SAPという共通言語で進むグローバルの意思疎通 -ソディックのグローバル展開


海外に複数の拠点を持つ企業にとって、標準化された効率の良い財務会計システムを構築することは、グローバル経営における俊敏性とガバナンスを向上させる上で必須要件といえるでしょう。今回は、SAP ERPでグローバルシングルインスタンスによる情報基盤を構築し、会計処理の大幅な効率アップはもちろん、本社と各子会社間の会計基準の統一化や課題共有を成功させた株式会社ソディック 代表取締役 副社長の古川健一氏に、一連の取り組みについてお伺いしました。

9_ソディック様

非効率的な決算処理作業を根本的に改革

—-今回のグローバルシングルインスタンスによる情報基盤導入の背景や狙いについて、お聞かせいただけますか。

2008年当時、当社の海外での売上が拡大していく中で、現地の子会社に権限を委譲して経営判断を早める、連邦経営体制への移行を決断しました。当時は子会社が連結/非連結合わせて55社もあってグループが肥大化しており、経営効率を向上させるために権限の分散が必要だったのです。

ところが、当社のメイン事業である工作機械事業というのは売上の変動幅が大きく、10年単位で売上が半減するほどの波があります。そのたびに人員削減を余儀なくされ、景気が回復してもすぐには増員が認められません。その結果、常に人手が少なく代わりがきかないとあって、繁忙期には担当者を総動員しても追いつかないくらいでした。

—-そうした状態では、業務の効率や品質も社員のキャパシティに制限されてしまい、思い通りの成長戦略が描きにくかったのではないでしょうか。

特にグローバル経営を進める上で重要な課題となっていたのが、財務会計システムのあり方です。当時の連結決算は海外子会社が多い上、手作業が主体とあって経理担当者の負担が大きく、子会社の増加や会計基準の改正などで負担は年々増大するばかりでした。当時はExcelで各子会社から決算の数字を集約していましたが、ほとんどの子会社が間に合わず、提出後も修正が頻繁に発生して連結決算を締めることができませんでした。また手作業で自社開発のシステムに入力するため、入力ミスも少なくありませんでした。

—-もはや決算の作業プロセス自体を根本的に見直さなくてはならなかったわけですね。

決算の正確さと早期化を阻害する最も大きな要因は、各子会社が開発した連結決算パッケージの精度の低さでしたが、それ以上に本社と現地子会社との意識のギャップがありました。子会社は現地の会計基準は理解していても、何のための連結会計のパッケージなのかについての認識が不足していました。そのため評価や経理基準、在庫管理方法なども子会社ごとにバラバラで、そうこうするうちに2008年3月期決算からJ-SOX法が適用されることになって、いよいよグループ全体のガバナンスを再構築するとの決断が下されました。これが今回の統合情報基盤となるグローバルシングルインスタンス構築プロジェクトの直接のきっかけとなったのです。

SAP ERPでグローバル会計システムを新たに構築

—-その後、2015年までの7年にわたって続けてこられた統合情報基盤構築プロジェクトの立ち上がり時点では、どのような取り組みがなされましたか。

内部統制の法制度がスタートするのに合わせて、まず本社では最大限法律に対応するための文書化の作業や会計基準の統一作業を実施しました。しかし、IT統制ひとつとっても子会社のシステム管理はほぼ外部の業者に委託していたため、本社の情報システム部はそうした業者からあがってきた報告書をもとにIT統制の報告書を作成するしかありません。一方、本社のシステムも1988年から使っている手組みのシステムとあって、行き詰まるのは時間の問題でした。そこで、「これはもうERPを導入して、本来のグローバル会計のシステムを一から作り直すしかない」と決断したのです。

—-最終的にSAP ERPをご導入いただいたわけですが、具体的な導入にあたって留意された点はどうような点ですか。

最優先の課題はグローバル会計システムの構築でしたので、まず本社でグローバル勘定科目の策定を行いました。ここでは体系的かつ可能な限り同一のルールで作られた数字を、各子会社から効率よく集約する仕組みを構築することに焦点を絞りました。同時に、業務改革という点では、SAP標準のワークフローに極力合わせた業務体制を確立するという方針も提示しました。これらを確実に実施していった結果、財務経理業務については期待通りかなりの改善がもたらされました。

