SuccessConnect 2015【世界最強人事 事例に学ぶグローバル人事への取り組み】レポート2
作成者:藤田 園子 投稿日:2016年6月22日
Global Human Resources transformation in Japan
こんにちは、SAPジャパン藤田 園子です。シリーズでお届けしているレポート、2015年12月4日に開催された『SuccessConnect 2015 世界最強人事 事例に学ぶグローバル人事への取り組み』の講演を紹介します。今回は、富士通株式会社 人事本部長代理 SVP, Head of International HR and Deputy Head of Global HR であるLuis Souza 氏の「日本における人材開発の課題」に関してのご講演を紹介します。
日本の伝統が社員の成長を遅らせる要因に
人事部の役割は、ビジネスパートナーとして会社の目指すべき方向や置かれている環境を理解し、その原動力となるべき人材を効率的に雇い、さらに育成することにあります。6カ国の上司の下で働いてきたSouza 氏は、「人生、ビジネス、企業経営に関してまったく異なる文化的観点に触れた経験から、日本企業の人事部門には克服すべき4つの課題がある」と指摘しました。
1つ目の課題は「リーダーの育成」です。「フォーブス誌で、世界的に著名な企業のCEOのトップ20が載っていました。フォーブスはアメリカの雑誌なので20名のうち13名がアメリカ人であっても特に驚きはしませんが、残りの非アメリカ人の7名の中に日本人の名前はありませんでした。日本の企業で働いているせいか、それが非常に悔しいのです」とSouza 氏は語ります。この結果は、グローバル化していくビジネス環境において、日本企業は国際的に通用するリーダーの育成が追いついていないということの証左といえるのではないでしょうか。
これは2つ目の課題の「年功序列制度」が深く関わっているとSouza 氏は指摘しました。日本では目上の人を敬うという文化がありますが、その伝統を企業にも取り込んでいる点で、才能ある若者の成長が遅れるという問題を引き起こしているというわけです。
諸外国であれば、年齢にとらわれることなく、才能のあるものには責任を与えられどんどん昇進していく場合でも、日本においてはある程度の年齢に達するまで同じポジションで待たなくてはなくてはならないことが少なくありません。海外の同じレベルの能力を持つ人材と比較すると、30代ではあまり変わりませんが、40代になるとその差は歴然としてくるものです。待つということは、それだけ能力や競争力の開発が遅れてしまうものなのです。
年齢が及ぼす影響、その実態とは
また、日本の優秀な人材が海外へ転勤したとしましょう。現地で実力を買われ昇進し、活躍したとしても、帰国すると元の役職に戻されて、海外に行く前に何年もやっていた仕事を日本で再び繰り返すことになってしまいます。これは優秀な人材が離職していく要因のひとつといわれています。確かにこうした問題は変えていかなくてはなりません。
「場合によってはむしろ、若い世代の方が精通している分野もあります。私にはITの専門知識がないのですが、息子は生まれた時からテクノロジーに関わってきたため、例えば、パソコンの調子が悪い時も、息子は簡単に直してくれます。要するに、分野によっては能力の高さと年齢は関係ないのです」(Souza 氏)
国際競争力を高めるために打ち出す切り口
Souza 氏はさらに課題として「後継者育成」と「言語」を挙げました。国内においては非常に有能なマネジメント層が、なぜか海外ではその能力を発揮できない事例が多いというのです。富士通は後継者を選出する際に、年齢や国籍はもちろん、社内という概念を切り離すことで2つの利点を見出しているそうです。1つは、社外から新たに人材を引き入れることで会社に足りない技術や知識が得られること。もう1つは社内に適正な人材がいない場合に、人材開発のあり方を課題として認識することで、より早く見直しを行おうとする作用が働くということです。Souza 氏は「ダイバーシティも同様にテーマとして掲げ、この一年間で当社の取締役には女性が二人、イギリス人が一人就任しました」と例に挙げています。
世界のGDPは日本のGDPの20倍ぐらいです。日本には約1億2000万人の人口がいる一方で、英語圏にはおよそ3億3000万人いて、さらに非英語圏に住む約15億人が英語を学んでいます。富士通はここに成長の機会があると考え、国際競争力を高めるための取り組みに余念がありません。
世界共通語で情報共有し、グローバル人材をはぐくむ
日本人の駐在員にありがちなのが、長年海外に住んでいても英語があまり話せないというパターン。どうしてこのような現象が起こるのかというと、彼らは海外にいながら日本語を使って仕事をしているからです。現地の人とはあくまでもつなぎ役としてしか関わらないので、いつまでたっても英語が上達しません。そこで富士通では駐在員に対し前線で働くポジションに就かせるために、人材育成の一環として様々な国で臨機応変に能力を発揮できるよう独自の研修プログラムを組んでいるとのこと。現地で実際のプロジェクトに従事しながら課題を見出し、解決し、業務を完了させるという一連の流れを体験させる、といったプログラムです。
「言語」の問題は表面的な問題だけでなく知的財産の共有のあり方にも関わってきます。新しい技術や製品、サービス、顧客などすべての情報が日本語で書かれていると、海外の社員はそれを共有することができません。グローバル企業の多くは、情報を英語で明文化することを徹底しています。英語で書かれた文書がなければ、いくら他社より優れた知的財産を持っていても国際社会で競争力を高めることはできません。
日本企業の強みと今後の展望に向けて
「日本の企業の強みは、集団に重きを置き、チームでの働き方がよくわかっているという点です。これは日本固有の強みでもあります。この強みを生かしながらこれからのグローバル市場での成功を先に進めるにあたって、日本企業は『リーダーの育成』『年功序列』『後継者の育成』『言語の壁』に対応していかなくてはならないのです」とSouza 氏は締めくくりました。
いかがでしたか?
優秀な人材の採用・育成、能力を最大限に活かせる配置、技術や企業文化の共有などにおける様々なチャレンジにどのように取り組むかが課題解決のポイントになってくるようですね。
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