建築業界の異端児、サンワカンパニーが挑む売上げ1兆円カンパニーを実現するための成長戦略とデジタル変革


デジタルの活用によるビジネス変革がさまざまな業界で広がる中、2015年11月18日に開催されたSAP Forum Osakaの基調講演では、ECサイトを通じて住宅設備・建材を販売するサンワカンパニーの代表取締役社長兼CEOを務める山根太郎氏にご講演いただきました。業界の異端児と呼ばれるサンワカンパニー、売上げ1兆円カンパニーを実現するために同社が掲げた成長戦略、そこにはこれから変革を志す企業が取り組むべきデジタルビジネスのさまざまなヒントが見えてきます。

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住宅建材の流通にECを持ち込んだ「建築業界の異端児」

登壇した山根氏は、冒頭で自らが「建築業界の異端児」と呼ばれる理由の1つが「ワンプライス戦略」にあることを説明しました。これまで住宅建材は複雑な流通経路を経てユーザーに届くため、中間マージンなどのコストが見えにくいことや、業者によって価格が大きく異なることが当たり前とされてきました。同社はここにECサイトによる直接販売の仕組みを導入することで、誰がいつ買っても同じ価格(=ワンプライス)、いわば“明朗会計”を実現したのです。

もう1つの革新的な試みは、「コンテナハウス”CLASCO”」です。これは荷物などを運搬するコンテナを住宅や商業施設に改良したもので、可動式でしかもリユースできるのが大きな特長です。

「当社のコンテナハウス”CLASCO”はすべて日本の技術で作っているため、品質が非常に高い。東日本大震災復興プロジェクトでは宮城県女川町に寄贈させていただき、オールジャパンの技術と品質を皆様にお役立ていただくことができました」(山根氏)

 

成長のカギはアジア市場をターゲットとしたグローバル戦略

山根氏は、将来に向けたサンワカンパニーのデジタルビジネス戦略のポイントとして、①グローバル強化、②ブランド強化、③データ活用による経営の効率化、の3つを挙げます。

従業員79名、売上げ約70億円の同社があえてグローバル強化を戦略の筆頭に謳う理由を、山根氏は「日本はもう人口が増えることはありませんし、住宅着工件数も減少傾向にあります。必然的に今後は、環太平洋をマーケットとして展開していくことが成長のカギとなります」と明かします。

すでに具体的な取り組みにも着手しており、ヨーロッパで開催される展示会や見本市への出展を通じたブランディングのプロジェクトを現在進めているといいます。

「2016年4月に、ミラノのエウロクチーナ(サローネ国際キッチン見本市)という著名な見本市への参加が決まっています。ここからブランディングおよび海外の顧客を開拓していきたいと考えています。また欧州でのデザイン賞を獲得し続けることも大きな目標です」

デザインの本場でのブランドと評価を確立し、そこでの知見をもとに企画・製造・開発は日本で行い、環太平洋マーケットに製品展開していくというロードマップがすでに描かれていると山根氏は語ります。

「ヨーロッパのデザインと日本の品質、さらに価格競争力で、アジアのマーケットを席捲していきたいというのが当社の戦略です。すでに国内外でのデザイン賞も複数受賞しています」

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最大2ヶ月のタイムラグを解決するために商品情報データのプラットフォーム化を推進中

サンワカンパニーでは成長戦略の実現に向けて、急ピッチでデジタルソリューションの導入を進めています。現在もSAPをパートナーとしてPIM(Product Information Management:商品情報管理)システム導入のプロジェクトが進行中です。

同社がデジタルソリューションの導入を急ぐ背景には、いくつかの重要な課題がありました。その1つ目が「顧客情報の活用」です。これまで同社では顧客情報がECシステムとERPシステムそれぞれに存在していて、データの集約・分析に関する販促効果が出にくくなっていました。また実際の顧客数や購買数が100%把握できず、せっかく販促を行っても正確な効果測定が難しい状況を抱えていました。

一方では、新商品が出てECサイトに公開しようとしても、そのたびごとに商品開発部門とWebページ開発部門のすり合わせ確認作業が必要でした。さらに商品リリース後に変更などが生じると更新作業に時間がかかり、最大で2カ月近いタイムラグ=機会損失が発生していました。

「さらに商品点数は6,000点を超えており、手作業による管理コストが増大する一方です。そこで、データ活用による経営の効率化を強力に進めることにしました」(山根氏)

もちろんPIMも、そうした効率化の試みの1つです。

「現在は企画、製造、販促、営業、アフターメンテナンスの各部門がそれぞれに情報を管理しており、組織横断的な情報共有やコミュニケーションが十分ではありません。これをPIMで一本化し、ここからWebやカタログ、ERP、CRMなどすべてにデータを渡していけるようにしたいと考えています」

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国内外で多様な顧客ニーズへの対応を支援するSAP hybris Commerce

これらの取り組みを実現するべくサンワカンパニーが選択したのはオムニチャネルコマースソリューションSAP hybris Commerceでした。このソリューションを選択した理由が、商品情報データのプラットフォーム化が実現でき、さらに他言語対応および多通貨決済が可能である点です。今後、同社では、こうした強みを生かして国内外における多品種・小ロット生産を推進し、グローバル規模のビジネス展開と多様な顧客ニーズへの対応を両立させようと考えているのです。

「当社のお客様には、大手メーカーの画一的な製品では満足できないという方が増えています。その声に応えるべく当社の強みであるカスタマイズ=顧客のニーズに合わせたものづくりを進めようとすると、システムでカスタムオーダーが作れる仕組みを構築しなくてはなりません」

山根氏はさらに「これはまだ夢のような話になりますが」と前置きをした上で、同社が目指す将来のビジネスのワークフローを紹介します。ここでは注文をWebやスマートフォンで受注。倉庫からの出荷は無人トラックで行われ、GPS で最適ルートを導き出し現場に配送します。さらに現場では、ロボット補助具を装着したシルバー人材が施工面で活躍するというイメージが描かれています。

「ここだけ見ると夢物語ですが、すでに配送のプラットフォームや自動運転技術のベンチャーと打ち合わせをしてきました。ここに今後導入予定のPIMなどを接続して、すべてをシステム上でトータルに管理するのが目標です」

しかし、ここで満足してしまえば、おそらくサンワカンパニーの売上は1兆円に届かないと山根氏は語ります。その大台という目標を達成するために、同社では住宅そのものにまで業務分野を拡げていくことを検討しています。

「いずれはWeb 上で施主自身の要望を満たしながら、インターネットで住宅を販売するところまでいきたいと思っています。もし可能なら、3Dプリンタで家を作るところまで挑戦したいですね」

 

システム投資はコストではなく目標実現のためのブースター

サンワカンパニーは、これまでも毎年平均30%の成長を遂げてきました。この成長の根底には、山根氏独自のシステム投資哲学があります。同氏は社長に就任して開口一番、「近い将来、少なくとも1,000億円の売上げを達成するので、1,000億円に耐えるシステムを導入せよ」と社内に支持を下しました。

「私は、システム投資はコストではないと考えています。むしろ1,000億円ならばそれを実現するためのブーストをかけるという意味でシステム投資を行うのだと、情報システム担当者にも強く訴えました。この考えは、これからの成長戦略を考える上でも大切な基本となると思っています」と山根氏は力強く語り、講演を締めくくりました。