リーダーシップってどんなもの?

作成者:荻野 まどか 投稿日:2016年7月12日

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人事部の仕事の醍醐味

人事部の仕事は、給与計算や採用だけではありません。醍醐味の一つは、他のモノづくりと同様、抽象的なものを具体化していくところにあるのではないでしょうか。しかも、生きている人間を対象に具体化しますので、難しさを含みながら、倍々ゲームのように面白さも増していきます。例えば人の資質を表す「リーダーシップ」という抽象的ですがよく使用される言葉があります。このような言葉でも、実は各社少しずつ異なった意味で使用しています。各人事部門ではこの言葉を自社の目標や文化に合うように具体化して、可視化する作業を行います。そんな作業を手助けするのがSAP SuccessFactorsのクラウドタレントマネージメントソリューションです。

Man running on beach

SAP SuccessFactors では、年に2回ほどValue and Innovation Practice のイベントを開催し、お客様とSAP SuccessFactorsについて情報交換やディスカッションを行う機会を設けております。このような機会に、人事部の皆様が具体化する過程で悩まれているところをよく、お見受けします。評価に必要な抽象的な言葉を具体化し、目に見えるようにすると想像がつくようになります。すると、多くの人が皆、同じように理解できるようになります。このような作業は一見簡単そうでも、考えてみるとほとんどは言葉のみを追いかけていることが多いのが実情です。

 

 米国入試に必須なエッセー課題に 多く登場する
「リーダーシップ」

例えば、多くの職務要件には、「リーダーシップのある人」という項目が見受けられます。一見、皆様が熟知なさっている単語に見えますが、実は、大変幅の広い意味を持ちます。ここでちょっと話は、脱線しますが、以前、この単語について、面白い話を聞いたことがあります。

ご存じのようにアメリカの大学合格には、SATやAPなどの一律テストの得点の高さだけでなく、部活を含む課外活動やボランティア活動への参加度なども合格に関わってきます。つまり、360度、各生徒について知ることが目的となっており、中でもエッセーは最重要項目で、合格はほとんどエッセーで決まるとも言われています。

各大学、5-10個ほどのテーマを様々な字数制限の中でまとめます。高校3年生たちは、早ければ夏くらいから書き始め、書き直し、校正を繰り返して、11月には大学に提出できるように準備します。そこから、大学の審査官たちは、何千、何万というエッセーを読む毎日となります。彼らにとっては、毎年行っている作業ですので、似たようなエッセーや支離滅裂としたものでは全く心に残りません。もちろん、最初の頃は、お涙ちょうだい的なものも受けたようですが、現在では、「エッセーのために、ペットを殺さないでね」、と言っていた試験官もいました。

そんなエッセーのテーマで必ず見受けられるのが、「あなたにとって、リーダーシップとは何か」という質問です。それも当然。大学から優秀なリーダーたちが数多く育つことによって、その大学の知名度だけでなく、寄付金額も上がります。また、卒業生たちが牛耳る業界は、いろいろ大学に都合も付けてくれるようになりますので、リーダーが多ければ多いほど大学にとっては有利になるといってもいいでしょう。

Group of cross-country runners, low section (Digital Enhancement) --- Image by © Ocean/Corbis

 

心に残るリーダーとは

一度、米国加州の有名S私立大学のエッセー試験官に良いエッセーの例について話を聞いたことがあります。彼の心に残った高校生のエッセーのひとつに、この「リーダーシップ」について書かれたものがありました。その高校生は、クロスカントリーチームのキャプテンで、夏から秋に向けて中、長距離走で野山を駆け抜ける練習に明け暮れていました。このチームは全国でもクロスカントリーで有なチームであったため、周囲の期待も高く、その期待に背かないように毎日の訓練は大変なものであったそうです。そして、クロスカントリーの季節も終了が近づき、日本では、インターハイに匹敵するような大会に臨みました。それまでの努力をすべて出し切るような勢いで臨みましたが、残念ながら結果は期待の優勝旗に届かなかったそうです。

優勝旗が遠のいた直後、キャプテンであるこの生徒も、今までの練習の辛さや皆の期待に添えなかったことに耐えられなくなり、がっくりとしゃがみ込んでしまったそうです。チームメートもただ茫然と立ったり泣いたりしていましたが、誰もフィールドを離れることをしませんでした。しばらくして、太陽が傾き始めた頃、キャプテンは、こんなことではダメだ、次に備えないと、と思ったということです。そして、彼はすっと立って、ただ、黙々とグラウンドを走り始めました。そして、何週かして後ろを振り返ってみると、今まで泣いていたようなチームメートが一人、また一人と彼の後についてくるではありませんか。グラウンドを何周かするうちに皆、彼の後について黙々と走り始めていたそうです。

彼はこの出来事を例に、「これが私にとってのリーダーシップです」と締めくくりました。言葉でいうのではなく、行動で見せること。また、人に見せるために行動するのではなく、次へのステップに向けて、自分が行動することだと。このエッセーは試験官のその年の最優秀エッセーだったようで、この高校生はめでたくS大学に入学し、立派な大学生として励んでいるということでした。

 

リーダーシップの具体化例

このエッセーをタレントマネージメントで考えるとかなり面白いと思います。彼のようなリーダーを育てたい場合には、どうなるでしょうか。いろいろありますが、2点例を挙げます。一点目は、このようなリーダーシップを持つ人間を会社で育て維持するためには、上司からの評価だけでは、足りないということです。まず、この高校生が自分にはリーダーシップがある、と自覚をしたように、自分が自分を評価できるようなシステムが必要です。さらに、チームメートが彼の後について走り始めたように、部下や同僚も評価できなければなりません。

そして、このエピソードは、リーダーシップを持つ人間とは、プロジェクトが失敗した後の行動でわかる、ということも指摘しています。プロジェクトの成功、不成功でリーダーシップや才能の有無を決定してしまう成果主義では、真のリーダーシップは測れないし、育たない。つまり、真のリーダーたちは、失敗の責任を取って辞めるのではなく、失敗から何かを学び、成長しようとする人たちで、それを回りの人々に行動で示せる人ということとなります。人事部としては、より長いスパンを設定して、プロジェクトに携わった人々の査定を行うことが必要ということでしょう。

 

さあ、皆様の会社の「リーダーシップ」とは何でしょうか?
皆様のリーダーをご覧になって、逆算してみてはいかがでしょうか。

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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