SAPPHIRE NOW 2016 基調講演レポート- SAP CEO : Run Live, Run Simple –


「共感」が最もお伝えしたいメッセージ

広範なエコシステムを通じて、顧客にシンプルかつベストなソリューションを提供

SAP最大の年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW」が、2016年5月17日から19日にかけて米国フロリダ州のオーランドで開催されました。世界中から参加者を集めて行われた初日の基調講演には最高経営責任者(CEO)のビル・マクダーモットが登壇し、この数年SAPが推進するビジネス戦略について力強いメッセージを発信しました。またパネルディスカッションでは、SAPのビジネス戦略の一翼を担うSAP Ariba、Concur、SAP SuccessFactorsなどグループ経営陣のほか、SAP HANAユーザー企業も発言。さらに、長年にわたりパートナー関係にあるマイクロソフト社、インテル社のCEOと語り合うなど、これからのエコシステムのあり方やSAPのソリューションが未来のビジネスにもたらす可能性について、多彩な意見交換が行われました。

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基調講演でビル・マクダーモットが発信したメッセージは、この数年SAPが推進するビジネス戦略のロードマップをより明確に示すものでした。現代のビジネス環境における成功の鍵は、お客様からいかに高い満足度を引き出すかにかかっています。お客様のビジネスを支援するためには、その先にいる「お客様のお客様」のことを深く理解することが、SAPにとって一層重要な課題となっています。その中では、SAP製品を導入している企業からのフィードバックも極めて重要であり、そうしたニーズに応え続けることがお客様のROIの向上にもつながります。

特にビジネスクラウド、エンタープライズクラウドに対するニーズを背景に誕生したSAP S/4HANAは、まさに21世紀のデータベースのスタンダードであり、お客様と共にさまざまなビジネス課題に取り組むSAPのロードマップの象徴ともいえる存在です。

「SAPはお客様との信頼関係の強化にすべてを傾けています。私たちにとってそれがすべての使命であり、2番目はありません。SAPの最大の目的は、製品を提供するだけではなく、お客様のビジネスモデルの変革にあります」

また、「シンプル化」も重要です。すべてがワンタッチかつ便利で、簡単に操作ができ、高い顧客満足を提供するためには、クラウドやモバイル、ビッグデータの活用によって従来の複雑なIT環境をできるだけシンプルにしていかなければなりません。ビルは、機械学習(Machine Learning)やAIなどの最先端のテクノロジーも、シンプル化を支援する重要な要素だと指摘します。

「これまでは営業管理システムを導入しても、多くのユーザーがデータを正しく入力できていないというケースがありましたが、これはデータを入力した後でどういったアクションをとるべきかについての理解が浸透していないからです。最新のテクノロジーを使って、次のアクションにつなげていくためのアドバイスをする、あるいは人材の採用において履歴書と要件をマッチングするといった分野でも、こうしたテクノロジーは応用されていくことになるはずです」

続いてビルは、SAPのようにソフトウェア企業にとって、顧客企業のビジネス状況のフィードバックを受け、全体のシミュレーションや予測をリアルタイムで行うことが極めて重要であることについても言及し、この一例としてSAP自身が社内に構築している「デジタルボードルーム」を取り上げました。ビッグデータを「ビッグインサイト」に変換し、インサイトを実際のアクションに移すことを目的とするデジタルボードルームによって、以下のことが可能になっています。

・SAP全体の製品セグメントや地域別などのパイプライン状況をリアルタイム表示
・顧客のサステナビリティを検証できるよう、サポートの状況もリアルタイムで把握
・リード情報からオポチュニティ、クローズといった商談状況が可視化され、一目で全体を把握
・セールスコストもリアルタイムにトラッキングし、分析が可能

分かりやすく快適なユーザーエクスペリエンスを提供することで、いわば
「デジタル”Empowerment”ボードルーム」と呼ぶべき仕組みが、あらゆるリアルタイムのデータをベースに構築されています。

「現在のビジネス状況をリアルタイムで見ながら経営幹部が戦略を決定するシステムを知っていただき、お客様側でも実践できるという確信を持ってもらうことが重要であり、それがデジタル変革につながります。SAP S/4HANAは、SAPのこれまでの歴史の中でも、もっとも急速に売上が伸びた戦略的製品ですが、その価値はパートナー企業との広範なエコシステムの中でさらに高められていきます」

