グローバルビジネスの基盤強化に向けて、住友重機械工業が決断したERPのクラウド移行による大胆なチャレンジ


この数年、着実に広がりつつあるERPのクラウド移行ですが、一方で重要な業務データをクラウド上に預けることに不安を感じている企業がまだまだ多いことも事実です。こうした中、日本を代表する総合機械メーカーである住友重機械工業株式会社(以下、SHI)、グローバルビジネスへの対応を見据えた基幹システムの刷新を機に、SAPのエンタープライズ向けクラウドサービスSAP HANA Enterprise Cloud上にSAP Business Suite powered by SAP HANAを導入。これにより、将来の展開計画に合わせた拡張性を確保しながら従来の会計基盤をスムーズに移行するとともに、経営面では意思決定の迅速化と業務基盤の共通化によるIT統制の強化が達成されました。

グローバルビジネスを支える強固なグループ経営の基盤

1888年(明治21年)の創業以来、幅広い領域で日本の産業界の発展を支え続けるSHI。機械コンポーネント、精密機械、建設機械、産業機械、船舶、環境・プラントの6つのセグメントで事業を展開する同社の“モノづくり”の精神は、ナノテクノロジーから巨大構造物まで多岐にわたり、「動かし、制御する」技術を駆使することで斬新な発想を具現化してきました。2014年度の実績においては、海外の売上高比率が55%に達しており、この積極的な海外進出も近年における同社の事業方針を示しています。

IMG_8742グローバル視点での経営強化を目指す同社において課題となっていたのが、全社の業務を支える基幹システムのあり方です。それまでの業務システムは各事業部単位で個別最適化されており、分社化、M&A、事業再編といった環境変化に対する柔軟性の面で課題が指摘されていました。またシステム運用の属人化が進み、後継者の育成などの課題も抱えていました。そこで、同社はグローバルビジネスの成長を見据え、事業環境の変化にスピーディに対応するために基幹システムを集約・統合していく方針を決定しました。その意図について、企画本部 情報戦略グループ 部長の土居砂登志氏は「グローバルで広く利用されているERPパッケージを導入して事業部門の業務プロセスを標準化し、変化に耐えうるシステム基盤を構築したいと考えました」と語ります。

クラウドを活用してサイジングの制約を解消

さまざまな業務領域を支援する基幹システムの中でも、最初のターゲットとなったのが会計領域です。従来は国産パッケージを大幅にカスタマイズした会計システムを本社および国内の主要グループ会社で利用していましたが、グローバル対応が出来ておらず、海外グループ会社への展開に課題がありました。しかも、検討を開始した2009年当時はIFRS対応が求められていたこともあり、このことも新たなシステムの要件となりました。

IMG_8733いくつかの選択肢の中から、SHIは最終的にグローバルおよび国内重工メーカーでの採用実績を評価してSAP ERPの導入を、しかも日本でリリースされたばかりのSAP Business Suite powered by SAP HANAの採用を決定しました。DBにSAP HANAが実装されたSAP Business Suite powered by SAP HANAの評価ポイントについて、住友重機械ビジネスアソシエイツ株式会社 情報システム部 ビジネス変革G技師の大越崇之氏は次のように説明します。

「トランザクション系(OLTP)と分析系(OLAP)を1つのDBで実現する製品コンセプトは大きな魅力でしたが、国内でリリースされた直後だったこともあり採用に不安がありました。しかし、SAP自身が『本気でやります』といったメッセージを発信していたことも決断を後押ししました。ERPの導入で競合他社に遅れをとっている当社としては、最新のアーキテクチャを採用することがERP導入効果を享受するためにはベストと判断したわけです」

ただし、本番環境のクラウド運用はSAP製品を選定した段階で決めていたわけではありません。逆にSHIでは、当初はオンプレミスを前提としたシステム構築を考えていたといいます。その中でSAP HANA Enterprise Cloudを採用する大きなきっかけとなったのが、システム拡張の柔軟性です。SAP Business Suite powered by SAP HANAの導入プロジェクトは2013年10月からスタートしていましたが、国内初の事例であることに加えて、DBにSAP HANAを採用したチャレンジングなプロジェクトということで、システムのサイジングは難航しました。そこで想定外の事態でも柔軟に容量の拡張・縮小ができるクラウドサービスのSAP HANA Enterprise Cloudを採用し、またSAP Early Adopter Programを活用のうえ2014年の春からの開発環境、テスト環境、本番環境はSAPグローバル環境での支援も得ることができました。

