をシンプル化
  • すべての登録手順がリアルタイムに統合
  • 財務管理は一元化され、サードパーティのシステムからデータを集め、分析することも可能に

ビジネス部門にもたらされるベネフィット

最新の実績が会社のCFOだけでなく、ロジスティックのトップや業務部門の責任者、CMOも利用可能に。

「この透明性によって、投資に関する議論はまったく新しいレベルに押し上げられます」とデネケンは話します。これにより、近い将来において販売員が顧客との交渉中にリアルタイムなデータを活用し、提示金額が妥当か、割引の余地があるかどうかの判断ができるようになります。これまでの財務部門の権限が部分的に委譲されることで、意思決定の新たな裁量が生まれるのです。

  • 各四半期の決算で400時間分の労働を短縮
  • SAP Business Suiteと比べて、レポートの集約時間を86%高速化
  • マーケットリーダーは同業界の企業と比べて、期末決算を26%速く完了し、コスト61%削減(SAP Value Engineeringのベンチマーク)

2. ビジネスと財務計画:新たな戦略とプロセスのリスクをシミュレーション

業務部門と財務部門の連携が実現したことで、企業は初めて新たな戦略とプロセスのモデルを作って、その影響をリアルタイムでシミュレーションできるようになりました。企業が新規プロジェクトの投資を決める際、たとえそれが意思決定の段階であろうと、プロジェクトが企業全体の流動性資産に与える影響を算出することができます。

「これまで保守的で典型的なB2Bのプロセス上で運用されてきた業界さえもが、潜在的な消費者をどんどん発掘するようになっています。こうした企業は、往々にして大きな成長に対応した新たなプロセスを必要としているものです」とデネケンはその効果を口にします。

特にこのようなケースでは、できるだけ早い段階でトレンドに対応するためにも、新たなビジネスに変化があれば必要な情報を即座に入手しなければなりません。たとえば、ダイレクトセールからサービスアプローチ、新しいキーパーソンへのアプローチや新しい契約への切替えなど、企業は可能な範囲でできる限りの対応を行うべきなのです。

ビジネス部門にもたらされるベネフィット

財務部門は本質的に新たなビジネスモデルに対して懐疑的であり、常に確信を裏付ける十分な根拠を求めます。ビジネスモデルが破壊的で、完全な新ルールに沿って機能するような場合、彼らを納得させるのはさらに難しくなります。しかし、新たなビジネスの確実性をシミュレーションできれば、企業全体の財務状況への影響も示すことができます。財務部門にとって厳然たる事実や分析は、洗練されたプレゼンテーションよりも大きな説得材料となります。SAP S/4HANAは企業が新たなビジネスを生み出し、新たなビジネスモデルをより簡単に確立させる究極的な支援を行います。

3. セグメント・オブ・ワン:消費者を個として捉える

セグメント・オブ・ワンという顧客にスポットを当てる戦略において、消費材産業はその先駆者であり、他の業界は後塵を拝しています。企業は個々の消費者のニーズに相応しい提案をするため、顧客について可能な限りの研究を行っています。これらの企業は顧客にコンテクストベースの手法で働きかけることができます。顧客がスマートフォンを持って入店したり、同じ商品をインターネットで3回閲覧していたら、プロモーションのキャンペーンやクーポンといったリアルタイムなマーケティング手法の出番です。購入履歴などの構造化データや、ソーシャルネットワークやインターネットで共有されたコンテンツなどの非構造化データをシステム上で統合するのです。

SAP S/4HANAの特別な点は、たとえば顧客の購入履歴がマーケティングだけでなく、企業のあらゆる部門で入手可能という点です。

デネケンは「すべての作業は単一のプラットフォーム上で行われます」と話します。「SAP Business Suiteの以前のバージョンでは、財務、販売、マーケティングはそれぞれ別のモジュールを用いていました。SAP S/4HANAでは、これらの部門は連携しています」

ビジネス部門にもたらされるベネフィット

顧客が商品を買いたいと思った瞬間、購入履歴を表示するだけではなく、彼らの購入が組織全体またはビジネスユニットにどのような影響を及ぼすかが表示され、プロセスをそれに応じて調整することができます。以前は、そういった関連付けは四半期ごとにしかできませんでした。

SAP Value Engineeringが一元化された明確な顧客像を特定

  • 新規顧客を24%獲得し、収益が増加
  • 市場のシェアを30%まで拡大
  • 手作業によるオペレーションを22%減少

4. MRP:資材所要量計画(MRP)の最適化

資材所要量計画(MRP)の課題は、製品に必要な資材を常に正確に注文し、倉庫保管費を最小限に抑えることです。そのためには、購買、製造、倉庫管理、販売の各部門が互いを信頼できる状態でなければなりません。従業員は、たとえば販売部門や需要予測からの注文や、サプライヤーとの合意などに目を配りつつも、計画されている注文、購買要求、実際の注文、配送時間などの製造プロセス全体を把握しておく必要があります。

