グローバル人材のマインドセットを醸成するSAPのデザインシンキング ワークショップを名古屋大学の学生が体験


IMG_9090“ニッポンの「未来」を現実にする”を理念に掲げるSAPジャパンでは、社内外の人材育成にも積極的に投資を進めています。その中で、大学生のマインドセット熟成とビジネス意欲の早期向上を目的に、SAPが積極採用するイノベーション手法「デザインシンキング」のワークショップを名古屋大学の学生向けに実施。2015年8月7日に開催されたワークショップには、夏季休暇にかかわらず学部を越えた19名の学生が参加し、SAPジャパンのお客様企業2社から出された「自動車メーカーとエンドユーザーをつなぐ次世代サプライチェーン」と「家庭にあったら使ってみたいロボット」というテーマについて、6つのチームに分かれて議論が行われました。未来のイノベーションを担う学生たちからは、短い時間の中でさまざまなアイデアが出され、参加企業からも高い評価をいただく実りあるワークショップとなりました。

学部を越えた19名の大学生がイノベーションの創出を疑似体験

今回のワークショップは、イノベーションの源泉となるデザインシンキングを現役の学生が疑似体験することで、日本社会に蔓延する内向き思考を解消し、グローバル視点のマインドの醸成に役立ててもらうために企画されたものです。なかでも名古屋大学は、文部科学省が進める「スーパーグローバル大学創成支援」において、「21世紀、Sustainableな世界を構築するアジアのハブ大学」という構想を掲げてグローバル人材の育成に注力しています。また今回のワークショップには、日本のモノづくり産業を牽引する中京エリアのさらなる発展と活性化に貢献すべく、SAPジャパンのお客様企業である豊田通商株式会社とブラザー工業株式会社にご協力をいただき、ワークショップの議論を両社のビジネスに還元できる取り組みとして実施しました。

モノづくりのイノベーションを想定したテーマ設定

IMG_8893ワークショップの冒頭では、進行役を務めたSAPジャパンの原弘美が基本的な考え方として、「デザインシンキングは、対象に共感する力を活用し、明らかにされていないニーズへの気づき(インサイト)を得て、また、創出されたアイデアを検証する。観察・アイデア創出・プロトタイピングのステップを短いサイクルで繰り返すことが必要」と説明。全員による自己紹介と、デザインシンキングの大枠をつかむためのエクササイズ(準備体操)を経て、本格的な議論に移行しました。

今回のワークショップで学生に与えられたチャレンジ(テーマ)は、「自動車メーカーとエンドユーザーをつなぐ次世代サプライチェーンとは何か」(豊田通商)、「家庭にあったら良い、ぜひ買ってみたい、使用してみたい“ロボット”は何か」(ブラザー工業)の2つでした。参加した19人の学生は2つのグループに分けられ、さらにそれぞれのグループで1組3人~4人で構成されるチームを3つずつ編成し、豊田通商向けとブラザー工業向けの課題解決を話し合いました。各チームにはファシリテーターとしてSAPジャパンの社員が1名ずつ参加し、学生の議論をサポートしました。

ワークショップの大まかな流れは、まずテーマを解決するためのアイデアを各チーム内で出し合い、そこでの課題を共有しながら、最終的な答えを具体化していくというものです。具体的には以下にあるような工程に則って、チーム内でのインサイトの共有やプロトタイプの作成が与えられた時間の中で行われました。

1. ワールドカフェ(ディスカッション)

ワールドカフェは、カフェにいるようなリラックスした雰囲気の中で議論を行い、他のテーブルとメンバーを入れ替えながら情報を共有し、与えられたテーマに関する気付きやアイデアを具体化していく手法です。今回、豊田通商から出されたテーマを議論するチーム(自動車チーム)には「車を作りユーザーに届けるうえで一番大切なこと」「自動車とユーザーの関係の今後」の2つ、ブラザー工業のテーマのチーム(ロボットチーム)には「家とはどういう場所か」「ロボットは何のためにあるのか」の2つの議題について話し合いが行われました。

約40分のディスカッションでは、自動車チームからは「自動運転」「カスタマイズ」「使った人の顔が見える」「家族との空間」などのアイデアが、ロボットチームからは「介護・看護」「子育て」「独身」「人工知能」「女性の社会進出」といったキーワードが次々と出されました。

