「現場での収益」を獲得するためのB2Bセールスのパラダイムシフト


経済成長が世界規模で鈍化する中、いかに効率よく収益目標を達成するかは、B2Bセールスにおけるもっとも重要な課題となっています。顧客との交渉や取引が成立するその一瞬を的確に利益につなげていくための手法や仕組みを、組織としてどのように創り出していくか? 今回は、この「真実の瞬間」を最大限に活かす上での課題や戦略、そして具体的なアプローチについてのヒントをご紹介していきましょう。

収益への認識と実態の格差を埋める「新しい営業モデル」

短い期間でより多くの利益を獲得することは、現在の企業にとっての切実なミッションとなっています。これは、短期的な利益を犠牲にして売上を拡大するといった従来の戦略が、すでに効力を失っている事実を示しています。加えて、現代の上場企業では「一株あたり利益(EPS)」という形で、四半期ごとに株主に対する価値提供が求められていること。またシニアエグゼクティブの任期が短期化する傾向にあり、限られた時間内で利益を生み出す圧力が高まっていることも、この流れを加速しています。

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シニアエグゼクティブの任期が短期化し、成果や大胆な改革への圧力は高まる一方

もちろん、企業の収益についてCEOと共に責任を負うCFO(最高財務責任者)も、こうした傾向は十分に認識しています。しかし、具体的な対応は容易ではありません。利益創出の源泉である営業の現場は、長年の経験に基づく暗黙知が定着し、客観的で信頼性の高いデータに基づく効果測定が難しい「ブラックボックス」と化しています。このためCFOがCSO(最高営業責任者)や営業リーダー、マネージャーに対して、利益に関する責任を追求できない状態が続いてきたのです。しかし、こうした状況も近年は大きく変わってきました。営業指標の集計・分析手法の進化で信頼性の高いデータが得られるようになった結果、CFOはこの数値をもとにCSOに対して売上原価(COS)の削減と利益率の向上、そしてさらなる売上の拡大を求めるようになりました。

ところが、こうしたマネジメントからの要請に対して、ほとんどの営業リーダーはそれを実現するための具体的な手段を持っていません。調査では、営業リーダーの51%、営業マネージャーの45%が「利益に基づいてインセンティブを支給される」としながらも、実際に取引で利益を最大化できていると考えている人は20%未満に過ぎないのです。こうしたギャップの背景には、利益創出の重要性をCSOやマネージャーが認識していながら、肝心の営業の現場にはそれを実現する新しい営業モデルがいまだ存在していないことがあります。そして、SAPはその原因を取引ごとの収益性をリアルタイムで測定できないことにあると考えています。

もし営業チームが取引ごとに収益を正確に測定し、その結果を即座に行動に反映できる営業モデルを持っていたなら、各人がそれぞれ能動的に考え、判断し、もっとも収益の高い方法を容易に選択できるはずです。経営層と営業現場の意識のギャップを埋め、営業の現場が自ら利益創出のリーダーシップを発揮する上で、新しい営業モデルの探求はもっとも重要な課題だといえるでしょう。

戦略的なプライシングがもたらす収益向上と成長機会の創出

新しい営業モデルを探る前に、旧来の営業モデルとその問題点について触れておきましょう。もっとも大きいのは、多くの経営層が利益を追求する上で、旧来の手法や発想をそのまま使い続けていることです。具体的には「コストの削減」「新製品の開発」「生産能力の拡大」「営業担当者の増員」「買収による成長」など、これらはいずれも過去において有効とされた「利益拡大要因」です。たしかに、これらの対策は効果をもたらす場合もあります。しかし同時に解決すべき課題も多く、とりわけ時間を要する点が問題です。新たなブレイクスルーにつながる、本当に新しく効果的な「利益拡大要因」を見つけなくてなりません。

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従来からの「収益拡大要因」は効果もあるが、克服すべき課題も多い

そこで注目したいのが、「プライシングによる成長機会の創出」です。世界のトップ企業は現在、重要な「利益拡大要因」としてプライシングを重視する傾向にあります。マッキンゼー&カンパニーによれば、実勢価格が1%上昇するごとに、企業は平均10%の純利益拡大が期待できるといいます。またLogisticsWeekは、成長が鈍化した市場にあって利益を拡大するには、経営層が専任の価格設定部門と連携してプライシングに積極的に取り組むことが必要だとしています。

プライシングの実践にあたっては、「プライシングはアナリティクスの問題である」という前提を認識することが重要です。プライシングは単なる値付けではなく、過去の取引を分析して価格設定の根拠を築くことなのです。そうした高度な分析作業が手に余るという企業は、「プライスウォーターフォール」を可視化し、リストに掲載された定価から実際の取引価格までのどこで利益損失が起きているかを特定するだけでも、十分な効果が期待できます。

ただし、真の問題はプライシングの分析自体ではなく、それを元に「収益性の高い営業活動を遂行できるか」にあります。プライシングを分析し、その結果得られた洞察を営業チームに提供することによって、現場の職務遂行能力を高めることが重要なのです。

