SAP S/4HANAのデータを活用した予測分析の可能性
作成者:大岩 良一 投稿日:2016年7月7日
今回は、SAP S/4HANAのデータを用いることにより、どのような予測分析が可能になるかを、具体的な事例とSAP予測分析ソリューションの概要(製品の位置付け、適用領域、機能特徴、SAP HANA連携)を含めご紹介させていただきます。
例:IoTデータを用いた予防保全
故障予測分析に関しては、研究開発分野での活用に留まることが多く、他部門との連携や具体的なサービス化まで実現する場合、システム面含め検討課題が多いのが実情です。本来は、コストの高い修理やダウンタイムを減らし、メンテナンスサービスの品質向上のため、故障予測モデルを構築し、故障の兆しを積極的に伝達していくことが重要になります。
その為には、大量データ(例:センサーデータ)から、故障予測の分析モデルを短時間で構築し、基幹システムとシームレスに連携可能なリアルタイム分析基盤が非常に重要です。
SAP S/4HANAの基幹データ(例:購買/生産/保守メンテナンス/エンジニアリング)と故障予測データを連携することにより、社内のあらゆる部門を最適化する仕組みを構築出来ます。
具体的には、故障を事前に把握し、修理に必要な部品の最適化や修理人員の確保、また製品自体の品質向上に対して、迅速に対応することが可能になります。結果、保守部品生産、在庫などの最適化とコスト削減、お客様サービスの向上(顧客満足度向上)等につながります。
SAPでは、リアルタイム基盤の仕組みとして、SAP S/4HANA(HANA)、高度な分析モデル構築の仕組みとしてSAP BusinessObjects Predictive Analyticsを提供します。
予測分析を実現するSAPソリューション
ソリューションの位置付け
SAP BusinessObjects Predictive Analyticsは、データマイニング製品になり、機械学習エンジンを利用し過去データから未来を予測します(例:需要予測、在庫最適化、離反、キャンペーンと様々な領域での適用が可能)
昨今、ほとんどのシステムでは、何かしらBIソリューションが導入され、データ分析・可視化が実現出来ている状況だと思います。
但し、予測分析の領域になると、統計の高度な専門知識が必要になります。モデル作成(計算式)自体も非常に工数がかかる作業になります。
結果、専門のスキルを持ったデータサイエンティストの人員確保と、開発工数増加の観点から対応が遅れることが多く、多くのお客様で早期対応が課題になっています。
SAP BusinessObjects Predictive Analyticsでは、機械学習エンジンと独自理論(SRM:structural risk minimization)を利用し予測分析の自動化をサポートします。また、SAPでは、分析の成熟段階に応じて、最適な分析ソリューションを提案・コンサルティングが可能です。
ソリューション適用領域
SAP BusinessObjects Predictive Analyticsは、CRM領域はもちろん、Operations、Risk、Fraud領域にも適用することが出来ます(SAP S/4HANA以外の領域でも利用可能です)
下図は、適用領域の一例になります。アイデア次第で様々な領域での適用が期待出来ます。
最近では、スポーツ分野においても、機械学習を積極的に採用する動きが進んでいます。
予測分析ソリューションの特徴
機能概要
SAP BusinessObjects Predictive Analytics では、モデル構築と分析作業の自動化に対応したAutomated Analyticsと、プログラムを含む高度分析に対応したExpert Analyticsの2つのモードから分析要件に応じ選択することが出来ます。
※本ブログでは、Automated Analytics(機械学習エンジン)をメインでご紹介します。
Automated Analytics:
世界初の商用の機械学習エンジン(2013年にKXEN社を買収)モデル構築と分析作業を自動化することにより、データサイエンティストだけでなく、業務ユーザーによるビッグデータアナリティクスを実現します。
Expert Analytics:
アルゴリズムベースのデータマイニングツール
分析アルゴリズムの組合せを自由に選択したり、R言語との連携ニーズに対応します。高度な統計知識を元に、高精度なモデル作成を可能にします。
予測分析におけるアプローチ方法
下図は、従来のデータマイニング製品とSAP BusinessObjects Predictive Analyticsの分析アプローチの違いになります。データマイニング領域は専門性が高く、自動化が困難な為、一般的にはデータサイエンティストが各処理工程をマニュアルで作業する必要があり、モデル作成までに高度なスキルと非常多くの時間を要します。
特に分析アルゴリズムは数千あり、どのアルゴリズムを採用するかはデータサイエンティストの経験や勘に依存します。結果、どうしても属人的な仕組みになる傾向が高く、情報共有や継続的なメンテナンスが難しいという課題が発生していました
SAP BusinessObjects Predictive Analyticsでは、今までデータサイエンティストが対応していたマニュアル作業の多くを、簡単なパラメータ設定のみで自動化することに成功しました。
※自動化処理の一例としては、データ分割/ 外れ値や欠損値の自動補正/ 説明変数の自動選択/ アルゴリズム適用などがあります。
SAP BusinessObjects Predictive Analyticsでは、設定ベースでモデル開発が出来る為、データサイエンティストのみだけでなく、データの中身を良く知っている業務ユーザーまで分析対象の幅が広がります。結果、人に依存するということがなくなり、短時間で高品質のモデル開発と、大幅なメンテナンス性の向上を確保出来ます。
製品コンポーネントの構成
SAP BusinessObjects Predictive Analyticsでは、モデル構築に必要な機能(「データ準備」~「モデル開発」~「モデル展開(スコアリング)」~「自動化&他システム連携」)を網羅しており、製品導入後は、追加開発なく直ぐに運用をスタート出来ます。
モデル開発では、ソーシャル(人や物のつながりをグラフ化・グルーピング化)やレコメンデーションの機能も含んでおり、より広範囲の分析に対応することが可能です。
また、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsで作成したモデル定義は、ソースコード出力(JAVA、SAS、SPSS、C、SQL、その他)に対応しておりますので、様々なアプリケーションへの組込も自由自在です。
SAP HANAとの連携
SAP BusinessObjects Predictive AnalyticsはHANAにもネイティブ対応しています。
元々、HANAにはインメモリ上で動作する予測エンジンとしてPAL(Predictive Analysis Library)が提供されていました。
HANA SPS09以降より、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsの機械学習エンジンがHANA上にAPL(Automated Predictive Library)として実装されました。HANAのインメモリ上で全ての分析処理を実施する為、さらに高速な予測分析が可能になったことになります。
APLは、HANAのSQL Scriptから実行する方法と、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsのデスクトップアプリケーション(モデル作成処理をHANA側にプッシュダウン)から実行する方法の2パターンから選択可能です。
HANA分析プラットフォームでは、従来型アルゴリズムベースのPALと、機械学習エンジンのAPL、R言語連携と、用途に応じ最適な分析機能を選択することが出来ます。
まとめ
今回は、SAP S/4HANAのデータを活用した予測分析の可能性と、予測分析ソリューションである、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsをご紹介させていただきました。
今まで対応が困難であった予測分析の領域ですが、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsの機械学習エンジンを利用することで、簡単迅速に対応することが可能です。
今後は、SAP S/4HANAやHadoopを含む大量データを組み合わせた予測分析のニーズが益々増えていくことが予想されます。
人での対応は限界に達してきており、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsのような自動化の考え方が主流になっていくことでしょう。
具体的な活用事例に関しましては、下記リンクよりご参照ください。
・業種別事例集:SAP BusinessObjects Predictive Analytics Customer Successes
・株式会社すかいらーく様:1 to 1 マーケティング 高精度化
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