デジタル変革を支援する統合アプリケーションプラットフォームSAP HANAの最新版 SPS11


SAP ジャパンで、SAP HANAプラットフォームのエバンジェリストを務める松舘です。先日、SAP HANAの最新版SPS11をリリースしましたので、今回はその新機能概要をご紹介します。

SAP HANAは、2010年にリリースしてから5年が経過し、採用いただいたお客様の数もまもなく10,000社に到達いたします。

SPS11

デジタル変革を推進する企業にとって、コアプラットフォームとなるSAP HANAプラットフォームの最新版、SAP HANA サポートパッケージスタック11 (SPS11)を発表しました。あらゆる業種業界の企業が、その競争力の源泉となるデジタル変革のコアとしてSAP HANAの採用を拡大しており、SAP HANAが継続的に提供するイノベーションの最新版SPS11によって、複雑な企業ITシステムのシンプル化に寄与します。

デジタル変革を行った企業の例として、ケイザーコンプレッサー社をご紹介しましょう。予防保全システムが導いた機器の故障アラートをトリガーとして、修理サービス員の割当、保守部品の在庫をERPで確認、在庫が不足している場合には例えばAribaを活用して調達、そしてこの一連のワークフローをひとつのタブレットにまとめるユーザーインターフェースSAP Fioriまで一貫して提供します。デジタルコアである基幹系業務システムSAP S/4HANAとSAP HANAプラットフォームが連動することで初めて可能になります。このようにして、デジタルエコノミー時代においてビジネスモデルの転換がキーとなるデジタル変革に挑戦する企業をSAPはサポートしています。

詳しくは、SAPジャパンブログで以前ご紹介しておりますので、以下の記事をご覧ください。

“空気を使った分だけ払う” サービスへビジネスモデルを変革させたケーザー・コンプレッサー

ITのシンプル化によりビジネス継続性を支援

デジタル変革を推進する企業にとってのデジタルコアとなるSAP HANAプラットフォームは、SAP S/4HANAやSAP Business Suiteといったミッションクリティカルアプリケーションやリアルタイム分析基盤として、エンタープライズレベルのデータセンター運用に対応しています。

SAP HANA SPS11では、新しい高可用性と耐障害性機能を提供します。拡張されたホットスタンバイ機能を利用することで、プライマリデータベースから継続ログリプレイによってデータが同期されているセカンダリデータベースへの切り替えを瞬時に行うことができます。SPS10までは、ログに加え一定間隔で差分データの送信を行っていました。SPS11では、純粋なログのみによる更新が可能となるため、ネットワーク経由のデータ転送量を削減できるともに、セカンダリのデータ反映も即時行われることになりました。また、データベースダウン時のログとパラメータの分析機能により、障害点からの復旧を行うことで、データベース復旧時間を短縮化に寄与します。また、バックアップの並列実行も可能になり、バックアップ所要時間を短縮しています。

IBM Powerのサポートの拡大

SAPは、継続的にプラットフォームのオープン性にコミットし、お客様への選択肢を提供しています。SAP HANA SPS11では、IBM Power Systemへのサポートを拡大し、SAP Business Suite for SAP HANA及び、SAP Business Warehouse for SAP HANAスケールアウトシナリオ、本稼働環境での仮想化利用をサポートします。なお、SAP S/4HANAについては、今後対応を予定しています。

仮想環境のサポートの拡張

VMware vSphere 6.0、XENおよびKVMの非本稼働環境での利用をサポートします。vSphere 6.0では、128 vCPU, 4TBの割当が可能なため、ERP用途での利用に期待ができます。

モデリング環境の変更

これまでSAP HANA Viewとして、顧客マスターや製品マスター等で利用するマスターデータ用の「属性ビュー(AttributeView)」、BIでOLAP分析を行うために、マスターデータとトランザクションレコードを結びつけたスタースキーマ構造をとる「分析ビュー(AnalyticView)」、より複雑なモデリング用の「計算ビュー(CalculationView)」の3種類のビューを提供してきました。ビューと言っても、マテリアライズされているわけではなく、データの構造定義体のみであるため、データは保有していません。SPS11では、グラフィカル計算ビューに統一されます。新しいグラフィカル計算ビューでは、従来の属性ビューと分析ビューに相当する機能を実装しています。この機能拡張に合わせて、既存のビューに対するマイグレーションユーティリティを提供するため、移行をサポートします。また、Webベースの開発環境では、新しいグラフィカル計算ビューのみサポートされます。

属性ビュー(Attribute View) → Dimension-Type グラフィカル計算ビュー

分析ビュー(Analytic-View)→ Cube-/StarJoin-Typeグラフィカル計算ビュー

スクリプト計算ビュー→ グラフィカル計算ビュー内のデータソースのテーブル関数

クラシックモデル 分析権限→ SQL-ベース 分析権限

SAP HANA Cockpit対応の拡大

Webベースの運用管理ツールである、SAP HANA Cockpitの機能が拡張されています。オフラインモードに対応し、データベースが障害での無応答時に、リスナーに相当するSAP Host Agentを通じでアクセスすることで、システムの再起動やログの参照が可能です。バックアップは従来からSAP HANA Cockpit上で実行可能でしたが、増分・差分バックアップについても新たに対応しました。

