IoTを活用してテレマティクス2.0を目指したアショック・レイランド


インドの大手商用車メーカーのアショック・レイランドは、IoTを活用してどんな新しい価値を届けることができるでしょうか?Opening

テレマティクス領域はIoTのテーマの中でも非常にホットです。そして、アショック社が目指したテレマティクス2.0は単なる位置情報の提供に閉じず、新たなビジネス価値を生み出すための先進的な取組みです。本ブログでは、この事例の概要およびポイントについてお伝えします。

なお、この事例はSAP HANA Innovation Award 2015のビジネスアプリケーションのアナリティクス部門において、金賞を獲得しました。

毎日7000万人以上の乗客を支えるアショック・レイランド

アショック・レイランドはインドでタタ・モーターズに次いで第2位のシェアをもつ商用車メーカーです。2015年は30%以上の売上成長を達成し、ビジネスを大きく拡大しています。インド国内向け車両は60万台を超える一方、輸出も8万台を超え、30ヶ国以上に展開しています。特にバス製造業としては世界第4位の売上を誇り、7000万人以上の乗客が毎日アショック社のバスを使っています。

Ashok_bus

(出典元:http://www.ashokleyland.com/product/buses)

劣悪なインドの交通環境

彼らの主戦場であるインドでは、人口増加に対して道路ルールやインフラ整備が十分に追いついていません。インドの道路事情をみたことがありますか?絶えずクラクションが鳴り、車が逆走し、横断歩道のない場所で歩行者が横断するなど日本では考えられないような現象がしばしば起こっています。交通事故による死亡者数は世界トップで、平均して4分に1度交通事故で亡くなっているそうです。また、道路の渋滞による経済的損害は60兆円に上るといわれています。

そんな中で、インドのIT化も急激に進んでおり、ITによる情報配信システムなどを通して、都市部の交通渋滞の緩和や安全性向上が期待されています。インドのテレマティクス市場は今後5年間で平均30%以上成長すると予測されています。そのため、新しい技術を何にどう適用していくかが非常に重要なテーマとなります。

(出典元:https://www.youtube.com/watch?v=x0t39ONiBO0&feature=youtu.be)

アショック社によるテレマティクス2.0

では、アショック社はテレマティクスをどう考えているのでしょうか?アショックは車両メーカーであり、テレマティクスサービスそのもので利益を生み出すというより、車両の販売数を増やすためのイネーブラーとして位置付けています。標準的なテレマティクスサービスは、すでにたくさんのテレマティクスサービスプロバイダーによって提供されています。位置情報の提供やジオフェンシング(地図上にバーチャルなフェンスを設置し、その中に特定の車両が出入りした時にシステムからメッセージを送るなどの処理を自動的に行う仕組み)、レポーティングなど。それゆえ、アショック社がそれらのサービスをなぞるのではなく、センサーデータや業務データ(ERPやCRM、文書管理システムなど)と組み合わせたより高度な分析を通して、付加価値の高いサービスを付加しようと考えました。このコンセプトをテレマティクス2.0と呼んでいます。標準的なテレマティクスサービスでは通信ネットワークのレイテンシーなどが重要ですが、テレマティクス2.0ではそこからどのようなビジネス的な価値を引き出すか?に重きを置きます。

FAMEが実現する3Cへの価値

アショック社はSAPの研究開発部隊と一緒に、FAME(Fleet Analytics Mobile Enabled) という新しいIoTソリューションを開発しました。

FAMEでは、IoTテクノロジーによってエンジン回転数、燃料システムの状態、車両のスピード、空気圧、温度、点火タイミング、エアフロメーターなどをリアルタイムに把握できるようになりました。そして、アショック社はこれらを3Cの観点からビジネス価値に変換することを試みました。Customer(顧客), Channel Partner(チャネルパートナー), Company(アショック社自身)です。

[Customer] 燃料やスピード、空気圧やバッテリーポテンシャルなどあらゆる車両の状態をリアルタイムに確認できるとともに、それらの全体のトレンドを把握できます。各指標を比較・分析すれば、タイヤ寿命や燃料効率といった日々のオペレーションの改善余地がわかるようになり、アップタイムや車両稼働率、従業員生産性などにつながるでしょう。

[Channel Partner] パートナーは車両の実物を確認することなく、その状態を予め確認できます。そのため、必要な修理ニーズを把握した状態でプロアクティブな修理訪問を行ったり、より良い修理計画を立案することが可能となります。

[Company] 蓄積データを分析することで、アショック社は様々なインサイトを得ることができます。製品品質の改善、ワランティの支出減少およびフォーキャスト精度向上、車両故障の早期の発見、保険への適用、運転パターンに基づいたトレーニングコースの考案など。これらはアショック社のビジネスプロセスの改善につながるかもしれません。

SAP HANAが実現するフリートマネジメントソリューション

SAP HANAで統合されたFAMEはたくさんの優位性をもっています。第1にデータ処理です。国を跨いだ数千の車両から15秒毎に集められるデータを、インメモリエンジンはパフォーマンスを劣化させずに計算し、意味のある情報に変換します。第2にユーザ画面です。使用者の役割に最適化されたFAMEダッシュボードを提供し、PCやモバイルなど様々なデバイスで視覚的な情報を与えます。第3に基幹業務との連携です。ビジネスとしての価値を高めるには、単に異常がわかるだけでなく、アクションまで繋げなければなりません。たとえば、フリート管理者が車両故障を検知し、適切なエンジニアのアサインを行い、サービスエンジニアが実際に作業するといった一連の流れを考える際、あらゆる関係者が統合プラットフォーム上でデータを参照しながらワークフローのトリガーを通してやり取りをすることが可能です。
FAME Overview

Big Data to Big Insights to Big Benefits

「FAMEというIoTを起点としたテレマティクスソリューションは、顧客にリアルタイムのフリート情報を提供するだけでなく、顧客のインサイトをより深く得ることによって、組織のアイデア創出・デザイン・製造・販売・サービスのトランスフォームを助けます。」                     

– Venkatesh Natarajan,Vice President, IT, Ashok Leyland

アショック社の取組みはまだ始まったばかりで、中長期的にサービスを進化させていこうと考えています。たとえば運転手の眠気や酩酊状態の検知などは今後の検討事項です。データをどう意味のある情報に変え、ROIを最大化するためにどのようなサービス・エコシステムを構築するか。そしてこれらの取組みは個々の企業への価値のみならず、渋滞や交通事故などの社会問題の解決にもつながっていくでしょう。

アショック社はさらなる価値向上に向けて、テレマティクスサービスを日々進化させます。