組織改革に必要なのは「グローバル化と標準化」の指標


2016年3月8日(火)、日本CFO協会の主催による「エグゼクティブ・フォーラム特別号」が開催されました。本連載では3回にわたり、当日の内容をダイジェストでお伝えしています。第2回目は、SAPジャパンの代表取締役最高財務責任者を務めるアレシャンドレ・カルヴァリャウが、「SAPのグローバル成長を支えるファイナンス組織とその変革の軌跡」と題し、自社の事例と変革のポイントについて講演した内容をご紹介します。

変革の時代に向けファイナンス組織の改革に着手

Alex-sanカルヴァリャウが本講演で繰り返したのは、昨今社会やビジネスのあらゆるシーンで起きている前例のない変化の中で、組織を改革していくために必要な「グローバル化と標準化」という2つの指標です。このキーワードを中心に、ファイナンス組織が変化することによって生まれる利点やSAP S/4HANAの価値など、SAP自身の変革事例から、ポイントとなった具体的な施策について解説を行いました。

まず、カルヴァリャウはビジネスにおける変化の1例として「高成長分野における企業の従業員の75%は、私物のモバイルデバイスを仕事に活用しています。すでに世界の労働力の約75%はミレニアム世代が占めるようになっており、こうした多彩なデジタル環境を使いこなしてきた人々が、ビジネスの中核メンバーになろうとしているのです。こうしたパラダイムシフトは、会計や財務分野にも例外なく影響を与えます。これから何か新しいことにチャレンジしようと思えば、さまざまなハードルや複雑性に直面することになるでしょう」と、目の前で起こっている変化について言及しました。

これに気づいた SAP は、2003年に組織の一大変革と新しい仕組み作りに乗り出しました。カルヴァリャウはこの変革について、「こうした環境において、何よりも重要なのが市場の変化にいち早く対応できる仕組み作りです。同時に増え続けるコストも抑制しなくてはなりません。そこで2006年にシェアードサービスセンターを立ち上げ、グローバル化と標準化を目指した変革に着手したのです」と振り返ります。

その後も継続的に、SAP のファイナンス組織は自社のソリューションを活用したさまざまな新しいプロセスを導入し、それらの標準化を進めていきました。そして、2011年には「Finance Run Better Together」というスローガンを掲げ、新たな組織体制がほぼ完成。さらに総仕上げとして、2015年までにCFOをマーケットユニットに統合していく構想を立てました。

「すべての取り組みにおいて徹底したのは、『顧客中心主義』『オペレーショナル エクセレンス』『人材&組織』の3つのキーコンセプトでした」(カルヴァリャウ)

シェアードサービスセンターに全取引業務プロセスを移行

ファイナンス業務をシェアードサービスセンターに集中・移行して、グローバルの業務プロセスを標準化したSAPは、その取り組みからどのようなメリットを得たのでしょうか。

「以前のCFO の役割は明確な定義がなく、さまざまな領域にまたがっていました。取引に関することから購買、売掛、そして税金についての戦略的な課題が山積みでした。このため、顧客中心に何かを考えることや、クリエイティブな問題、コンプライアンスといった重要なことについて考える余裕がありませんでした。しかし、取引のプロセスを標準化した結果、これらは大きく改善されたのです」(カルヴァリャウ)

取引に関するすべての活動はシェアードサービスセンターに移管され、特別な専門知識が必要な活動は、専門家組織(CoE=Center of Excellence)が対応する仕組みとしました。こうした「オペレーショナル エクセレンス」が確立された結果、CFO はより重要なビジネス課題の解決に専念できるようになったと、カルヴァリャウは振り返ります。0308CFO_EF02_01

かつてローカルで運用されていた多くの業務プロセスは現在、シェアードサービスセンターで一元的に管理させる体制へと移行しています。会計や税務などの専門知識を必要とする領域は、それぞれの専門家がマネジメントを行っており、各国や地域の規制や法律に沿ったチェック体制の確立によって、ローカルの帳簿やレポートの品質が十分か、ルールに即しているかを確認できるようになっています。

「すべてのアクティビティを効率よく集約することができました。グローバル規模で標準化されたルールやプロセスを徹底することで、全世界において同じ評価基準でオペレーションを行うことが可能です。結果的にビジネスモデルのより深い理解にもつながっています」(カルヴァリャウ)

標準化された自社ツールで決算業務を大きく効率化

業務プロセスの統合がもたらしたメリットとして、Record-to-Report(R2R)の実現が挙げられました。グローバル規模の財務会計を標準化された手法で管理、分析、可視化し、その成果を営業や製造部門に対して有効なビジネス指標として提供できるようになったのです。

