SAP S/4HANAとIoTで実現するインダストリー4.0とは


インメモリーデータベースのSAP HANAが登場してからはや5年。2015年2月にはSAPの第4世代のコアアプリケーションで、SAP HANAを基幹データベースエンジンとして採用したSAP S/4HANAが新たにリリースされました。製造業の競争力を高めるためには、SAP S/4HANAのリアルタイム性とそれを支えるクラウド基盤、さらにこれらにIoTが有機的に結びついた「インダストリー4.0」が欠かすことができません。ビジネスが「モノ」から「コト」へとシフトしていく中で、SAPはビジネスの再創造に向けたどのような未来絵図を描いているのか?

今回は7月1日-2日に開催したビジネスエグゼクティブイベント「SAP Select」でSAP SE エグゼクティブボードメンバー プロダクト&イノベーション担当のバーンド・ロイケが「ビジネス再創造の未来絵図」と題して行った講演をインタビュー形式に編集してお届けします。

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クラウド版の「SAP S/4HANA」が新たな未来を開拓

—-本格的なデジタル時代を迎え、新たなビジネスを再創造し、お客様に満足していただくためには何から始めないといけないのでしょうか。

ロイケ まず顧客が求めるモノを売るところから、サービスを売ることにシフトすることが重要です。製品を納品して終わりではなく、製品の提供を通じて消費者と永続的な関係性を築いていくためのきっかけ作りをする。それが未来に向けてスマートサービスの提供につながります。

—-成功のためのポイントはどこにありますか。

ロイケ 基本的な3つのステップは、「第4世代コアアプリケーション」「ビジネスの再創造」「つながる世界」です。第1ステップは、ITインフラやシステムを近代化させることです。それはここ10年、20年で出てきた技術的な制約やタスクを取り除くことを意味します。これを実現するのが、第4世代のコアアプリケーションであるSAP S/4HANAであり、SAP S/4HANAによってビジネスサポートがよりスマートになります。

第2ステップである「ビジネスの再創造」は、デジタル化された経済に大きなチャンスがあるということです。スマートサービスを使うことで競合と差別化を図ることができます。クラウドサービスとしてのSAP HANAプラットフォームを効果的に活用することで、新しいサービスを生み出すことができます。

第3ステップの「つながる世界」は、業務分野、アプリケーション、インフラに制約がなくなることを意味します。ビジネスネットワークを使うことで、すべてのビジネスに関わる人と人とがつながることが可能になります。そして、サプライヤーや顧客にデジタルコンテンツを提供し、マーケットのインサイトを獲得することで市場でも優位に立てるわけです。

—- SAP S/4HANAで何が変わるのでしょうか。

ロイケ まずデータドリブンなビジネスが加速します。SAP S/4HANAなら、技術的なハードルなしに細分化されたデータを見ることができ、的確なシミュレーションに基づく予測でスマートな意思決定をサポートします。ここで注目すべきことは、分析から意思決定までの遅延がなくなることです。インメモリーのプラットフォームを使ってビジネスインフラを設計することで、大量のデータをどこかに蓄積する必要はなくなりました。シンプル化によって技術転換が可能になり、スループットは7倍向上します。またデータのフットプリントが減り、スループットが上がることでレスポンスタイムが限りなくゼロに近づき、TCOも30%程度は削減されます。

—-クラウド版のSAP S/4HANAについてお聞かせください。

ロイケ SAP S/4HANAにはオンプレミス版とクラウド版があります。クラウド版は既存のクラウドサービスである「hybris」「Success Factors」「Ariba Network」「Concur Travel & Expense」といったサービスとの連携が容易に行える点が強みです。 何かを犠牲にするものでなく、データの一貫性を担保したまま必要な機能が活用できる点が特徴で、クラウドでもデータセンターでもオンプレミスでも活用可能な選択肢があることは非常に有益です。

SAP S/4HANAを2015年2月にリリースしてから、すでに多くのお客様に導入いただいており、25の業種において財務、サービス、研究開発、製造、セールス、サプライチェーンといったさまざまで用途で活用されています。また、新しい業種に対応したものが四半期ごとにリリースされ、パブリッククラウドのオファーリングとオンプレミスのオファーリングの両方を提供しています。

—-既存のERPをSAP S/4HANAに移行するためには、どのようなステップを踏むのがよいのでしょうか

ロイケ 3つのステップを踏むのが一般的です。まず第1ステップでは、既存のシステムを次世代のSAP S/4HANAに移行させることです。すでに多くのお客様がこの移行を着手しており、テクニカルな基盤は揃いつつあります。

