専門性、英語力、実践的な経験が克服できる日本板硝子の人材育成環境


こんにちは、SAPジャパンの鎌田です。2015年6月16日、都内で「SAP HR Connect Tokyo グローバルマネジメントフォーラム 2015世界で活躍するリーダーを創る」が開催されました。前回は、サントリー食品インターナショナル株式会社の人事部部長である宮脇潤治氏による講演をレポートしました。今回は、日本板硝子株式会社 執行役員 グループファンクション部門 人事部 人事開発・報酬部長 兼 アジア統括部 部長 梯慶太氏が講演した「日本板硝子のグローバルタレントマネジメント」を紹介します。

買収を機に真のグローバル企業を目指す

_MG_89722006年当時、2700億円の売り上げを誇った日本板硝子は、売上高・従業員数ともに約2倍の規模にあった英国の上場企業ピルキントン社を買収し、世界的な注目を集めました。同社では真のグローバル企業を目指すため、長期的なグローバルリーダーの選抜と育成に取り組んでいます。「最大の特徴は、被買収企業であるピルキントン社の組織・人事制度をベースにしながらも、そこに留まらずタレントマネジメントでさらに進化しようと努めている点です」と、同社の買収プロジェクトに初期から参画した日本板硝子の梯氏は語ります。

真のグローバル企業を目指すという視点で2社を比較すると、当時の日本板硝子は日本企業としての制度や仕組みしか持っておらず、すでに30カ国近くでオペレーションを行っていたピルキントンの制度や仕組みを導入することが、合理的だったとの判断がありました。「ピルキントン社が長年築いていたグローバル組織に、日本を組み入れることで一挙にグローバル化を進めようという取り組みは、日本企業の技術や経営理念を徐々に世界のオペレーションを広げていく従来一般的だったグローバル化とは対照的と言えるものでした」(梯氏)

日本板硝子が買収直後にまず取り組んだのは、外国人を含む全社員への経営理念の浸透です。「小が大を飲む」M&Aのなかで、経営理念の解説書もすべて英訳し外国人でも理解できるように配慮、トップチームでの共有・合意を経て、27カ国語に翻訳し、ホームページに掲載したほか、社内報の『MADO』は、現在16カ国語で発行しています。

統一マネジメントグレードでCEOまで一貫した仕組みで管理

統合後に組み入れたピルキントン社の人事制度には「マネジメントグレード」があります。グループ全体でマネージャー以上の社員をAからHで区分しており、人事部門がCEOまで一貫した仕組みで管理しているのが日本の多くの企業との違いです」と梯氏は強調します。マネジメントグレードの上位AからEまでをシニア・エグゼクティブ・リソース・グループ(SERG)と呼びグローバルで一括に管理しています。

その他人事制度には、グローバルで同一システムを利用した個人業績評価、グローバルマネジメント育成プログラムがあります。育成プログラムのコアプログラムが、ジュニアマネージャー向けの「ED1」と、シニアマネージャー向けの「ED2」です。ED1は、1970年代に原型ができた歴史あるプログラムであり、「自分を知る」ことに注力した充実したプログラムです。2週間のプログラムで10数カ国の社員が集まって年に2-3回開催されます。一方、ED2は、SERGを目指す層に用意された戦略性の育成を狙った人材育成プログラムで、2年に一回と狭き門となっています。

高い業績を上げるために類型化された行動特性であるコンピタンシーモデルも統合後見直しました。「リーダーシップを『人間力』『結果へのこだわり』『ヴィジョン』の3項目でまとめ、合計9つのコンピタンシーで構成。ED1とED2では、360度コンピタンシーアセスメントという仕組みを活用し、主に育成課題の把握や採用・昇格時の面談に利用しています」(梯氏)

新たな仕組みを日本で導入するうえで、どのような順番で組み入れるかという点にも梯氏はアドバイスしました。「我々が一番に取り組んだのは個人業績管理システムです。買収前に当社にも同様のMBO(目標管理制度)の仕組みがあったこともありますが、考査結果は昇給に結びつくため正確なデータを入力するインセンティブが働くだろうと見て意識的に選択しました。次に統合したのが賞与の評価基準です。全世界で共通の財務スケールを使い評価を行いました」その一方、マネジメントグレードと報酬ポリシーは、導入までに時間を要したといいます。「年功制を廃し、職位のみに一本化することに対して慎重論もありましたが、昨年上級幹部で実施、給与の構成も年俸制から基本給プラス年次・長期インセンティブというグローバルマネージャーの仕組みへ統合しました」

後継者育成でタレントディベロップメントを重要視

旧ピルキントンの人事制度を取り入れるなか、タレントマネジメントの面では種々の新たな課題が見つかりはじめます。たとえば後継者計画ではその作成が目標になってしまい、候補に挙がった人の育成まで十分なモニタリングができていない点です。日本板硝子では2011年頃からこの強化に乗り出し、タレントディベロップメントを重要視するようになりました。

日本板硝子では、SERG70ポジションのなかでも、さらに上位層のポジションに就く潜在性がある将来のリーダーを「ハイポテンシャル人材」と位置付け、選抜・育成を行っています。「人材選抜では、縦軸にポテンシャル、横軸にパフォーマンスを取り、それぞれ3段階にレーティングした9ボックスグリッドを使用して評価します。『パフォーマンス』は、いまの役職における業績を計る指標であり、『ポテンシャル』は将来の潜在性を示します。この2つを混同しないことが選抜時に大切なポイントです」と梯氏は指摘します。

ポテンシャリティは、「リーダーとしての素養」「自己開発志向」「組織適合性」「複雑な状況への対応」の4つで評価する“リーダー適性”で評価しているといいます。選抜の究極の目的は、あらゆるリーダーシップ階層で将来CEOに就任することができる人材を選んで育成すること。「特定のポジションに対して準備状況にある「レディネス」と区別することも重要です」と、梯氏は強調します。

元CEOのスチュアート・チェンバース氏は、就任直後にグローバル人材を目指す日本人の弱点として、①グローバルに通用する専門性の欠如②英語力③グローバル組織での実践的な経験不足を挙げたといいます。日本板硝子は、今や上司も部下も外国人であるポジションが多く、この弱点克服には適した環境です。最後に「グローバル人材の育成は、決して日本人としてのアイデンティティを失った人材を育成するのでは無く、直面する異文化に合わせてうまくシフトチェンジできる日本人を育てることだと思います」と梯氏は語りました。

当ブログでは引き続き、「SAP HR Connect Tokyo グローバルマネジメントフォーラム 2015」の模様を取り上げます。次回は、SAPジャパンの常務執行役員人事本部長であるアキレス美知子による講演をレポート。SAP自体が挑んだ人事組織の5つの変革をご紹介します。

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)