このロジスティックの課題を解消するためには、倉庫、査定、計画の各プロセスが同期していなければなりません。SAP S/4HANAは各組織で在庫と需要計画を連携させ、すべてのデータを企業全体で共有しながら分析を行います。

ビジネス部門にもたらされるベネフィット

資材所要量計画(MRP)はもはや夜間バッチ処理ではなく、リアルタイムで対応するものです。それによりボトルネックがより早く特定され、倉庫のスペースを削減することが可能になります。さらに、計画の時点ですべての製造拠点と外部のサプライチェーン全体を適切にコントロールすることができるのです。

倉庫において安全在庫の取り置きは避けられないものです。しかし、的確なシミュレーションと査定によって、無駄を最小限に抑えたキャパシティ管理が可能になります。そして単純化したデータモデルと、SAP S/4HANAのリアルタイムな情報により、この管理が財務、販売、流通、小売といったすべての部門プロセスにおいて行えるようになります。

  • 在庫の回転率が上昇
  • 配送のパフォーマンスが向上
  • 製造プロセスが最大50%加速
  • プロセスの速度が90%以上向上

5. ロジスティック:配送パフォーマンスの向上

サプライチェーンの範囲は計画から製造、パッケージング、製品の配送にまで拡大し、多種多様なサプライヤーとサービス提供者が連携することで成り立っています。デネケンによれば、このサプライチェーンのプロセスに合理的にリソースを割り当てるためには、まず「事前取り決めの際、サプライチェーンでは何を考慮しておくべきだろうか?」と自らに問いかけてみることが重要です。

重要な部品が届いていない場合、スケジュールの迅速な立て直しは必須ですが、同時にプロセスに関わるすべてのスタッフ間で最新の情報を共有することも重要です。特に今後はますます製品がサービスの一環として売られるようになるため(たとえば、圧縮空気を生成するコンプレッサー装置の提供から、使う圧縮空気のみを提供するビジネスモデルへの転換や、デバイスの購入から利用への転換など)、インシデントに迅速に対応することが重要な意味を持つようになります。こうした環境において、ビジネスプロセスがビジネスネットワークと結びつき、サプライチェーン全体に目を行き届かせるのは当然のことなのです。

ビジネス部門にもたらされるベネフィット

SAP S/4HANAによって、ビジネスネットワークにおけるサプライチェーンと各事業部門からの最新情報が提供されるため、ボトルネックを素早く特定でき、その解消のための提案を自動的に受信して、スケジュールを迅速に組み直し、配送日に確実に間に合わせることができます。

6. 自動車産業:あらゆるタイミングの注文にも対応

顧客単位のロットサイズの実現は、たとえば自動車産業も注力している大きなテーマです。この究極のロットサイズによって、顧客は好きな製品を手にすることができるだけでなく、たとえ製造が開始される1秒前であっても仕様を変更できるようになります。これはマーケティングの視点からすると素晴らしいアイデアに思えますが、製造側にとっては非常に困難な課題です。

「私たちは今、製造管理方法の再考を迫られています。今後はある程度までは消費者自身が製品の仕様を決定し、サプライヤーと直接関わっていくことになります」とデネケンは説明します。このアプローチでは、あらゆる部品が倉庫から注文されて使用された時点でシステムに反映されていなければなりません。これは、他の顧客が製造点数の少ないまったく同じ合金のホイールを選んでしまうという事態を防ぐために企業が取りうる唯一の対策なのです。在庫点数が更新される夜まで待つという対応では不十分なのです。

ビジネス部門にもたらされるベネフィット

倉庫のデータは常に最新で、それにより安全在庫を減らすことができます。しかし、本当の大きなメリットは計画と予測をリアルタイムで実行できることです。こうした透明性があって初めて、企業は顧客からの急なリクエストに応えることができ、配送のパフォーマンスが向上して、顧客ロイヤルティをより一層高めることができるのです。

【参考情報】
SAP S/4HANAの詳細資料は以下からダウンロードできます。
https://www.sapjp.com/blog/archives/resource/solution-collection-2015-summer
SAP S/4HANAに関する概要、FAQはこちら
http://discover.sap.com/japan-S4HANA
SAP S/4HANAクラウド版の無料体験はこちらから
https://www.sapjp.com/blog/archives/12537

出典:SAP S/4HANA: The Six Most Important Scenarios 投稿者 Andreas Schmitz

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