2. チーム内でのインサイトの共有

IMG_9007ランチ休憩の後に行われたのが、チームインサイトの共有です。これは、ワールドカフェで出た議論やテーマに関する課題を整理しながら、イノベーションにつながる領域を決定する工程です。そこで、まず参加した学生全員がそれぞれのテーマに対し、どのような領域でイノベーションを起こせるかを想像しながら、「雑誌の表紙」になるようなイメージを紙の上でデザインしました。その後、チームで議論を重ね、起こせるイノベーションの領域は何か、その領域に登場する人物(ステークホルダー)は誰かについて話し合いが行われました。ここでは「豊田通商やブラザー工業のビジネスの強みやビジョンを考え、深く掘り下げたら面白いと思う領域や、世の中のニーズはどこにあるかなどを想定しながら検討して欲しい」というアドバイスに従い、約1時間にわたるディスカッションを行い、議論の内容を「アイデア」「インサイト(深い気付き)」「パーキングロット(本筋以外のアイデア)」の3つに分類しながら考察を深めていきました。

その結果、6つのチームが導き出したイノベーション領域は以下の通りです。

・チーム1(自動車)
高い買い物となる車だからこそ、流行・時代に合わせて変化させられる車を作る。ターゲットは20代、30代の女性。

・チーム2(自動車)
車は家族の団欒空間である。その時々の団欒ニーズに合わせてカスタマイズできる車を提供する。

・チーム3(自動車)
アジア新興国では、車を持つことが自分らしさやステータスの表現につながっている。富裕層のそうしたニーズに応えられるような、オリジナルの車を提供する。

 

・チーム4(ロボット)
使用者のニーズの変化(独身から所帯持ちへ)や主要な使用者の変化(息子から老親へ)に合わせて機能を拡張でき、長期にわたり家族を支えてくれる、家族の一員のような存在のロボット。

・チーム5(ロボット)
女性の社会進出が進む一方、男性は家事を覚えるきっかけが少ないというギャップにアプローチする。各家庭ごとの家事の作法や文化(煮物の味付けや味噌汁の作り方など)を学習し、家事に不慣れな男性の自立をサポートする。

・チーム6(ロボット)
親も子も安心して過ごせる育児ロボットを作る。

 

3. 「ハウ・マイト・ウィー・クエスチョン」の作成とアイデアの決定

「ハウ・マイト・ウィー・クエスチョン」とは、状況、人、ニーズを想定し、ある答えを導くための「質問」を考える作業です。たとえば、課題を抱える(解決策を必要としている)人=「父親」、状況(コンテキスト)=「猛暑の中、人気の遊園地に子供を連れていく」、ニーズまたはペインポイント=「子供の笑顔で癒されたい。長蛇の列で疲れるのは困る。」という情報をもとに、質問を組み立てます。「猛暑の中、混雑した遊園地に子供をつれて行かなければならないお父さん(状況)が、一生の思い出になる経験を子供と体験するには?」「待ち時間が0と感じられる遊園地滞在体験を実現するには?」「暑さが楽しくなるような(健康も損なわない)遊園地滞在体験を実現するには?」「人の多さが、子供の笑顔につながるような遊園地滞在体験を作るには?」このようにアイデア創出を刺戟する質問をいくつも考えます。

ワークショップでは、自動車のサプライチェーンおよび家庭用ロボットに関する「ハウ・マイト・ウィー・クエスチョン」を各チームで考えた後、書き出した「質問」に対する解決策をメンバーがそれぞれ出していきました。その際、いったん自動車やロボットというテーマから離れ、自分のお気に入りの企業やサービスを思い浮かべながら、その何が好きなのかを書き出す作業も並行して行い、自分の好みの基準が豊田通商やブラザー工業のテーマに対して、どのように応用できるかを考えていきました。解決策が一通り出された後は、チーム内で投票を行い、ベストと思われる解決策のアイデアを2つに絞り込みました。

4. ペルソナの作成(仮想顧客の設定)