価格の最適化に向けた膝詰めの交渉がビジネスの勝敗を分ける

次に「価格最適化=適切なプライシング」が実現できても、個々の具体的な取引が確実に行われなくては、最終的に利益を手にすることはできません。価格は顧客を獲得する上で有効な要素の1つに過ぎません。こうした現場の業務遂行能力を高めるにあたってキーワードとなるのが、「真実の瞬間」です。これまで企業は積み上げた売上を集計し、過去の実績として利益を確認してきました。しかしグローバル時代の激しい競争下では、日々の取引の中に現れる「真実の瞬間」ごとに利益を決定させなくてはなりません。つまり、営業の現場で行われる絶え間のない膝詰めの交渉がビジネスの勝敗を分けるのです。

ある取引の利益がどれくらいかというのは、交渉時に顧客と取り決めるさまざまな取引条件(数量割引、その他サービス割増料金など)と細かな項目の組み合わせによって決まります。しかし、1人の担当者が顧客との交渉を行いながら、すべての利益項目に目配りするのは荷が重すぎます。ほとんどの営業担当者が交渉の事前準備には苦労しており、IDCの調査でも「交渉のための準備不足が原因で、3件に1件の取引が成約にいたっていない」という事実が明らかになっています。

また、同調査では60%の営業担当者が自分自身で見積もりを用意し、50%以上が自ら価格を決定していることも判明しています。つまり、彼らが「真実の瞬間」に臨んで頼れるのは、今のところ自分自身の経験や知識だけなのです。しかも多くの場合、交渉相手は十分な知識を持った顧客の購買担当者であり、このままでは苦戦が目に見えています。交渉の肝心な場面である「真実の瞬間」を効率的に乗り切り、利益獲得を実現するためには、やはり標準化されたツールが不可欠です。

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購買担当者の行動は変化し、営業チームも本質的な変革を求められている

 

「アートから科学へ」B2Bセールスのパラダイムシフト

いまB2Bセールスは、かつてないパラダイムシフトに直面しています。グローバル化や市場の流動化、購買プロセスの多様化や価格競争の激化といったさまざまな問題を克服し、ビジネスを勝利に導くために、営業スタイルを「アートから科学へ」移行すべきとの考えが主流になりつつあります。具体的には、データ分析やCRM、SFAといった最新のテクノロジーを活用して営業担当者を支援し、売上と利益の向上を測るといったアプローチです。

営業スタイルが「アート=個々の経験値に基づく交渉、判断」から「科学=データに基づく分析、判断とITツールによる効率化、精度向上」へとシフトを求められる背景には、顧客企業の大きな変化があります。筆頭に挙げられるのは、購買担当者の期待の変化です。企業の購買担当者は、疑問や要望に対してリアルタイムの回答を求めるようになっています。ここでは、「確認して連絡します」という古い決まり文句はもはや通用しません。また、競合他社と比べてどんな付加価値を提供してくれるかといった期待にも応えなくてはなりません。

同時に、購買担当者の知識は高度化しています。コーポレート・エグゼクティブ・ボード社の調査では、購買担当者は平均して、営業と関わる前に購買プロセスの57%をすでに完了しています。またビッグデータを活用して最適な価格を抽出するための、最新の調達システムを導入済みという企業も少なくありません。さらにモバイルデバイスの普及は、顧客自身がいつどこからでも、企業が提供しているすべてのデータにアクセスできる環境を実現しています。これからのB2Bセールス担当者は、このように知識や情報面で強化された顧客を十分に満足させるだけの科学的営業スタイルを確立し、実践する必要があります。

「真実の瞬間」を強力にサポートするプライシングソリューション

科学的営業スタイルを効率的かつ高品質に実現するためには、新しい営業スタイルに対応した独自のツールが不可欠です。SAPの提供する企業向けプライシングソリューションは、営業リーダーおよびスタッフが収益性の高い営業を推進する上で有効な機能を提供します。このソリューションをモバイルデバイスやCRMシステムと統合することで、営業スタッフは顧客との交渉現場から必要に応じて、取引ガイダンスや価格承認ワークフローを利用できるようになります。

この結果、営業担当者は顧客との商談中に販売力や顧客の業績、取引指標、最適な目標価格を参照しながら、双方にとっての利益を生むより具体的な条件の提示や交渉が可能になるでしょう。また、交渉の場で営業担当者自らが利益率を正確に把握しながら動的な見積もりを作成し、顧客に提示しながら商談を詰めていくこともできます。もちろん、そこで取り決めた特別価格に対する上長の承認も、モバイルデバイスを通じてその場で得られます。

こうした「真実の瞬間」における科学的かつ具体的な提案、交渉は、B2Bセールスにおける営業力を飛躍的に高め、利益を最大化するとともに、顧客の信頼を勝ち取る上でも大きく貢献することは間違いありません。営業の現場チームを強化し、収益性の高い営業を実現する取り組みに関心をお持ちの企業は、ぜひSAPジャパンまでお問い合わせください。

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