このR2RのSAP ジャパンにおける事例を、SAP ジャパン ローカルチーフアカウンタント(LCA) 野口 が紹介しました。野口は具体的な四半期決算と、R2Rの組織について説明します。まず決算業務としては、最初に売上げの決算の締めを行い、その後費用の締め、税務までを国内で実施。その後の連結や決算開示 (プレスリリース) の作業は、ドイツにあるグローバルのヘッドクォーターで行います。0308CFO_EF02_02

野口は、現在の標準化されたR2Rのプロセスがもたらした成果として、決算期間の短縮を挙げます。

「以前、決算処理には開始から終了まで約18日間かかっていました。しかし組織の変革やプロセスの標準化で、現在は14日程で完了できるようになっています」(野口)

一連の決算処理では、スケジュール管理や各種レポートの自動化などにSAP の決算管理ツールである「FCC(ファイナンシャル クロージング コクピット)」が使用されています。

「以前の決算管理はExcelデータの配布やポータルへの掲載などで行っていましたが、2013年にこのツールへ移行してからは、決算処理やレポートの多くが自動化されたのです。さらにレポート結果の保存も可能なので、日々の決算作業がそのままJ-SOX向けのエビデンスになるといった便利さもあります」(野口)0308CFO_EF02_03

またカルヴァリャウは、自動化とシェアードサービスセンターへの移行による定量的な成果についても言及しました。

「企業の成長に合わせて、SAP のトランザクション処理は大幅に増加しています。しかし、自動化とシェアードサービスモデルを効果的に活用した結果、ビジネスのトランザクションは4年間で20%増加したにもかかわらず、全体の工数は6%の削減を実現しました」(カルヴァリャウ)

SAP S/4HANAによる次世代会計基盤をみずから採用

カルヴァリャウはR2Rの主な成功要因に、ローカルのチーフアカウンタント(LCA)とのパートナーシップを挙げます。ここでも、やはりプロセスやシステムの標準化は重要であり、これをすべてのチーフアカウンタントと共有するため、さまざまなハンドブックやマニュアルを作成してグローバルで徹底するようにしたと明かします。0308CFO_EF02_04

そして重要な成功ポイントは、イノベーションを支えるシステム基盤にもあるとカルヴァリャウは強調します。その中核となっているのは、SAP ERP の最新世代であるSAP S/4HANAであり、その中で財務会計機能を提供するSAP S/4HANA Financeです。

「SAP S/4HANAの処理スピードは、成長するビジネスから生まれる膨大なトランザクションのリアルタイム処理を可能にし、帳簿もまたリアルタイムで更新できるようになりました」(カルヴァリャウ)

またカルヴァリャウは、SAP S/4HANAのもたらすデータ構造のシンプル化が、特に既存資産の継承に対してベネフィットをもたらすと説明します。従来の処理では、いくつものデータベースや部署から数字を集約・整形してから、会計・税務処理に取りかかっていたため、データ量が増えるにつれて時間差による数値の不整合などが生まれていました。しかしSAP S/4HANAなら、従来の約1万4,000倍という驚異的なスピードでトランザクションを処理できます。

「いくらデータ量が多くとも、必要な時にデータベースにアクセスすれば最新のデータから瞬時にレポートを生成できるため、業務の処理パフォーマンスの向上はもちろん、データボリュームの削減、TCO の削減までが実現できます。従来のようにさまざまなデータベースからデータを収集する必要はなく、すべてのシステムがシンプル化できるようになるのです」(カルヴァリャウ)

その他にもSAP S/4HANA Financeの導入によって、決算処理における処理時間の短縮や、組織変更に対するシステム更新の大幅なスピードアップ、キャッシュフローの最適化など実際に実現された数々のメリットが挙げられました。

最後にカルヴァリャウは、SAP グループが実際の経営会議で利用している「SAP Digital Boardroom」を紹介。SAP のエグゼクティブボードみずからが、このソリューションを役員会議で利用することによって、ビジネスの現状と将来の見込みをリアルタイムに可視化し、正確な分析に基づく意思決定を実現していることをアピールして、セッションを締めくくりました。

SAP Digital Boardroomの紹介動画(https://youtu.be/8VCX8KLXaao0308CFO_EF02_05

次回は、最終回として、パネルディスカッション:「海外成長戦略を支えるグループ経営管理体制の強化」の内容をご紹介します。

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