貿易管理業務のメジャーソフト「TOSSシリーズ」に自己管理型DB「SQL Anywhere」を採用したバイナル
作成者:SAP編集部 投稿日:2015年10月19日
SAPパートナーであるISVの皆様がOEMプログラムを活用して付加価値の高いソリューションを提供する業種・業界は多岐にわたります。貿易業務支援に特化した専業ベンダーとして、創業以来一貫して高度なソリューションを提供し続ける株式会社バイナルも、2015年に新たにOEMプログラムに加わったISVの1社です。そこで、今回は自社のパッケージソフトのデータベースとして、SQL Anywhereを採用した背景について、同社の営業部 部長を務める山口達也氏にお話しを伺いました。
貿易関連ソリューションとしてトップシェアを誇る「TOSSシリーズ」
1979年に創立された株式会社バイナルは、これまで一貫して「輸出入貿易業務」や「通関業務」といった、いわゆる貿易業務サポートシステムと呼ばれるソリューションを提供してきました。プロセスが非常に複雑な貿易業務では、業界ごとに独自の仕様が要求されます。長年の経験からそうした個々の貿易業務のスキームを熟知する同社は、独自のスキルとノウハウで開発したソリューションを幅広い業種にわたる約6,300社に導入してきました。
その代表的な製品群が「TOSSシリーズ」です。製造業や商社、通関業者などの業種別ソリューションや、輸出入における基幹業務をサポートする「輸出・輸入・販売・購買・在庫管理システムTOSS-SP」などのパッケージ製品は、中国版やクラウド対応版なども提供され、あらゆる貿易業務の現場で利用されています。
2015年からSAPのOEMプログラムに参加し、その中でSQL Anywhereを「TOSSシリーズ」のデータベースとして採用した背景について、営業部 部長の山口達也氏は「お客様に新たな提案を行っていく上で、使いやすく、しかもデータ量が多くても高いパフォーマンスを発揮し、さまざまな業務に応用できる点が、今後当社のビジネスをさらに成長させていく上で役立つと感じました」と語ります。
優れたコストパフォーマンスとOEMプログラムの柔軟性を評価
バイナルがSQL Anywhereに注目した最大の理由は、安価なデータベースでありながら、大量のデータを柔軟に扱えるコストパフォーマンスの高さでした。同社のユーザーには大手電機メーカーや自動車メーカーなどがありますが、特に自動車業界の貿易業務では1台につき約3万点といわれる部品すべてをインボイス(納品書)の明細に記載しなくてはなりません。そのため従来のTOSSシリーズのバックエンドには、大量データに対応できる汎用データベースを導入して対応してきましたが、最近はお客様から「クラウド上でシステムを使いたい」といった声が寄せられるようになり、コストをはじめとしたさまざまな問題が出てきていたと山口氏は明かします。
「TOSSシリーズは、AWS(Amazon Web Services)などの代表的なクラウドサービス上にもそのまま導入できるのですが、データベースにはサービスベンダーごとにさまざまな制約があり、設定も複雑です。その点SQL Anywhereは、どのクラウドサービスにもそのまま導入できるのが魅力でした」
さらにデータベースによっては、クラウド移行用に別途ライセンス購入が必要だったり、年間の保守料が毎年上がっていくといった問題があります。当然このコストはパッケージ製品の価格に転嫁されることになり、エンドユーザーの負担が増えていきます。
「こうした点でも、SQL Anywhereはお客様に費用負担をかけずにデータベースの処理能力や安定性、セキュリティを向上させることができます。また、パッケージ価格を抑えられるので、市場での価格競争力の強化にもつながります」
こうしたデータベース自体の優位性に加え、SAPの親身なサポート体制もOEMプログラムに参加する決め手となりました。また、既存の自社製品へのSQL Anywhereの移行検証を行った結果、プログラムの接続を改修しなければならないことが明らかになった際も、パートナー契約前であるにもかかわらず、SAP側がフレキシブルな対応力を発揮してくれた点も評価につながったといいます。
移行の容易さ、基幹との連携、自動チューニングなどのメリットに期待
SQL Anywhereの採用によって生まれ変わったTOSSシリーズの最新リリース(2015年10月)を前に、バイナルではすでに以前のデータベースでは不可能だったさまざまなメリットをお客様に提供できると確信しています。
その1つが、移行のスムーズさです。SQL Anywhereは①ファイルコピーの感覚でデータ移行が可能、②バックアップやリカバリが簡単、③パフォーマンスチューニングを完全自動化、といった従来の汎用データベース製品では実現できなかった利便性を提供します。山口氏は「これまではデータベース技術者が長時間かけて行っていた移行や調整作業が大幅に効率化され、管理・運用の作業フロー自体がまったく変わります」と強調します。
また、SAPの基幹系システムとのシームレスな連携も大きなメリットです。たとえばインボイス作成の実務では、さまざまな基幹システムとの連携が必須です。TOSSシリーズではこれまでもSAP ERPとの連携が可能でしたが、今回のSQL Anywhereの採用によって、財務会計(FI)、販売管理(SD)、在庫/購買管理(MM)といった各モジュールとの、より容易な連携が可能になります。同社では今後、SAP ERPに加えてSAP BusinessObjectsや海外で多く展開されているSAP Business Oneなどとの連携をこれまで以上に容易にしていきたいと考えています。
もう1つ、やはり自己管理型のデータベースというSQL Anywhereの最大の特長は、同社が大きな期待を寄せるポイントです。通常のデータベースはデータ量が増大してくると再チューニングが必要になりますが、SQL Anywhereはデータベース自身が常にデータ量を監視して、自動的にパフォーマンスを最適化します。山口氏は「TOSSシリーズは納品後もお客様毎に個別に管理・運用することが多いので、そうした面でもデータベースが自己管理型であるのは大きなメリットだといえます」と話します。
SQL Anywhereを軸にした次代ソリューションの可能性
最新リリースを目前に控えて、山口氏はさらなるTOSSシリーズの機能向上に向けて、SQL Anywhereを積極的に活用していく考えです。その中でも注目しているのが、モバイルへの展開です。
具体的な活用例として、倉庫業務のワークフローがあります。現在、倉庫業務の現場では紙にプリントアウトしたパッキングリストを使って荷物のチェックを行い、この結果をファックスで事務所に送信し、事務担当者がPCに手入力しています。この紙のリストをSQL Anywhereのモバイル端末に置き換えて、さらにデータ同期ソリューション「Mobile Link」を使うことで、現場でのチェック結果を即座にERPや業務システムに反映できるため、作業ワークフローが飛躍的に効率化されるのです。
「今回のSQL Anywhereの採用を契機に、さらにSAPのOEMプログラムやさまざまなリソースを活用して、自社のビジネスの成長を加速していく契機にしたいと思います。とりわけクラウド対応には一層の注力が必要です。TOSSシリーズの成熟した機能とSQL Anywhereを組み合わせて、次の時代のソリューションを探っていきたいと思います」と語る山口氏。新たなブレイクスルーにつながるデータベースをお探しのSAPパートナーの皆様は、これからのバイナルの取り組みに大いに注目です。