ペルソナの作成とは、提供する製品やサービスを利用する仮想の顧客像(ペルソナ)を設定し、アイデアを膨らませたり、検証したりする作業です。その人物の名前、顔(写真やイラスト)、年齢、性別、家族構成、本当に実現したい目的を想定しながら、イメージを具体化していきます。ワークショップでは「トライアスロンが趣味で、仕事のノルマは常に1位を目指し、同棲中の彼女がいるIT企業の営業マン」「家族の笑顔が見るのが好きで、3歳の子どもを持つ名古屋市在住の主婦」といったペルソナがチームごとに作られました。

5. プロトタイプ作り

デザインシンキングでは、漠然としたアイデアをわかりやすくするために、プロトタイプ(試作品)を作って実際のイメージを具体化する作業を行います。それによりアイデアの発展形や、それまで思いつかなかった課題が明らかになるからです。プロトタイプは、ストーリーボードで紙芝居風にまとめることも、ロールプレイで役割分担を決めて演劇風に説明することも、レゴブロックや小道具を使って形にすることでも何でも構いません。約25分の時間を与えられた学生たちは長時間の議論の疲れを見せることなく、活発にアイデアを出し合い、プレゼンに向けて準備を進めました。

6. 最終プレゼン

最終プレゼンでは、プロトタイプを元に各チームがアイデアを4分の持ち時間で発表しました。ロールプレイあり、ストーリーボードありと、多彩な方法で実施されたプレゼンの内容は以下の通りです。

・チーム1(自動車)
外部のデザイナーが自由に参入でき、流行や趣味に合わせて着せ替え感覚で自動車の外装デザインやパーツをネットの注文で変えられる世界で1台だけのカスタマイズカー。

・チーム2(自動車)
ユーザーにとっての理想のドライブ空間に応じて、シートや部品を選べるカスタマイズカー。部品調達、サプライチェーンを工夫して低価格で提供。

・チーム3(自動車)
インドネシアのお金持ちの若い男性をターゲットに、カスタマイズカーを提供。納期や価格がユーザーの手元でわかるスマホのアプリを用意する。

・チーム4(ロボット)
独身男性の性格を自動学習で収集し、結婚サイトなどで自分の性格や趣味にあった女性を捜してくれるマッチングロボット。オプションによって家事代行ロボットになったり、介護ロボットになったりするため生涯を通じて利用可能。

・チーム5(ロボット)
ゴーグルをかけると目の前に動画が流れ、洗濯や掃除の仕方、料理の作り方などを教えてくれるメガネ型の家事代行ロボット。独身で仕事が忙しい30代の男性をターゲットとし、同棲中の彼女にも喜ばれることを目指した。

・チーム6(ロボット)
小さな子どもの音声を認識し、子どもと対話しながら遊び相手になってくれたり、健康の変調を察知して親に教えてくれたりするコミュニケーションロボット。

7. 優勝チームの発表、講評

IMG_8917プレゼンの終了後、最終的な審査は「市場性」「技術的な実現可能性」「潜在ニーズとの合致」の3つの項目に対し、絶対評価で行われました。参加者が自チーム以外に投票するフレンドシップ投票では、自動車サプライチェーンは「チーム3」、家庭用ロボットは「チーム6」が勝利。豊田通商、ブラザー工業、SAPジャパンの3社の4名による審査投票では、自動車サプライチェーンは「チーム1」、家庭用ロボットは「チーム5」、総合で「チーム5」が優勝に輝きました。

最後に豊田通商から参加した清野耕司氏は、「学生のレベルが高く、評価は横一線だった。参加してみて、自動車に対する若いお客様のニーズが改めてわかった。今後、会社のビジネスサイドにもフィードバックしていきたい」と話し、またブラザー工業の渡辺敏氏も「家庭的なロボットが多いことに驚いた。期待していた通り、自由な発想をしながらも、(ブラザー社から与えられれた課題として)「他人事」ではなく「自分ごと」として議論してくれたことが嬉しかった」とワークショップの成果を高く評価しました。

短時間ながらも想像以上にハイレベルな議論が行われ、ユニークなプロトタイプが登場した今回のデザインシンキング。SAPジャパンでは今後もニッポンの未来を担う学生の育成と地域の活性化に向けて、支援を続けてまいります。

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