—-導入は本社から子会社へと展開していかれたのですか。

本社でSAP ERPが稼動したのは2013年12月です。2008~2013年の6年間をかけて各国の主なグループ会社に導入していき、本社への導入は最後でした。というのも、本社は業務の内容やスキームが最も複雑で、これらが比較的シンプルな海外の拠点で実績を積み上げてから導入しようという意図があったからです。そこで当初は、売上高の多い中華圏の導入を優先的に進めました。2011年3月には、上海データセンターでSAP ERPサーバーとグループのマスター管理サーバーの運用が開始され、最後に2013年、本社が稼動を開始してすべての展開が完了しました。なおこうした導入が進んでいく中、2009年10月にはSAPを当社グループのグローバル統合経営情報基盤システムとして採用することが改めて正式に決定されています。

グローバル情報基盤で進めるさらなる効率化

—-この新しいグローバル情報基盤をもとに、現在はグローバル業務改革に引き続き取り組まれているとうかがいました。

全社展開がほぼ完了した2013年以降、このグローバル情報基盤を活用して、さらに業務プロセス改革や無駄の排除を進め、徹底した効率化を追求していくためのさまざまな取り組みを進めてきました。具体的には、「製造原価管理の統一化と原価低減活動の充実」「購買発注基準の統一とグローバル在庫の削減」「販売およびサービス管理の充実と顧客満足度向上」といった項目が挙げられます。

—-財務会計だけでなく、製造や調達、販売や保守といった広範なデータを、グローバル情報基盤に集約して活用されていくわけですね。

そう決めてはみたものの、これまではそれらのさまざまな数値を拠点ごとにバラバラのタイミングや仕様で集約していました。ルールも地域ごとに曖昧です。そこでグループ内での意識合わせと具体的な解決方法を探るために、2013年に第1回の当社グループにおけるSAPユーザー会を「会計基準の統一」をテーマに厦門工場で開催しました。会には経理部門の責任者に加え、各子会社の社長、さらに中国現地での導入をサポートしていただいているコンサルタントや監査法人にも加わってもらい、その後も継続的に助言を受けるなどした結果、現地のオペレーションの工数増加を最小限に抑え、売上や検収基準を統一して決算を行うことができました。この成果を踏まえて、現在はこのような集まりを年2回開催しています。

SAPという共通言語で進むグローバルの意思疎通

—-2015年現在は、どのような取り組みを進めておられますか。

現在注力しているのは、「オプション類やパーツ類のコードの統一」プロジェクトです。これが実現すれば、本社、工場、販売子会社間での取引も含め、多くのプロセスが自動連携できるようになります。この結果、購買、製造、販売といった業務効率の改善だけでなく、グループ全体の在庫を横断的に見られるようになり、原価低減に貢献できると確信しています。

主要会社の商流については、SAPによるグローバル情報基盤で把握できるようになりました。今後は、初期導入した部分のアップデートを行いながら、常に最新の技術を導入しつつ、社内の他のシステムとの親和性を高め、各層ごとに必要なデータをタイムリーに提供できるシステムを整備していきたいと考えています。また、これまでの業務改革プロジェクトを振り返って最も大きな収穫としては、「グローバルでお互いの意思疎通が進んだこと」、そして「SAPという共通言語で課題を議論できるようになったこと」を挙げたいと思います。

—-グローバル経営を進化させていく御社のチャレンジに、SAPがわずかでも貢献できたとすれば大変ありがたいと存じます。本日はどうもありがとうございました。

 

※去る7月1日・2日の2日間にわたり、ホテル椿山荘東京にてエグゼクティブ向け招待イベントであるSAP Selectを開催し、1,000人を超えるお客様がご参加いただきました。当イベントは、「日本の稼ぐ力」を取り戻すために日本企業が描くべき成長戦略、変革をテーマに据え、多くの有識者や企業経営者の皆様による討議や講演が行われました。本記事は、SAP Selectにてご講演いただいた内容をインタビュー形式に編集して掲載しています。