第2ステップは、今あるSAPシステムをSAP S/4HANAにアップグレードすることです。ただし、ここ10年、20年行ってきたカスタマイズをすべて1対1で新システムに移行するのではなく、例えば古い家から新しい家に引っ越すように、不要な機能は思い切って捨てることが重要です。

第3ステップはこのシステムをどう使うのか、クラウドで使うのか、システムメンテナンスが生じるデータセンターで使うのかを判断することです。

IoTのためのプラットフォームとして活用

—-デジタル化された経済におけるビジネスの再創造についてお聞かせください。

ロイケ 日本市場の強みは何といっても製造業です。その品質は極めて高く、大きな可能性を秘めています。つまり品質の高い製品を製造し、サービスと融合することで世界の市場のリーダーになる可能性が開かれているのです。この強みはSAP HANAクラウドプラットフォームとIoTを組み合わせることで強化されます。

SAP HANAクラウドプラットフォームは、製品や人から送られてくるセンサーデータにアクセスし、データを保存し、リアルタイムに処理し、そこからさまざまなインサイトを得ることができます。そのインサイトをSAPが各企業のトランザクションへとシームレスに連携します。こういったIoTプラットフォームの力を活用することで、今後IoTの時代を乗り越えることが可能になります。

サービスは差別化における大きな可能性を秘めています。なかでもSAPが提供するユーティリティーサービスはわかりやすい例だといえます。例えば、アメリカのユーティリティー企業は、iPadを使って水の配管の流量を監視しています。配管の水量が少なくなりトラブルが発生するとポンプステーションから生データが飛んできて、SAP HANAクラウドプラットフォームからSAP HANAデータベースに入ってきます。それを分析すると「ここにトラブルがあった」「パイプの配管の水が少ない」「サービスが低下、または停止する」といったアラートがでます。システムをクリックすると「こうしなさい」という指示が出てきて、配管を取り替える、または修理するための適切なスタッフとメンテナンススケジュールも自動的に表示されます。あとはシステムに従って発注をかけるだけです。これはまさしくIoTの事例の1つといえます。

IoTの活用は、さまざまな状況で新しいビジネスモデルを展開する可能性を秘めています。日本においても「ものづくり」の世界で、IoTを活用して日本企業の皆さんがリーダーになれると信じています。

こうした状況を踏まえたうえで、SAP自身はこれから何ができるかを考えています。今後、デジタル情報が増えていくと、データの容量はメガバイト、テラバイトを超え、数年後にはペタバイト級になります。将来はこうした大量のデータをリアルタイムで処理するプロセスが必要になります。そこで、このような機能をSAP HANAクラウドプラットフォームに追加しました。SAP HANAとセンサーデータを組み合わせ、HadoopをSAP HANAクラウドプラットフォームに接続し、SPARKをディストリビュートエンジンとして使っています。このメリットは、センサーデータが生成されている場所で保存できるということにあり、分散できる環境でありながらも集中管理が可能になります。

あらゆるものをビジネスネットワークで接続

—-デジタルな世界との接続、つながる世界についてお聞かせください。

ロイケ ビジネスネットワークを活用した新たな世界においては、企業、サプライヤー、顧客がさまざまなところでつながることになります。1対1の接続が複数作れるようなビジネスネットワークが必要で、このネットワークにサービスを提供することが可能です。例えば、人事面では派遣やテンポラリーでの採用もあるかもしれませんし、ロジスティクスでは配送手段が足りないことかもしれませんが、Web上にあるデジタルコンテンツをすべて活用することが必要で、この接続性を保つためには、オープンなインターネット接続を活用していくことが必要です。これまでSAPではアプリケーションのガバナンスを実現してきましたので、ネット上のコンテンツを活用したり、Web上のコンテンツをダイレクトに取り込んだりすることも得意です。今後はこれらをSAP S/4HANAの拡張機能として活用できるようにしていきます。

最後に今までのことをまとめると、ビジネスのコア部分をリニューアルするためにSAP S/4HANAがあり、それを使ってビジネスプロセスを再考することが可能になる。構築したものをリアルタイム化して作り直す。そしてSAP HANAプラットフォームでデジタルエコシステムの土台が揃い、IoTの勝者になることが可能になる。つまり、コントリビュートしながら拡張することがこれからは大切になるというわけです。

—-ありがとうございました。

 

※去る7月1日・2日の2日間にわたり、ホテル椿山荘東京にてエグゼクティブ向け招待イベントであるSAP Selectを開催し、1,000人を超えるお客様がご参加いただきました。当イベントは、「日本の稼ぐ力」を取り戻すために日本企業が描くべき成長戦略、変革をテーマに据え、多くの有識者や企業経営者の皆様による討議や講演が行われました。本記事は、SAP Selectにて講演された内容をインタビュー形式に編集して掲載しています。

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