「SAP HANA Enterprise Cloudは、もともとはSAPが自社のソリューションの運用を目的に用意したクラウド基盤です。社内からはクラウドはセキュリティやSLAが心配だという声がありますが、SAP HANA Enterprise Cloud上でERPを運用することについて不安はありましたが、採用した場合のメリットを考えて決断しました(大越氏)

SHIでは、システム刷新以前の要件定義の段階からAmazon Web Services(AWS)上に試験環境(SandBox)を構築して、簡易なテストを行ってきた経緯があります。さらに開発の初期段階ではSAP HANA Enterprise Cloudサービスの1つである Projects環境を利用していたこともあり、クラウドに対する抵抗感がなかったことも幸いしました。また、AWS上にSAP Business Suite powered by SAP HANAの機能検証環境を構築し簡易テストを実施していたことから、SAP HANA Enterprise Cloudを利用する前からクラウド上での動作検証を行うことができ、開発はスムーズに進みました。

「AWSの環境は、SAP Business Suite powered by SAP HANAの本番環境をクラウド上で稼働させた現在でも、検証およびバックアップ環境として利用しています。システム改編の際はAWS環境を利用することで、SAP HANA Enterprise Cloud上の本番環境に影響を与えることなく検証ができるので、運用上のメリットは大きいです」(大越氏)

カットオーバーの前後には、標準で提供されるSAP Enterprise Supportを利用して「Go-Live Check」を実施し、正常に稼動するかどうかを確認したほか、SAP HANAについても「360°レビュー」を行い、第3者的な視点で性能評価を実施しています。また、カットオーバーの前にはSAP HANAのメモリーを当初の256GBから512GBに増設し、DBに余裕を持たせるといった工夫も施されています。

クラウド活用でインフラの初期コストや運用コストが大幅に削減

2015年4月から本稼動を開始したSAP Business Suite powered by SAP HANAは現在、本社および国内のグループ会社の会計業務で利用されています。稼動からまだ数カ月ということもあり、具体的な効果測定はこれからとなりますが、財務経理本部 基幹システムプロジェクト プロジェクトマネージャーの加島俊蔵氏は次のように述べています。

IMG_8744「システムの刷新とSAP HANAの効果によりパフォーマンスが向上し、会計業務の時間が全体的に短縮されました。それまで午前と午後の2回のバッチ処理の完了を待って確認していた月次処理の状況がリアルタイムに把握できるようになり、バッチ処理が終わるまでの無駄な待ち時間がなくなり、業務の効率化が進んでいます」

インフラ面については、オンプレミス環境で構築した場合と比べて、設置スペース、 消費電力、データセンター運用費用の削減などで、コスト削減が見込まれています。また、SAP BWを導入する代わりにHANA Viewで代用させた結果、当初の想定よりもシステム構成がシンプルになりサーバ台数も削減されました。システム運用面でも効果があり、当社仕様にカスタマイズされた従来の会計システムからSAP Business Suite powered by SAP HANAの標準プロセスに移行したことにより、IT管理者の負荷が軽減される見込みです。

現在は新たな会計システムを未導入の国内グループ会社への展開を進めるとともに、プロジェクト開始時の基幹システム構想に基づいて、国内の事業部におけるロジスティクス領域でのSAP Business Suite powered by SAP HANA導入を開始しています。土居氏は「ロジスティクスについては、量産系の事業部において、生産、販売、購買、プロジェクト管理のモジュールの導入が始まっており、2016年度中の稼動を目指しています。2017年度以降は、最初の事業部に導入したシステムをベースに、別の事業部、海外の主要グループ会社に対しても横展開していく方針です」と構想を明らかにしました。

国内の大手重工メーカーとして初めてSAP HANA Enterprise Cloud上へのSAP Business Suite powered by SAP HANA導入に踏み切ったSHI。この大英断とそこからもたらされる成果は、今後導入を検討する多くの企業にとって大いに参考になるはずです。

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