セキュリティダッシュボードが新たに提供され、セキュリティKPIの監視がより容易になりました。

多様なビジネスコンテキストのデータからのインサイトの獲得

SAP HANAは、基幹業務システムや情報系システムのみならず、構造化データ、非構造化データに対する高度なデータ処理機能を提供しています。

SAP HANA SPS11は、テキスト分析とセンチメント分析の機能を拡張しています。文節間のコンテキストにおける関係性を識別したり、XSエンジンAPIを経由してアプリケーションからオンデマンドでテキスト分析の呼び出しが行えるようになりました。これにより、非構造化データからインサイトの獲得を可能にします。

地理空間情報機能では、地理空間情報データのパーティショニングとクラスタリングに対応しており、ロケーションインテリジェンスの獲得に寄与します。例えば、リバースジオコーディング機能により、ピンポイントの緯度経度情報から特定の住所情報を取得できるようになり、災害の影響分析や時やヘルスケアリスクの対応に活用が期待されます。

SAP HANAは、Open Geospatial Consortium (OCG)の認定を取得しており、サードパーティ製地理空間情報アプリケーションとのデータ交換を容易に行うことができます。SAPは、お客様からのビジネスアプリケーションにおけるロケーションインテリジェンスの活用に対する強い期待に応えるため、SAP HANAプラットフォームとEsri ArcGISの地理空間情報機能を、SAPアプリケーションポートフォリオ全体におけるより一層の統合を行うことを発表しました。

モダンアプリケーション開発によるイノベーションの実現

SAP HANAのクエリエンジンは、ストリームデータ、系列データ、グラフデータといったあらゆるデータを処理することによって、未知のパターンやトレンドの発見を可能にします。

予測解析機能の拡張

SAP HANA SPS11では、合計70を超える予測解析アルゴリズムをPredictive Analysis Library(PAL)として提供しており、ライブストリームや系列データ、地理空間情報データにも新たに対応しました。これらのアルゴリズムは、機械学習やプロセスの自動化に対応しています。また、SAP Manufacturing Integration and Intelligence(MII)および SAP Plant Connectivity向けのアダプタを提供し、IoTシナリオとの連携が可能になります。

代表的な新規アルゴリズムと統計手法

分類アルゴリズム:ランダムフォレスト

モデル精度評価法: カプランマイヤー推定Area under curve (AUC)

Webアプリケーションサーバー機能のアーキテクチャ刷新

SAP HANA SPS11においてWebサーバーのアーキテクチャを一新します。JavaScriptエンジンはnode.jsに対応し、開発者により一層の柔軟性を提供します。これまで、XSエンジンでは、JavaScript(Spider Monkeyベース)のみ対応していたため、既存のスクラッチアプリケーションを移行しようとした場合、コードの大規模な移行作業を伴う必要がありました。XSアドバンスと呼ばれる新しいアーキテクチャでは、2014年よりスポンサーとなっているCloud Foundryをベースとしており、JavaScript(node.js)に加えて、Java(Apache TomEE)およびC++の実行環境を提供します。これにより、例えば、Javaで書かれたアプリケーションの移行がより行いやすくなります。また、従来拡張性に課題がありましたが、データベースサービスとは独立してスケール化が可能となり、オンプレミスクラウドを問わず、スケーラブルなアプリケーションの開発が可能になりました。

また、オープンソースのコード管理ツールであるGit、GitHubおよびMavenに対応し、開発プロセスを効率化します。

XSアドバンスでは、マイクロサービスアーキテクチャの採用により、SAP HANAは迅速な開発プロセスをサポートし、個別にデプロイ可能なサービスによって、頻繁にアプリケーションの更新や複数バージョンの展開が行えるようになるため、昨今のトレンドでもあるアジャイル開発を可能にします。

既存のXSエンジンは、XSクラシックとして、今後先のSPSでも一定期間サポートが継続されます。XSアドバンスは、SPS11では十分な開発ツール群が揃っていないため、試験提供的なリリースとなります。既存のXSJSでのアプリケーションの移行は、ユーザー様のご自身のスケジュールで行うことが出来ます。以降のSPでツール群が揃うタイミングまで待つのも一つの選択肢です。まずはXSアドバンスを評価目的での検証をご検討ください。なお、デフォルトインストールでは、XSアドバンスは含まれていませんので、追加でインストールが必要となります。

階層データストレージ管理

新しいタイプのアプリケーションによって新しいインサイトを獲得が可能となる一方で、データマートやデータウェアハウス、データレイクに対する新しいデータ管理手法が求められています。SAP HANA SPS11では、SAP HANA Data Warehousing Foundation機能が提供する、ルールベースのデータ移行機能によって、大規模データをメモリからディスク、Hadoop間でデータの移行を可能としました。*1 これにより、ビジネス要件に基づくコスト最適なデータストレージの最適化が可能になります。Hadoopへのデータアクセス方式として、これまで、HIVEを利用したSQL、もしくはJavaによるユーザ定義関数によりHadoopへのアクセスを提供してきました。新たに提供するSAP HANA Sparkコネクターによって、インメモリ分散環境であるSparkと直接データアクセスが可能になり、ビッグデータ分析を劇的に効率化します。

*1 SAP S/4HANA, SAP Business Suiteには対応しておりません。

まとめ

以上、網羅的にではありますが、SPS11の新機能を紹介してまいりました。

ITのシンプル化
可用性・耐障害性を向上させるリプリケーション方式の強化、計算ビューの大幅な機能強化、

インサイトの獲得
コスト効率の高いデータストレージを提供しDM,EDW,データレイクを実現

イノベーティブなアプリケーション開発を支える基盤
Webサーバーアーキテクチャの刷新でオープンソースへの大幅なシフト、予測解析のストリーミング対応など