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SAP x Microsoft

このメッセージに対して、マイクロソフト社のCEOであるサティア・ナデラ氏は以下のように語りました。

「長年パートナーとしてお付き合いしてきた当社とSAPは、互いのもっとも優れた部分で力を合わせて、それをお客様に提供しています。市場をリードするのは、このような協力関係が生み出す特別な価値であり、競争関係ではありません。デジタル変革が次々と起こる中で、お客様はITとOT(operational technology)を同時に求めるようになっています。これまでのようにソリューションを買って終わりではなく、ソリューションをベースに自社の価値をより高めようということです。こうした中で最大のリスクとなっているのが、サイバーセキュリティです。防御、検知、対応というプロセスの中で機械学習を応用して攻撃側の行動を検知し、これまでの事後的な対応から予防的な対応への転換を図ることが重要です。多くのパートナー企業が参加する広範なエコシステムの中では、サイバーセキュリティの課題に関する最新のインテリジェンスもお客様と即座に共有することが可能になります」

SAPでは、「World Run Better」「Business Run Better」という考え方が受け継がれてきており、SAP HANAの基本は「Company Run Simple」に尽きるとビルは語ります。Microsoft Azure上のSAP S/4HANAは、ハイパースケールクラウドと言うべきもので、さまざまなビジネスソフトウェアをシームレスに統合することができます。例えば、スポーツ用品を扱うSportsBasement社というオンライン専業の小売企業は、社内にIT部門を設けていませんが、SAP HANA 予測サービスを使って顧客ごとにお勧め商品を提示したり、SAP HANAで顧客の傾向を分析することができるようになっています。またOffice 365 とSAPクラウド(SAP SuccessFactorsやConcur)との連携といったあらゆる機能を統合していく方針を打ち出しています。このように、SAPとMicrosoftはお互いのゴールを共有しながらそれぞれの道を進んでいきますが、これはいわば長い旅の始まりになるはずです。

SAP x Under Armour

パネルディスカッションの後半には、SAP HANAのユーザー企業も登壇しました。Under Armour社のCIOポール・フィップス氏は、「ビジネスにとって、最新のテクノロジーを提供してくれるパートナーの存在は非常に重要です。当社は、SAP HANAを活用することでビジネスプロセスのシンプル化を図ることができました。現在のマーケットにおいては、スピードがビジネスのすべてだといっても過言ではありません」と語り、SAP HANAがもたら価値を高く評価しました。

SAP x Corporate Assistance

また、 Corporate Assistance社のセイバー氏は「1994年からSAPを使用していますが、最近ECCからSAP HANAに移行し、非常に良い結果を得られています。SAP SuccessFactorsも活用し、ビジネススピードの向上という成果が生まれています」と語ります。

SAP x Burberry

さらに、Burberry社のCIOフンビ・チャイマ氏が、「SAPを選択したのは最も進んだテクノロジーに投資するという戦略からです。当社のビジネスでは、お客様の行動を捉え、その変化に1カ月単位ではなく1週間単位のスピードで対応できることが重要です。現在はプロセスやバリューを2週間単位で見直し、1~2週間でユーザーが新しいアプリをダウンロードできるようにしています。これはいわば、Demand Personalization(要件のパーソナライズ)ともいうべき取り組みです」と話し、新たなビジネスプラットフォームとしてのSAPソリューションの価値を評価しました。

SAP x Intel

ユーザー企業のパネルディスカッションの後には、マイクロソフト社と同様にSAPの長年のパートナーであるインテル社のCEO、ブライアン・クルザニッチ氏が登壇し、ビルと意見を交わしました。

「SAP HANAはもちろん、IoT、クラウドでの分析機能など、さまざまな部分でインテルはSAPに機能実現のパワーを提供しています。あらゆるもののスピードが加速する現在、SAP HANAのようにデータを分析してそのパターンを理解できることが、ビジネスの勝敗を決定付けると言っても過言ではありません。さらに、このような環境の中で明確なビジョン、つまり企業としてどこに向かおうとしているのか、どうやってそれを達成しようとしているかを、社員が企業文化の変化の中で共有する必要があります。ある小売企業で、すべての在庫データを5分ごとに更新して、正確性を3%向上しただけで、収益が1% 向上したという例もあります。また機械学習による分析、予測機能の向上、そしてシステム相互間のコミュニケーションも重要です。データが最大のコモディティであることを忘れてはいけません」(クルザニッチ氏)

 

基調講演全体を通じてビルが発信したメッセージは、今後SAPがビジネス戦略を加速していく上でコアとなる不動の理念であることは言うまでもありません。お客様の先にいる最終顧客に対する理解を深め、お客様からのフィードバックに迅速に対応するための、ITのシンプル化とエコシステムを通じたベストなソリューションの提供。これらはすべて、SAPがお客様、パートナー企業と共に新しい世界に移行するための大きな意味を持っています。満場の参加者で埋め尽くされた今回の基調講演は、こうしたSAPの未来に対するメッセージを十分に理解していただける充実した場となりました。

当日の様子はこちらからご確認いただけます
http://events.sap.com/sapandasug/en/session/26848