速さとシンプル化だけではない。SAP S/4HANAの描く未来の業務のあり方を、SAP Fioriを通じて読み解く。
作成者:濱田 祥利 投稿日:2015年10月6日
こんにちは、SAPジャパンの濱田です。弊社では、次世代の業務システムとしてSAP S/4HANAを2014年末にリリースしました。そしてその標準ユーザーインターフェースとしてSAP Fioriを採用しています。今回のブログではそのSAP Fioriを通じて、SAP S/4HANAの価値を読み解いていきたいと思います。
SAP S/4HANAの価値とは
SAP S/4HANAの価値とは何でしょうか。おそらくよく挙げられるものとしては、インメモリー技術やカラム型による処理速度の速さや、システム構成とデータモデルのシンプル化、データ量削減などがあるかと思います。とはいえ、それらはIT的な側面での価値であり、現場の各部門のビジネスユーザーにとっては、せいぜいシステムが速くなった程度にとどまるかもしれません。
しかしSAP S/4HANAの価値は、速くなるだけではないのです。各部門のビジネスユーザーにもそれ以上の価値があります。その価値について考えてみます。
ビジネスユーザーに対するSAP S/4HANAの価値
各部門のビジネスユーザーにとってのSAP S/4HANAの価値とは、端的にいえば業務レベルでのOLTP(業務)とOLAP(分析)の一体化です。SAP HANAによりOLTPとOLAPのシステムが統一され、システム内のデータの利用が容易になったことに加え、リアルタイム性によりデータ自体の価値も高まりました。これを業務のレベルで生かさない手はありません。
そしてそれを可能にするものが、SAP S/4HANAの標準インターフェースであるSAP Fioriです。以下の動画ではそれをどのように行っているかを2つのシナリオで紹介しています。
【預金リスク管理(Bank Risk)】
【MRPコックピット】
OLTPとOLAPを業務レベルで一体化させたSAP Fiori
上記の2つのシナリオで示されているように、SAP Fioriにはシステム内の情報を業務に生かす仕組みがふんだんに備えられています。繰返しになりますが、システム的にOLTPとOLAPを統合しただけでなく、業務のレベルでもOLTPとOLAPを融合させているのです。
従来はいわば何のメーターもない車を運転し、定期的に情報が表示されていたようなもので、5秒前の速度表示や1時間前のガソリン残量など見せられたとしてもその情報には何の意味もありません。SAP Fioriを利用することで、運転中に得られた情報をリアルタイムにメーターとして提示し行動に反映させることで、適切な判断のもとに、より質の高いドライブ行うことが可能になります。
各企業の業務にあわせたKPIのカスタム開発
ちなみに、上述したBank Riskのような画面は、SAP Fioriに内包されているKPIモデラと呼ばれるツールを利用することで、カスタムで設定することが可能です。以下の動画では、やや技術的にはなりますがその手順を紹介しています。シンプルに手早くレポートを作成することが可能になっています。これもSAP FioriとSAP HANAの力のひとつです。動画では、ベースとなるテーブル(正確にはSAP HANAのView)の選択から始まり、閾値や分析値、分析軸、グラフ形状などの設定の方法をご覧になることができます。
【KPIモデラ】
KPIモデラとBIツールの使い分け方
KPIというと、従来のBIツールを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。過去のBIツールは不要か?という疑問に関しては、両者は併存する、というのが答えとなります。
KPIモデラは常に参照しておきたい数値を管理することが主な目的であるのに対し、BIツールでは、その場でのアドホックな分析値/分析軸の変更やダッシュボードの作成など、より幅広い分析ニーズに対応することができます。BIツールは普段の業務遂行のためというよりも、過去に行った業務の経過を振り返ったりするタイミングで利用をしますので、利用のタイミングという点でも異なります。
ちなみに、弊社の最新のBIツールであるSAP Lumiraは、そういった後者のニーズに応えるものでありかつ、SAP Fioriと共通のインターフェース内からアクセスできるなど、SAP Fioriとの親和性も高く、シンプルなユーザーエクスペリエンス提供します。
参考 : データ分析を現場のユーザーに解放するデータビジュアル化ツールSAP Lumira
まとめ
以上、SAP Fioriを通じたSAP S/4HANAのさらなる価値についてご紹介しました。SAP Fioriは、OLTPとOLAPを業務のレベルで一体化し、業務のスピードと品質の向上を同時に実現します。